スズキ・ソリオ・バンディット・ハイブリッドSV 価格▷224万6200円 試乗記
スズキの小型トールワゴン、ソリオ・シリーズにユニークなハイブリッドモデルが追加された。新システムは、モーターアシストに加えて、モーターだけのEV走行も実現した、従来からのマイルドハイブリッドとフルハイブリッドの中間仕様。1.2リッターの直4ガソリン(91ps/118Nm)とモーター(13.6ps/30Nm)を組み合わせる。ちなみにモーターはマイルドハイブリッド比で出力こそ10.5psパワフルなものの、トルクは20Nm非力。同じコンパクトワゴンのシエンタHVのモータースペック(80ps/120Nm)とは大差がつく。それだけに、モーター効果は限定的。EV走行はカタログでは、60km/h以下の一定走行時に限られると記載されている。気になる燃費はマイルドハイブリッドをWLTCモードで2.7km/リッター上回る22.3km/リッターだ。
スペック上、新システムの注目点はトランスミッション。なんと5速MTベースの2ペダル機構(5SAG)を組み込んだ。Dレンジに入れておけば通常のATと同様のイージードライブ、パドルを操作するとマニュアルセレクトが可能なシステム。マイルドハイブリッドが採用するCVTと比較してダイレクトな変速フィールが魅力点だ。CVTはスムーズなものの、加速時に生じる独特の「ラバーバンド感」が馴染めない、という声をよく聞く。ASGは、そんな不満に対するスズキの回答。かつてはアルトなどにも設定されていたが、今回、ソリオで久々に復活した。
試乗車は、個性的なマスクを採用したバンディットSV。新ハイブリッドは専用2トーンカラーを設定し、価格は224万6200円。ベーシックなMVグレード比で23万9800円高い。
走りはなかなかスポーティ。アクセルのひと踏みで軽快に発進する。MTベースらしいSAGの直結感が心地いい。モーターが巧みにアシストする加速そのものもたくましいが、それ以上にSAGのダイレクト感が印象に残る。変速制御は実に巧み。シンプルなシングルクラッチ仕様でありながら、まるでベテランドライバーのように的確なシフトワークを披露する。SAGが生み出すドライバーとの一体感の高いドライビングフィールは、新ハイブリッドの大きな魅力である。
もちろん効率性もハイレベル。カタログでは60km/h以下と記載されているEV走行は、実際は75km/h前後まで可能。自動車専用道などでの巡航時は積極的にEV走行に移行する。しかもエンジンの再始動はスムーズ。目立った音や振動は感じない。約200㎞の試乗で21.1km/リッターの燃費をマーク。走りの楽しさを考えると経済性はハイレベルだと感じた。
コンパクトなボディサイズながら、広い室内空間と、圧倒的なユーティリティを実現したバンディットの使い勝手は抜群。これほど便利なクルマはない。しかも新ハイブリッドは、運転好きを魅了する個性の持ち主といえる。一見ファミリーカーながら、実はマニアックな1台である。
グレード=ハイブリッドSV
価格=5AGS 224万6200円
全長×全幅×全高=3790×1645×1745mm
ホイールベース=2500mm
トレッド=フロント:1435/リア:1440mm
最低地上高=140mm
車重=1050kg
エンジン(レギュラー仕様)=1242cc直4DOHC16V
最高出力=67kW(91ps)/6000rpm
最大トルク=118Nm(12.0kgm)/4400rpm
モーター最高出力=10kW(13.6ps)/3185〜8000rpm
モーター最大トルク=30Nm(3.1kgm)/1000〜3185rpm
WLTCモード燃費=22.3km/リッター(燃料タンク容量32リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路=20.1/22.9/23.0 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=165/65R15+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=4.8m