TOYOTA/LEXUS 新型BEV期待の16モデル
2021年12月14日、トヨタは新たなBEV(バッテリー電気自動車)戦略を発表した。
・2022年から30年までにグローバルでBEV30車種を投入。
・2030年までにグローバルでZEV(BEV+FCEV)を年間350万台販売。
・レクサスは2035年にグローバルでBEV100%を目指す、という内容である。
「電動化」は自動車業界の一大トレンドだ。世界中のメーカーがBEV化へと舵を切っている。そんな中で「トヨタはBEVに否定的」という論調も聞かれた。だがそれは完全な間違いだった。その証明が今回の発表である。
トヨタが意欲的なBEV戦略を発表した背景には、「電動化への課題」をひとつひとつ地道に克服してきた歴史がある。 1992年には「EV開発室」を設置。BEV開発は世界初の量産ハイブリッドカー、プリウス(1997年発売)のはるか以前から進められていた。
すべての電動化パワートレーンに共通する要素技術は、モーター/バッテリー/インバーターである。これにエンジンを組み合わせるとハイブリッド(HEV)、HEVに充電機能を追加するとプラグインハイブリッド(PHEV)、フューエルセルと水素燃料タンクを組み合わせると燃料電池車(FCEV)、そして、そのまま使えばバッテリー電気自動車(BEV)だ。つまり、ハイブリッドの進化=トヨタ電動化の進化なのだ。
トヨタは20年以上に渡るHEV開発により、小型/軽量/高効率化を達成した。加えて、累計1810万台のHEV生産・販売によって裏付けされた実績がある。
耐久性/信頼性/商品性/コスト競争力を加味し、高品質で大量生産する技術は、他社に対する大きなアドバンテージだ。そのうえ、課題だった次世代バッテリーの開発/供給にもメドをつけた。以前から「HEVで培った技術はBEVにも活用できる」と語っていたが、それがいよいよ現実のものとなる。
今回、トヨタは現在開発中の多くのBEVを披露した。BEV専用ブランド、bZシリーズがすでに世界公開済みのbZ4Xを含めて5車種、プレミアムブランド、レクサスは4車種、そしてトヨタのさまざまなライフスタイルモデルが7車種の計16モデルである。
多種多様なバリエーションは、まさにフルライン。SUVからセダン、スポーツ、商用とキャラクター/サイズともにいろいろ。これらは早いモデルで22年、遅いモデルでも数年内に登場予定という。逆算すると、4~5年前から開発がスタートしていたことになる。世の中でいろいろいわれる中、虎視眈々と準備を進めていたのだ。世界中で多くのユーザーがトヨタのBEVに乗るシーンは、新たなクルマ社会の到来を予想させる。早晩、BEVは特別なクルマではなくなるに違いない。
筆者は、BEVに対する「攻めの姿勢」を明確にした豊田社長に聞いてみたいことがあった。「BEVは好きかと」。これまでBEVに対して「ちゃんとやっています!!」、「反対ではない」という話は何度も聞いた。しかし、水素エンジン/ハイブリッド技術などと比べるとビジネスライクだと感じていたからだ。
豊田社長は苦笑いしながら「いままでのトヨタのBEVには興味がなかったが、これから作るBEVには興味がある」と答えてくれた。この言葉を聞いて、開発陣の頑張りが豊田社長をマインドチェンジさせたとのだと感じた。いままでのトヨタのBEV戦略に欠けていたのはハードでもソフトでもなく、実は「パッション」だったのかもしれない。以前、社長インタビューの際に、「ボクはいちばんの、トヨタのクレーマー」と笑いながら語ってくれたことがある。それは今回のBEVにも活きているに違いない。つまり今後販売されるトヨタ、そしてレクサスのBEVは、すべてマスタードライバーを務める豊田社長の〝最後のフィルター〟をクリアした「乗って楽しいクルマたち」なのだ。
トヨタのBEV戦略本格化は、地球環境の改善とともに、クルマの革新を意味する。