ホンダは、「2050年に全世界で2輪を含むホンダ車が関与する交通死亡事故ゼロ」を目指すプロセスと技術を発表した。今回の発表は3つのフェーズで事故の撲滅を推進。その最新技術の一端を体感した。 最初の一歩は、全方位安全運転支援システム、ホンダセンシング360の積極導入。ホンダセンシング360は、レベル3自動運転技術ホンダセンシングエリートの開発で培った知見を生かして開発。2030年には先進国で販売するすべてのクルマに展開し、交通事故死者半減を目指す。制御は安心感抜群。緊急ブレーキ作動時でも、障害物の前でスムーズに停車するのが印象的だった。
第2の動きは、運転時のヒューマンエラーゼロを実現する知能化運転支援技術の実用化。独自の脳解析を通じて人間のリスク行動を「見える化」し、ドライバーモニタリングカメラや運転操作からミスの予兆を検知。適切な警告とフォローで事故を防止する。テスト車は、ドライバーの心拍数に合わせて制御を切り替えたり、数種の警告方法を使い分けるなど、人間研究に基づいた工夫が満載されていた。知能化運転支援技術は2020年代前半に要素技術を確立、2020年代後半の実用化を目指している。
第3の動きは壮大だ。歩行者を含めたすべての交通参加者との共存=安全・安心ネットワーク技術の構築である。車両を含めた交通参加者の個々の状態、周囲の環境をシステムで理解・認識し、リスク情報をサーバーに集約。そのデータ解析を行い、支援情報を配信する。たとえば、進行するクルマに気づかず、歩行者が車道を渡ろうとした場合、渡る直前にスマホを通じて警告を通知して、事故を未然に防ぐ。 交通事故死者ゼロを実現するには、1メーカーの努力だけでは不可能である。ホンダは今後、官民が一体となった自動車業界全体での取り組みを加速させ、2020年代後半の安全・安心ネットワーク技術の標準化を目標に動き出している。