「ここにUSB端子があれば便利なのに」。マイカーとして時間をともにしていると、小さなカイゼン点に気づくもの。新型シエンタは、ユーザーの「気づき」に注目して、細部まで徹底的に煮詰めた1台。旧型と同様に街を走っているときに、ひと目でわかる存在感を発揮するスタイリングにも注目です。
スライドドア&3列シートミニバンの中の小型サイズ、通称プチバンのパイオニアがトヨタ・シエンタです。初代は「まぁるいお目目」が可愛くて、ママ&お子様カーと見られていましたが、2世代目はトヨタのキーンルックの先駆けの隈取フェイスで登場。
何を隠そうジャパンタクシーのベースにもなっていたりして、運動性能とパッケージングのバランスが見事なモデルでした。ところがそのぶん、少々可愛らしさの部分が薄れてしまった感じもありましたよね。
そして今回の3代目です。まず、大きくしなかったことが素晴らしい。シエンタは、「このサイズだからこそ!」という点でもユーザーが評価していることをよくわかっていらっしゃる。デザインも、くどくない程度に可愛らしさが盛り込まれ、キーンルックと丸目初代との融合とでもいえばいいでしょうか。加えて、サイドバンパーなどもあしらわれて、欧州の香りさえ漂うオシャレさ……。
実はこれ、最近ニーズの高いアウトドアにキャンプ、車中泊という使われ方をすることも心得ていることの証。そういう場所は、ちょっとした擦り傷がつきやすいシチュエーションでもありますからね。
室内も巧妙にポケットエリアが設けられているのですが、とにかく「少しでも広い空間を確保する」という目標に、デザインと機能性を上手にまとめたという感じ。その代表選手が、前席のドアノブや、スライドドアのグリップだと思うんです。
一見わからないくらい出しゃばらずに、できるだけ広い面積(サイズ)を確保することで体格を問わず誰もが便利に使えて、しっかり滑り止めを裏側に仕込んでいるなど、使い勝手の面もきちんと考慮されています。
そうして生まれたスペースは、とくにニーズの高かった2列目シートの足元の広さに使われ、スーパーマーケットの買い物カゴがポンとそのまま置けたり、また開口部も広がったので、頭を低くすることなく、スマートに乗り降りできるようになりました。これで意外と3列目も使い勝手よく座れちゃうのですから、本当にバランス感覚がいいのでしょうね。
また、この空間をもっと自由に使いたいという方には2列シートの5人乗り仕様もチョイス可能。パワートレーンはハイブリッドとガソリンの2本立てと自由度高しです。
新型の登場に合わせて新しく設定されたハイブリッドの4WDモデルは、最近のアウトドアニーズにもマッチングが高いこと間違いナシ。悪路走破性、電気製品の使用、長距離走行ゆえの好燃費と、一見オーソドックスに見えるモデルですが、しっかり時代を読んでいるのです。
一方、ガソリンモデルは軽快で、ボディと足回りのバランスのよさを生かし、ワインディングロードもなんのその。攻めるレベルで走れてしまうポテンシャルの高さを秘めています。
つまりシエンタは、買った後にプラスの発見が期待できるミニバン。ワクワクを感じさせるからこそのロングセラーなのでしょう。
1)ガソリンとハイブリッド、2列シートと3列シート、FFと4WDと車種バリエーションが豊富。自分に使いやすい1台が選べる
2)高いデザイン性と使いやすいユーティリティ性がさりげなく同居。5ナンバーボディをキープしている点も評価を集める
3)HVは100V電源が使える。人気のキャンプライフを楽しむパートナーとしても高い実力を発揮。購入後の夢が広がる
グレード=ハイブリッドZ(7人乗り、FF) 価格=291万円
全長×全幅×全高=4260×1695×1695mm
ホイールベース=2750mm
トレッド=フロント:1490×リア:1480mm
車重=1370kg
エンジン=1490cc直3DOHC12V(レギュラー仕様)
型式=M15A-FXE
燃料タンク容量=40リッター
最高出力=67kW(91ps)/5500rpm
最大トルク=120Nm(12.2kgm)/3800〜4800rpm
モーター最高出力=89kW(80ps)
モーター最大トルク=141Nm(14.4kgm)
WLTCモード燃費=28.2km/リッター (WLTC市街地/郊外/高速道路=27.1/29.8/27.6)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=185/65R15+フルキャップ
駆動方式=FF
乗車定員=7名
最小回転半径=5.0m
●Zグレードはバイビーム式LEDヘッドランプを標準で装備し、フロントグリルのモールが金属調塗装仕上げになる。スライドドアにワンタッチスイッチ付きハンズフリー機構が付く点も他グレードと異なる。撮影車が装備している切削光輝+ブラック塗装アルミは5万5000円のメーカーop。スカーレットメタリックのボディカラーは3万3000円のop。オーディオレスが標準で、メーカーopのディスプレイオーディオ(コネクティッドナビ対応)は3万3000〜8万9100円である。
たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。