私が某自動車雑誌の編集部で働き始めたのは、まだバブルが弾けきっていない1990年のこと。当時は、話題のニューモデルに驚くほどのプレミア価格がつけられていたことを、いまもよく覚えている。
ランボルギーニ・デイアブロが、まさにそういうクルマの代表格だった。なんでも、並行輸入により超特急で日本に持ち込んだとかで、編集部はその上陸したてのディアブロに、確か2億円の保険をかけていたと記憶する。
それまでにもクンタッチを街角で見かけたことはあっても、ランボルギーニの最新V12モデルを間近で眺めたのはこのときが初めて。極端に低い車高と、まるでエンジンを運ぶクルマとしか思えないアンバランスなプロポーションが、鮮烈な印象となって現在も瞳の奥に焼き付いている。
さすがに入社したての新人(私のことだ)に時価2億円のスーパースポーツカーを操るチャンスが巡ってくることはなく、私は、先輩編集部員がステアリングを握るその隣で、ただ助手席に腰掛けていただけだった。それでもその巨大なV12エンジンからは常に正確な鼓動が伝わってきて、なんともいえない迫力に圧倒されたことを思い出す。
あれから、およそ四半世紀。つまり、ランボルギーニの歴史全体の、およそ半分に相当する歳月が経過したことになる。この間、様々な経験を積んだ私は、いまではランボルギーニの国際試乗会にご招待いただける立場になった。おっかなビックリにディアブロに触れていた当時のことを思うと、隔世の感を禁じ得ない。