ボクが最も感動したBMW製エンジンといえば、やはりM88ユニットをおいて他にない。それもM1だ。ノーマルスペックでは確かに非力(スーパーカーとして)だったけれど、そのエンジンフィールには“力感”と“精緻さ”が見事にバランスされていて、どの回転数でも味わい深いと思えた。鋭く回り過ぎない点もマニュアルシフトで操りやすく、サウンドは腹の中で響くようだ。
つい最近、E24・6シリーズのバリエーションを一気に試すという機会に恵まれた。そのラインナップは633/635/M635/M6/アルピナB7/アルピナB9/アルピナB10、という贅沢さ。全車ストレート6ながら、SOHCありDOHCあり、そして過給器付きありと正にこの時代のBMWエンジン百花繚乱だった。ひとつひとつに個性があって、直6エンジンの奥深さを再確認したわけだが、なかでも味わい深かったのは、やはりというべきか、M88/3を積んだM635CSiだった。
M6に積まれたS38ユニットに比べるとやや繊細な回り方をしたのだが、それがかえって機械としての精緻さを感じさせる。精密に組み合わされたパーツのひとつひとつから力と音が出ている感覚がエンジン好きにはたまらない。これはM1も同様だ。
一方、M88ベースのDOHCながらマイルドなカムプロファイルで低圧縮、触媒付きのやや大人しい仕様のS38エンジンは、そのぶん扱いやすく、低回転域から滑らかに回っていく。スムースさという点ではM88より上。ただし高回転域でのパンチ力という点ではM88に軍配が上がる。