種類:直列4気筒DOHC16V
総排気量:1587cc
ボア×ストローク:81×77mm
圧縮比:9.4:1
最高出力:130ps /6600rpm
最大トルク:15.2kgm/5200rpm
3年前からドライビングスキル向上のためAE86でサーキット走行に勤しんでいる。実に驚くことが多い。
私の「ハチロク」は、もともとレーシングカーだった個体で、内装はすべて取り払われてロールケージが組み込まれ、サーキット走行用のサスペンションやLSDを装備している。これで筑波サーキットをガンガン走っているのだが、一度、ギアボックスをオーバーホールしたことを除けば、まるでトラブルは起きていない。
とりわけ4AGエンジンは絶好調。サーキット走行では、いまでも7000rpmオーバーまできっちり回している。しっかりパワーが出るし、回り方だって十分にスムーズ。およそ40年前に世に出たエンジンが、いまもこんなに元気に回り続けていることに驚きを禁じ得ない。
なぜ、4AGはこれほど頑丈なのか? 私のハチロクの主治医で、過去20年間に600基以上の4AGをリビルドしたというコシミズ・モータースポーツの輿水好則さんに話を聞いた。
「確かに4AGは頑丈だと思います」 輿水さんは、そう切り出した。「でも、デビューした当初の1983年頃は、そうでもなかったんです。発売直後の数カ月間はコンロッドが弱く、エンジンとして華奢でした」
それがわずかの間に強化版コンロッドが組み込まれるようになり、AE86の後期型ではエンジンブロック剛性が改善。その後もAE92(87年)/AE101(91年)/AE111(95年)とモデルチェンジを繰り返すたびにコンロッド、クランクシャフト、ブロックなどの主要部品が進化していき、高出力化や信頼性の向上が図られたという。
ここまでトヨタが4AGの改良に積極的だった理由はどこにあったのか?「AE86に始まって92/101/111と、グループA規定で競われていた全日本ツーリングカー選手権に参戦していましたよね? グループA規定では、レーシングカーを改良しようとすると、まずはそのベースとなる市販車をリファインしてホモロゲーションを得なければいけない。つまり、レーシングカーの性能を上げた恩恵が、市販車にも反映されていったというわけなんです」
ちなみに輿水さんによれば、私程度のレベルのサーキット走行であれば、AE86最初期型の4AGでもない限り、エンジントラブルが発生する可能性はまずないという。つまり、4AGは一般ユーザーの要求レベルをはるかに超えて進化していったのである。
そして4AGで驚くもうひとつのポイントが、おそろしく小型軽量であること。「いやあ、本当に衝撃的でしたよ」と輿水さん。「最初にAE86のエンジンルームを見たときは[これって、(ひとクラス下の)スターレット用エンジンじゃないの?]と思ったくらいです」
4AGは小型軽量ゆえにクルマの重量配分改善に貢献。AE86の、極めてバランスのいいハンドリングを生み出す要因になった。
「いまから40数年前の設計なんですからね。本当に、奇跡のエンジンだとボクは思っています」と輿水さんは締めくくった。