種類:直列3気筒DOHC12Vターボ
総排気量:1618cc
ボア×ストローク:87.5×89.7mm
圧縮比:未公表
最高出力:200kW(272ps) /6500rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/3200〜4600rpm
※GRヤリスRZの数値
GRヤリスに搭載された後、その兄弟モデルのGRカローラにも採用されたのが、G16E-GTS型。設計の基本からして「戦うために生み出された」、世界的にも稀有な「スポーツ心臓」である。GRヤリスで272ps/370Nm、GRカローラは304ps/370Nmのハイパフォーマンスを発揮する。
1618ccという排気量は、開発ターゲットとされたWRC(世界ラリー選手権)の規定に合致することを狙って決定したもの。シリンダー数は「3」。振動・騒音などさまざまな商品性を考慮してこのクラスの排気量の場合、4気筒が選択されることが多い。あえて3気筒にした理由は、「排気干渉がなく、掃気能力が4気筒よりも優れている点が決定打になった」と開発担当エンジニアは述べている。
ターボチャージャーにセラミック・ボールベアリングを採用し、大容量のインタークーラーにウォータースプレイ機能を加えるなど随所にコンペティティブな設計が採用されたG16E-GTSの実力は、極めて高水準に達している。3500rpm付近から上で圧倒的なパワーを炸裂させる一方で、1300rpm程度をクリアしていればそこからさほどの無理なく速度を回復させるフレキシブルさを併せ持っている。とりわけ3800rpm以上の、アクセルONとともに、凄まじい過給音とともに生み出される強烈な加速Gは快感のひと言である。
レッドラインの設定は7000rpm。スポーツユニットとして格別高いというわけではないものの、リミットが近づいても頭打ち感は皆無。それどころか、さらにそれ以上までスムーズに回ってしまいそうなフィーリングを味わわせてくれる。よく回る点には、本当に恐れ入る。
3気筒エンジンは、特有の振動やノイズがウイークポイントと指摘されることが少なくない。だが偶力をキャンセルするためにバランスシャフトが加えられたこのユニットでは、とくに振動が気になる場面はない。耳に届くエンジン音も思いのほか迫力のある「サウンド」と解釈できる。心が躍る好印象だ。
パワーフィールやサウンドが何ともエモーショナルな心臓には、やはり内燃機関ならではの魅力を感じる。G16E-GTSは、この先も語り継がれていくに違いない日本を代表する傑作エンジン、最新のスポーツ心臓である。