種類:水平対向 4気筒DOHC16Vターボ
総排気量:1994cc
ボア×ストローク:92.0×75.0mm
圧縮比:8.0:1
最高出力:227kW(308ps)/6400rpm
最大トルク:422Nm(43.0kgm)/4400rpm
※WRX STI(2019年モデル)の数値
EJ20は、スバルのイメージを大きく変えた名機である。登場は1989年。初代レガシィの2リッターターボで220ps/27.5kgmというスペックはかなりのハイレベルだと感じた。WRC(世界ラリー選手権)をはじめモータースポーツで大活躍し、その主役インプレッサWRXは宿命のライバル、三菱ランサー・エボリューションとバトルを繰り広げた。それでいて、一時期はスバルの大半の車種にラインアップされていた汎用高性能エンジンとしての側面も持つ。
スバルは、1995年から1997年にかけてWRCを3連覇した。1990年代は日本勢がWRCを席巻していたが、3連覇はスバルだけの快挙である。EJ20はWRCの場で2007年まで第一線で活躍した。
EJ20はその後も国内ラリーで活躍し続けたほか、スーパーGTやニュルブルクリンク24時間レースを戦うマシンにも搭載された。
市販車では、改良を繰り返しながら30年以上にわたって存在感を発揮し続けてきた。小さな変更を含めると、実に100種類近くものバリエーションがあるそうだ。
最高出力はEJ20の申し子といえるインプレッサWRX・STIのバージョン3で、すでに280psをマーク。その後も小刻みにスペック向上を図り、量産仕様は最終的には308ps/422Nmに達した。
EJ20は、独特の音と、とにかくよく回ったことが強く印象に残っている。胸のすく回転フィールこそEJ20の真骨頂に違いない。
ショートストロークゆえ高回転型で低速トルクはやや控えめだった。そのため水平対向エンジンは低速トルクが弱点という誤った認識が一般的になったのは残念である。トルクに勝る好敵手のランサー・エボリューションとは対照的と評されたものだが、2000年代初頭に等長等爆エグゾーストを採用してからは、むしろ低速トルク特性に優れるようになった。
当時ライバルは電制デバイスを駆使してコーナリング性能を高めることに力を入れていた。1990年代には「コーナリングのインプレッサ、パワーのランエボ」と評されていたのが徐々に逆転していったのを思い出す。
ちなみに、等長等爆エグゾーストの採用は、往年のボクサーサウンドを控えめなものにした。これを歓迎する声は多く、筆者もそのひとりだった。一方で惜しむ声も少なからず聞かれたものだ。
スバルは、ガラスのミッションと呼ばれていた5速MTに代わるユニットとして、自社製の6速MTを開発した。完成度は高く、EJ20の優れたパフォーマンスをより巧みに引き出せるようになった。
ご参考まで、最終限定車WRX・STI・EJ20ファイナルエディション(2019年)に搭載された8000rpm対応のバランスドエンジンは、EJ20の醍醐味をこれ以上はないほど深く味わえる素晴らしい仕上がりだった。EJ20ファンの方々にはぜひ何かの機会に味わっていただき、この思いを共有したい。