種類:直列4気筒DOHC16Vターボ
総排気量:1997cc
ボア×ストローク:85.0×88.0mm
圧縮比:8.8:1
最高出力:280ps/6500rpm
最大トルク:38.0kgm/3000rpm
※ランサー・エボリューションVIの数値
三菱を代表する4G63は、ランサーエボリューション用に開発されたと一部で誤解されているようだ。だが起源は1979年に発表されたランサーEXターボ(通称「ランタボ」)である。その後、速いと話題になったバブル期のギャランVR-4(1987年)などにも搭載され発展した。
なかなか乗る機会に恵まれなかったのだが、筆者が初めて4G63を運転したのは、1992年に生まれた初代ランサー・エボリューションだった。
インパクトは鮮烈そのもの。鎬を削るスバルのEJ20よりも強い衝撃を受けた。弾けるような強烈な加速力と分厚い低速トルクに驚き、「すごいな三菱!」と感じたものだ。
最高出力は250ps、最大トルクは31.5kgmは3000rpmという低い回転数で生み出していた。ターボエンジンはラグがあって当たり前だった時代に、全域レスポンスに優れ、しかもいかにもターボらしい力の「盛り上がり感」がある加速を味わうことができた。
踏むとズドンと加速する感覚は、同クラスの他メーカーのエンジンを断然上回っていた。どうして三菱だけここまでできるのだろうとつくづく感心した。瞬発力では当時の280ps勢をも上回っていたように思う。
その後は世代を重ねるごとにパワーアップ。エボ4(1996年)でついに280psを達成。進化を続けた。
インプレッサWRX・STIとの戦いは、ますますヒートアップしていきエボは走りだけでなく容姿がどんどん派手になっていった。さらには、エボの代名詞である独自の電制デバイスも代を重ねるごとに存在感を増していったのも印象的だった。
その走りはAYCを搭載したエボ4でひとつの区切りを迎え、さらにはACDを搭載したエボ7(2001年)で劇的に変わった。その効果の大きさをつぶさに感じ取れたのは、圧倒的にパワフルな4G63があったからにほかならない。
最終的には、エボ9(2005年)でタービンの仕様を変更し、待望の可変バルブタイミング&リフト機構、MIVECを搭載。低速レスポンスとパワフルさが増して、パンチの効いた特性となっていた。最大トルク値はエボ9のMRで当初より10kgmも大きい41.5kgmにまで増強された。4G63はランエボを象徴する名品である。WRC(世界ラリー選手権)でも、その実力をフルに発揮した。
ちなみにランサーエボリューションの最終モデルとなるエボXに搭載されたのは、4G63ではなく、直系の後継といえる新世代のアルミブロックの4B11。最大トルク値はさらに向上(43.0kgm)していたものの、ドライブフィールには心なしか控えめなイメージがあった。そんな事情もあって、4G63の鮮烈なパワフルさが、印象深く思い出されるのである。