マツダ・ロードスター990S 価格:6MT 289万3000円 試乗記
現行4thロードスター(ND型)に初の大改良が行われた。いわゆる「内外装のお化粧直し」はなく、マツダらしく走りの進化がメインだ。最軽量の特別仕様車990Sの追加と、車体姿勢の制御技術、キネマティック・ポスチャー・コントロール(KPC)がニュースである。
990SはSグレードをベースに、レイズ製軽量アルミとブレンボ製ブレーキを採用。計3.2kgのバネ下重量を軽減した。これに合わせてサスペンションのセットアップを変更(バネはレートアップ、ダンパーは伸び側の減衰を若干緩めている)。さらに電動パワーステアリングやスロットル制御も最適化されている。エンジンは1.5リッター直4DOHC16V(132ps)、トランスミッションは6速MTだ。
KPCは全車に採用。ロードスター最大の魅力「日常域の楽しさ」を犠牲にせずに、「高速・高G領域での一体感」を高めるために採用された。ロードスターのリアサスに組み込まれた、制動時に車体を引き下げるジオメトリーを活かしたアイデアで、具体的にはVDCを活用。旋回中の内輪にわずかにブレーキを掛けて車体の浮きを抑制し、内輪の接地性を高めている。0.3G以上の旋回時に、内輪と外輪の車輪速差を検知して作動する。
990Sの走りは最高だった。990Sと量販グレードのSスペシャルパッケージの重量差は20kg。常用域では「もっと重量差があるのでは?」と感じるほど軽快でキビキビした動きが印象的だ。しかも軽量モデルとは思えない、シットリとした足の動きと質感を備えている。
バネ下重量の軽減とそのメリットを活かしたサスチューニングの相乗効果だろう。速度を上げると、その魅力は一段と際立つ。
コーナリング時の動きは、ターンインから旋回時は、軽快さとキビキビ感はそのままに、クルマの無駄な動きをソッと抑えてくれる印象。つまり姿勢変化はするが、「させすぎない」絶妙な味付けだ。これにはKPCによる浮き上がりの抑制が効いているに違いない。
コーナーからの脱出時は、まるでタイヤのグリップを少しだけ上げたかのような安心感を感じた。これもKPCにより、内輪の接地が増大。タイヤが効果的に使えるようになった証拠だ。限界は上がっているが、ロードスターの楽しさをより安心して体感できるようになった「副次的効果」である。
最新モデルをワインディングで走らせて、KPCはロードスターの能力を引き出すアイテムであることを実感した。そのうえで、990Sは「NDのベスト」と断言できる。グレード選びの悩みを解消する1台だ。
グレード=990S
価格=6MT 289万3000円
全長×全幅×全高=3915×1735×1235mm
ホイールベース=2310mm
トレッド=フロント:1495/リア:1505mm
車重=990kg
エンジン=1496cc直4DOHC16V(プレミアム仕様)
最高出力=97kW(132ps)/7000rpm
最大トルク=152Nm(15.5kgm)/4500rpm
WLTCモード燃費=16.8km/リッター(燃料タンク容量40リッター)
(市街地/郊外/高速道路:12.0/17.7/19.5km/リッター)
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/50R16/+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=2名
最小回転半径=4.7m
主な燃費改善対策:ミラーサイクルエンジン/筒内直接噴射/可変バルブタイミング/充電制御/電動パワーステアリング
990S特別装備:レイズ製16インチアルミ/フロントブレンボ製対向4ピストンブレーキ/リア大径ブレーキローター&キャリパー/990S専用セッティング(ダンパー+コイル+電動パワーステアリング+エンジン制御)/ダークブルー幌/ブルー&ピアノブラック・エアコンルーバーベゼル/ブルーステッチ&刺繍入りフロアマット(op)
主要装備:アドバンストスマートシティブレーキサポート/ブラインドスポットモニタリング/ドライバーアテンションアラート/交通標識認識システム/車線逸脱警報/ダイナミックスタビリティコントロール/ヒルローンチアシスト/アダプティブLEDヘッドライト/鍛造クランクシャフト/軽量フライホイール/アルミ製パワープラントフレーム/キネマティック・ポスチャー・コントロール/本革巻きステアリング&シフトノブ/クリアタイプエアロボード/マニュアルAC/セグメント液晶オーディオディスプレイ
ボディカラー:スノーフレイクホワイトパールマイカ(op3万3000円)