ホンダN-VANをベースとした新型軽商用EVの2024年春の発売を前に、ホンダとヤマト運輸が共同で集配業務における実用性の検証を本年6月から8月まで実施するとアナウンス。ヤマト運輸のマスコットのクロネコを配したテスト車両の画像も公開
ホンダとヤマト運輸は2023年4月14日、2024年春に発売予定の新型軽商用EVの集配業務における実用性の検証を本年6月1日から8月31日まで行うと発表した。
ホンダは2050年にホンダが関わる全ての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラルの実現を目指しており、この実現に向けて四輪車においては2030年までにグローバルで30種類のEV展開を予定している。そのなかで日本市場においては、人々の生活を支え暮らしに欠かせないクルマとして重要な軽自動車があり、EVの普及にあたっては優先して取り組むべき領域だと想定する。とりわけ商用車は、環境負荷低減の観点で企業の電動化に対するニーズが非常に高いことから、同社はまず軽商用EVを皮切りに軽EVを展開していく方針を打ち出した。一方でヤマト運輸も「2050年温室効果ガス自社排出量実質ゼロ」および「2030年温室効果ガス排出量48%削減(2020年度比)」の実現に向け、その主要施策の1つとして2030年までにEV 2万台の導入を目標に掲げており、小型トラックを中心にEVの導入を進めるなど、サステナブルな物流の実現に向けた各取り組みを進めている。
こうした持続可能なモータリゼーションを推し進める両社は、N-VANをベースとした新型軽商用EVを活用し、環境負荷軽減効果の検証に加え、集配業務における実用性や車両性能の検証を行う意向を表明。さらに、充電オペレーションを含むエネルギーマネジメントに関する各種基礎データを取得し、より実用性の高いEVの運用に役立てる計画を立てた。
テスト車両の新型軽商用EVに関しては、既存の軽商用バンのN-VANをベースとしており、大容量かつ、助手席からリアまでフラットとなる荷室空間を有する。これを生かし、本検証ではヤマト運輸が導入を進めている小型モバイル冷凍機「D-mobico」を荷室に2台搭載し、冷蔵・冷凍品の配送にも対応。D-mobicoはモバイルバッテリーで駆動し、ドライアイスを使用しないため、より環境に配慮した配送を実現する。
実証テストの概要を紹介しよう。実施エリアはヤマト運輸の中野営業所(東京都杉並区)、宇都宮清原営業所(栃木県宇都宮市)、神戸須磨営業所(兵庫県神戸市)の3カ所で、車両台数は3台で実施する。検証内容は①環境負荷軽減の効果、②集配業務における実用性や車両性能、③EV運用における各種基礎データの取得・検証。このうち②に関しては、車両の使い勝手や航続可能距離などEVならではの実用性、ドアの開け閉めや乗り降りが多い集配業務を通じた車両の耐久性、様々な特徴を持つエリア、具体的には配送荷物が多く乗り降りの機会が多い東京23区エリア、1度の配送における走行距離が比較的長い栃木エリア、坂が多くアップダウンのある兵庫エリアにおける車両性能などを検証する。また③については、日々の集配業務における車速、アクセルおよびブレーキなどドライバーの運転操作や、空調による電力消費量、走行後の充電量や充電時間帯などの各種基礎データの取得と、複数台のEV運用を想定した充電オペレーションとエネルギーマネジメントの検証を行う予定だ。
前述した内容のほか、新型軽商用EVは冬季の集配業務を想定した、外気温が氷点下になる寒冷地での充電・走行テストなど、様々な環境での検証を実施。こうした取り組みを通じて、ホンダは商用EVとしてより実用性の高い軽商用EVの開発・普及を目指すという。