三菱アウトランダーPHEV・P 価格:532万700円 試乗記
アウトランダーは、三菱の新たなフラッグシップ。新型は日産&ルノーとの提携により開発が仕切り直しとなり、3社でプラットフォームやADASなどの技術を共有する名実ともに新世代モデルとなった。
ラインアップはPHEVのみ。従来型はガソリン車も選べたが、旧型のPHEVの販売比率が7割超に達していたことや時代の要請に応え日本仕様はPHEVに絞った。ユーザーにとって朗報は3列シートの新設定である。より幅広い使用シーンに対応するようになった。初期受注の販売比率は約9割が3列シート仕様だという。
ボディサイズは全長×全幅×全高4710×1860×1745mm。従来比で15mm長く、60mmワイドで、35mm高い。開発コンセプトは「威風堂々」。感覚的には数値以上に大きく見える。なお、かつてデリカD:5では物議をかもしたフロントデザインは、好意的に受け取られているようだ。
インテリアは上質。高級感があり心地いい。デザインは水平基調。これはオフロードで姿勢を把握しやすいようにするための工夫だ。三菱初のフルカラー液晶メーターは、ほしい情報を見やすく表示してくれる。見た目の先進感も好印象だ。
シートは快適設計。1列目だけでなく2列目も質感の高さは変わらない。2列目は前後スライドとリクライニングが可能。1列目よりも視線が高くなるが、頭上には余裕がある。前席下への足入れ性はそれなりだが、ヒール段差は十分に確保されている。3列目はさすがに広くはない。とはいえ、いざというときに役に立つのはいうまでもない。
PHEVシステムは大幅に進化した。フロントモーターは60kWhから85kWhに、リアモーターは70kWhから100kWhにパワーアップ。合わせて駆動用バッテリーや燃料タンク容量も増大している。1充電当たりのEV航続距離は83kmに達し、総航続距離は1000kmを超えた。また、AC100V・1500W電源による外部給電が、従来から2日増えて12日分となったのも頼もしい。
走りの仕上がりはこのクラスのSUVとして出色。ツインモーター4WDによる滑らかで力強い走りにさらに磨きがかかった。
パワー感は従来とは段違い。高い車速域でも伸びやかなモータードライブ感が維持される。思わずアクセルを踏みたくなってしまうほどだ。
しかも、走っている最中にエンジンが始動してもわからないほど静か。従来型の初期モデルとは別物だ。旧型もその後に徐々に改善され、2.4リッターエンジンを搭載してからは、ずいぶんと静かになった。だが新型は充電ロジックや車体側の手当てが効いたようで、さらに洗練されている。チャージモードで低い車速で走行しているとき以外は、エンジンの存在を感じない。
車格が近いRAV4・PHVと比較しても、アウトランダーのアドバンテージは明確。旧型は、全般的にRAV4のほうが魅力的と感じたが、新型は別もの。価格が圧倒的に高いレクサスNX450h+と比べても、走りの楽しさではけっして負けていない。
トヨタ系の2車に対するシステム上の優位点は、リアに高出力モーターを搭載した点。RAV4やNXも後輪のトルク配分を高める制御を取り入れているが、アウトランダーは出力自体が強力。さらにはAYCという武器も備えることを強調しておこう。
ハンドリングは応答遅れのない一体感が心地よい。ロック・トゥ・ロックを2.6回転に設定したクイックな操縦性をドライブしている間ずっと味わえる。
ターマック走行モードを選ぶとアクセルレスポンスは一段と鋭くなり、AYCに新たにリアの左右輪間のトルク配分を加えたS-AWCも効いて、ハンドリングがさらに俊敏になる。
ノーマルモードでは操舵力が軽くなり、応答性はやや穏やかに変化。個人的にはターマックモードの一体感のある走りが好みだ。ターマックモードの走りは、とにかく気持ちいい。ちなみに動力性能がMAXになるパワーモードも設定されているが、ハンドリングはターマックモードと同様。あえて差別化はされていない。
回生ブレーキの強さは任意に選択できる。ワンペダルで加減速できるモードも備えるが、状況によっては制御に「迷い」が見受けられる。ブレーキフィールはもう少し踏み応えがあるとベターに感じた。
乗り心地は低速走行時にはタイヤの影響か路面への感度が高く、やや硬さを感じるシーンもある。スピードレンジが高くなるにつれてフラットに変化。たっぷりとしたストロークが確保された足回りが、巧みにバウンシングして快適性を高めてくれる。ADASに三菱がやや出遅れていた車線維持支援機能が加わったのは朗報だ。
新型は、メーカーの想定よりもはるかに早く初期受注1万台超を達成した。これは新型がいかに魅力的なクルマであるかの証明といえる。
総合評価:79点
Final Comment
光るPHEVの先進性
フラッグシップにふさわしい高い完成度を実現
視界や乗降性など、SUVなのでどうしても点数が高くならない項目はあるが、PHEVパワートレーンがもたらすドライバビリティは極めて優れた水準にある。そのパフォーマンスは高く評価できる。車両全体のパッケージングや3列シートの新設定、フラッグシップらしい質感と装備も申し分ない。走りの細部に目を向けると気になる点はあるが、全体の完成度は非常に高い。付加価値の高い先進車といえる。内容を考えるとむしろ割安に感じる。
グレード=P
価格=532万700円
全長×全幅×全高=4710×1860×1745mm
ホイールベース=2705mm
トレッド=フロント:1595/リア:1600mm
最低地上高=200mm
車重=2110kg
エンジン=2359cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=98kW/5000rpm
最大トルク=195Nm/4300rpm
モーター最高出力=フロント:85kW/リア:100kW
モーター最大トルク=フロント:255Nm/リア:195Nm
駆動用バッテリー=リチウムイオン
総電力量=20kWh
WLTCモードEV走行換算距離=83km
WLTCモードハイブリッド燃費=16.2km/リッター(燃料タンク容量56リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路:17.3/15.4/16.4km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=255/45R20+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=7名
最小回転半径=5.5m
主要燃費向上対策:可変バルブタイミング/プラグインハイブリッドシステム/アイドリングストップ装置/電動パワーステアリング
主要装備:S-AWC/AYC(アクティブヨーコントロール)/ASC(アクティブスタビリティコントロール)/e-Assist(衝突被害軽減ブレーキ+踏み間違い衝突防止アシスト+車線逸脱警報&車線逸脱防止支援機能+ふらつき警報+前方衝突予測警報+標識認識システム+後側方衝突被害防止支援システム+後側方車両検知警報システム+後退時車両検知警報システム)/前後パーキングセンサー/高速道路同一車線運転支援機能(レーダークルーズコントロール+車線維持支援機能)/MITSUBISHIコネクト/100V・AC電源(1500W)/V2H用DC電源(10kW)/コントロールボックス付き充電ケーブル/エレクトリックテールゲート/フロントワイパーデアイサー/寒冷地仕様/ヒルディセントコントロール/アダプティブLEDヘッドライト/フル液晶ドライバーディスプレイ(12.3インチ)/ヘッドアップディスプレイ/ヒーター付き本革巻きステアリング/ダイヤル式ドライブモードセレクター/EVモードセレクター/ヒートポンプ式AC(3ゾーン独立温度コントロール式)/回生レベルセレクター(パドル式)/セミアニリン本革シート/前席パワーシート(リフレッシュ機能付き)/前後席シートヒーター/サードシート(床下収納式)/9インチスマートフォン連携ナビゲーション/BOSEプレミアムサウンドシステム
ボディカラー:ホワイトダイヤモンド/ブラックマイカ(op13万2000円)