ホンダがドイツのニュルブルクリンク北コースにおいて性能評価のための走行テストを敢行。量産FF車で最速となる7分44秒881のラップタイムを記録
ホンダは2023年4月20日、ドイツのニュルブルクリンク北コースでシビック・タイプRの性能評価のための走行テストを行い、量産FFモデルで最速となる7分44秒881のラップタイムを記録したと発表した。今回の記録はニュルブルクリンク(Nürburgring)公式測定値で、2019年より制定されたニュルブルクリンク公式ルールに基づく、北コース(Nordschleife)20.832kmでの測定値。2019年以前は20.600kmでの測定で、かつニュルブルクリンク非公式タイムになるという。
最速ラップタイプを生み出した主な技術を紹介していこう。
まずはパワーユニット。従来のタイプRを上回るパフォーマンスを目指して、小型軽量化し回転レスポンスを向上させた新開発モノスクロール・ターボチャージャーの採用や、ベアリングの構造変更、インテークの管径アップとストレート化、ラジエーターとインタークーラーの冷却性能のアップ、エンジンECUのリファインなどを図ったK20C型1995cc直列4気筒DOHC16V・VTECユニットを搭載し、より高出力・高レスポンスの実現を極限まで追求。最高出力は330ps(243kW)/6500rpm、最大トルクは42.8kg・m(420Nm)/2600~4000rpmを発生する。また、フロントグリル開口面積を大きくしてラジエーターの有効開口面積を48%拡大するとともに、グリル開口部から取り込んだフレッシュエアをコアサイズとファン能力を向上させたラジエーターに効率良く通し、ボンネットに設けたフードベントから排出する新設計のエアフローレイアウトを採用した。
エクステリアの面では、フロントリップスポイラーがワイドスタンスを強調しながらダウンフォースを高め、またサイドパネルから美しく隆起する一体型ワイドフェンダーやリアタイヤ前に配したサイドシルガーニッシュによって、フロントからリアに抜ける一連の空気の流れを最適にコントロール。また、アルミダイキャストステーを採用して質感を向上させたリアスポイラーや、フロア奥からつながる専用設計のリアディフューザーおよびリアタイヤ後方の“えぐり形状”が大きなダウンフォースを発生させる。さらに、ダクト部を逆台形に拡大したうえで空力性能を高めたバンパーやグロスブラックで仕上げた専用造形の空力パーツなどを配して、限界走行時における安定性を実現した。
制動性能の進化も見逃せない。マスターパワーの特性を従来仕様から変更したBrembo社製フロント大径ベンチレーテッド2ピースディスクブレーキ(Φ350mm)およびBrembo社製フロントアルミ対向4ポットキャリパーを配して、低速から高速までのさらなるコントロール性を向上。さらに、ブレーキへの導風効率を高めたことで、クローズドコースでの連続走行時におけるブレーキ温度の上昇を低減し、安定したブレーキ効力と耐フェード性を成し遂げた。
足もとにはタイプRに標準装着するミシュランPILOT SPORT 4S(265/30ZR19 93Yスチールラジアルタイヤ)の開発ノウハウを活かし、再度ミシュランとタッグを組んで共同開発した、サーキット走行向けのミシュラン PILOT SPORT CUP 2 CONNECT(265/30ZR19 93Y XLスチールラジアルタイヤ)を配備。サーキット走行性能をより引き出し、ドライグリップ性能を向上させるとともに、バランスのよいハンドリングを達成する。なお、タイヤには共同開発の証となる“H0(エイチゼロ)”を刻印した。
シビック・タイプRの開発責任者である柿沼秀樹氏は、「シビック・タイプRは、“Ultimate SPORT 2.0”をコンセプトに据え、己を超えるクルマづくりでタイプRにしかない“本質”の価値と、心に響く“官能”を磨き上げた、究極のFFスポーツを目指して開発しました。2022年9月の日本での発売を皮切りに、私たちの想像を遥かに超える驚きと喜びの声を、世界中の皆様から数多くいただく中で、もう1つ、私たちが果たさなければならない使命がありました。それは“ニュルブルクリンクFF最速”を成し遂げることです」「先代シビック・タイプRから6年の時を超え、私たちがタイプRにかけた想いと進化の先に到達した新次元。ついにその称号を世界中のタイプRファンの皆様にお渡しすることが叶いました。すでにお乗りいただいている方から、これからオーナーになられる方まで、私たちとともにその誇りを胸にしながらタイプRを愛し、そして満喫していただけることを心より願っています」とコメントしている。