2004年式プジョー206RC 新車時価格:5MT 294万円
1998年のパリ・サロンでデビューしたプジョー206(日本販売は1999〜2007年)は、プジョーの名声を高めた傑作コンパクトであると同時に、WRC(世界ラリー選手権)を席巻したファイターだった。
1999年にWRC参戦を開始すると、俊敏な操縦性と強力なパワーでライバルを圧倒。2000年から3年連続でWRCチャンピオンに輝いた。プジョーは、1980年代にもグループBの205ターボ16で2年連続WRCチャンピオンを獲得、さらに世界で最も過酷といわれたパリ〜ダカール・ラリーでも1987年から4連覇するなどラリーフィールドで豊富な経験を持つ名門である。
そのプジョーが手がけた206は速くて当然、まさに勝利のためのマシンだった。
206には、「WRC王者」のイメージを投影したスペシャルモデルが存在する。2003年に登場した206RCである。RCは、S16をベースにしたホットモデル。
注目点はグッとパワフルに変身したエンジンだった。2リッターDOHC16Vのパワースペックは177ps/7000rpm、202Nm/4750rpm、S16比で40ps/8Nmも力強く、それに対応してトランスミッションも特別仕立てになっていた。5速MTは、1速のギア比を高めたクロースレシオ仕様。7000rpmまで引っ張ると1速77km/h、2速103km/h、3速142km/h、4速184km/h、5速225km/hまで伸びる。
一方、フロントがストラット式、リアがトレーリングアーム式の足回りは、フロントアームを鍛造に変更、リアには2本のタイロッドを追加。剛性を大幅に高めた。
対面した2004年モデルは、適度にレーシーな雰囲気を発散していた。前後バンパーをプジョースポーツライン製に交換し、WRCマシンと共通イメージのOZ製アルミを装着していたからだろう。サポート性に優れたバケットシートに身を落ち着け、イグニッションON。2リッターチューンドユニットは心地よい排気音とともに瞬時に目覚めた。
走りは痛快。エンジンは豪快に吹き上がり小柄なボディを瞬時にスピードの高みに引き上げる。節度感のあるシフトフィールと相まって、まさに意のままに走る。
ただし、当初の興奮が収まると、RCが決してピーキーなクルマではないことに気がついた。エンジンの最高出力回転数は7000rpmに設定されているが、中低回転域から豊かなトルクを発生。GTカーとしても十分な柔軟性を持っている。
乗り心地は意外に良好。それなりにスパルタンだが、決して不快ではない。
WRCは公道で競うスポーツである。エンジンパワーだけでなく、操作性や快適性を含めた総合性能が勝利を引き寄せる。RCに乗って、改めてプジョーのスポーツモデル作りの奥深さを知った。
206RCは、走るほどに魅力が際立つ、超一級のホットハッチである。
グレード=206RC(2004年式)
新車時価格=5MT 294万円
全長×全幅×全高=3835×1675×1440mm
ホイールベース=2440mm
トレッド=フロント:1445×リア:1435mm
車重=1110kg
エンジン=1997cc直4DOHC16V(プレミアム仕様)
最高出力=130kW(177ps)/7000rpm
最大トルク=202Nm(20.6kgm)/4750rpm
10・15モード燃費=未公表(燃料タンク容量50リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トレーリングアーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=205/40R17+アルミ
乗車定員=4名
最小回転半径=4.9m