ランボルギーニが新型HPEVモデルの「レヴエルト(REVUELTO)」を日本で初公開。パワートレインにはミッドシップ配置の6.5リットルV12エンジンに8速DCT組込の1基を含む3基の電気モーター、軽量・高出力のリチウムイオン電池で構成するプラグインハイブリッドシステムを搭載。日本での車両価格は約6600万円に設定
アウトモビリ・ランボルギーニ・ジャパンは2023年6月7日、アヴェンタドールの後継を担う次世代フラックシップスポーツの「レヴエルト(REVUELTO)」を日本で初公開した。発表の席には、ランボルギーニ・ジャパンのダビデ・スフレコラ代表のほか、ランボルギーニ本社のプロダクトラインダイレクターのマッテオ・オルテンツィ氏、そしてデザイン部門を統括するミィティア・ボルケルト氏が登壇し、同車の魅力を熱く解説。また、ランボルギーニの歴代V12モデルである400GT、ミウラ、カウンタック、ディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールをひな壇に上げ、最も新しいファイティングブルV12エンジン車の日本デビューに華を添えた。
改めてレヴエルトの特徴を紹介していこう。
本国では本年3月30日(現地時間)にワールドプレミアを飾り、過去に登場したランボルギーニ車の伝統に倣って闘牛史に名を遺す屈強なファイティングブルに由来する車名を冠した新型レヴエルトは、ランボルギーニ初のプラグインハイブリッドモデル、ランボルギーニ流の表現ではハイパフォーマンス EV(HPEV)に位置する。パワートレインはミッドシップ配置の6.5リットルV12自然吸気エンジンに、8速DCT組込の1基を含む3基の電気モーター、軽量・高出力のリチウムイオン電池で構成し、ドライビングモードとしてEVモードを含む13種類を設定。基本骨格にはフルカーボンファーバーの新型モノコック構造「monofuselage(モノフューズレージ)」を採用し、ここに効率性・機能性・スタイルが織りなす最高のシナジーを表すエアロダイナミクスと車両デザインを纏わせた。
エクステリアはランボルギーニのV12スーパースポーツのDNAを忠実に踏襲しながら、最新のデザイン言語を採用して進歩的かつエモーショナルなスタイリングに仕立てる。基本シルエットはフロントからキャビンとエンジンを包み込んで六角形のエキゾーストへと収斂していく2本の線が囲む、彫刻的でアグレッシブなクーペフォルムで構成。ランボルギーニのV12スーパースポーツのアイデンティティといえる垂直に開くシザーズドアも、剛性を高めながら導入した。各部のアレンジにも徹底してこだわる。フロント部はY字形のデイタイムランニングライトを組み込んだ新造形のLEDヘッドランプやシャークノーズを形作るフロントフード、スプリッターからフロントフードへとつながる空力学的なブレードなどを配して、精悍かつ印象的なマスクを演出。一方でサイドビューは、フロントのホイールアーチの後方に設けたサイドフィンからドアおよびサイドエアインテークへの大きなくぼみに沿って車体の側面の気流を導くエアロデザインやY字形でアレンジしたドアハンドル、大径シューズを強調するホイールアーチなどを採用する。さらにリアセクションでは、デイタイムランニングライトと呼応するY字形のシグネチャーを組み込んだリアコンビネーションランプや2つの六角形エキゾーストおよび幾何学的な輪郭を持ったウイングなどを装備して、存在感あふれる後ろ姿を具現化した。そしてトップ部は、広い頭上スペースを確保しながら美観と空力性能を併せ持ったルーフ造形に、カーボンフードで覆ったうえで縦置きV12エンジンの上面を露出させたコンパートメント部を組み合わせて、インパクトの強いルックスを創出する。ボディサイズは全長4947×全幅2033(ドアミラー含2266)×全高1160mm、トレッド前1720×後1701mm、ホイールベース2779mmに設定している。
エアロダイナミクスも最大限に重視し、ダウンフォースとドラッグを改善する効率性、適正レベルのマスフローを確保するコンポーネントの相乗効果、エアロダイナミクスによるブレーキ冷却機能の統合、そしてクリエイティブなアプローチで当初からエアロダイナミクス要素を考慮したデザイン・インスピレーションという4つの柱を新たに定義して、エアロダイナミクスの枠組みを転換させる。なかでも、あらゆる走行条件の中で最高の空力性能を発揮できるように新たに設計した可変式リアウイングおよびアクチュエーターは要注目。ウイングのポジションは3段階の設定で、ドライビングモードと走行状況によって変化するとともに、ステアリングホイールのダイヤルでドライバーが変更することも可能とした。ほかにも、中央部の端が放射状、水平部の端が斜めになったカーボンファイバー製のフロントスプリッターや、カーブした細いブレード状のパーツをアンダーボディに配したリアボーテックスジェネレーター、低角度の中央部と高角度の水平部でデザインした新造形のディフューザー、アンダーボディから気流を集めてリアブレーキの冷却ダクトへと風を導くリアホイール前のNACAダクトなどを採用して、空力効率をマキシマムに高めている。
2シーター構成のインテリアは、“feel like a pilot”というコンセプトのもと、ドライビングに比重を置いたコクピットデザインに仕上げる。ダッシュボードにはカーボンファイバー材を採用し、一部の表面には上質なレザーや新超軽量素材のCorsa-Texを使用。ここにY字形のセンターパネル内に組み込んだ車両の情報システムの中心である8.4インチ縦型タッチスクリーンや、12.3インチのドライバー側デジタルディスプレイ、9.1インチの助手席側ディスプレイを配備する。スマートフォンと同様に直感的な手の動きでアプリケーションや情報を中央のディスプレイからサイドディスプレイへと移動させるランボルギーニ初のスワイプ機能も導入した。また、エアベントやバケットシートの表皮などに六角形の専用エレメントを配した点は、ランボルギーニのDNAを感じさせる部分。赤いカバーで覆い、操作時には上方へと跳ね上げるENGINE START/STOPスイッチのアレンジも印象的だ。さらに、ステアリングホイールはサーキット専用マシンのEssenza SCV12などレースの世界で培った経験をもとに新たにデザイン。スポークに配した4個のダイヤルは、ドライビングモードやリアウイング、リフト装置の操作に使用する。一方、キャビン空間自体はゆったりとしたスペースで実用性を確保するとともに、サーキット走行に向けた装備アイテムが積載できるように設計。頭上はアヴェンタドール比で26mm高く、足もとは同比で84mm広いスペースを実現し、合わせてシート後方にはゴルフバッグサイズの荷物が収納できる空間を設ける。さらに、センターダッシュボードの下および座席の間にも収納スペースを設定し、フロントフード下には小型のキャリーバッグが2個入るコンパートメントを配備した。
なおカラーバリエーションについては、標準の仕様で8種類のボディカラーと3種類のインテリアカラー/トリムを設定。さらに、オーダーメイドプログラムのアド・ペルソナム(Ad Personam)の選択も可能としている。
基本骨格に関しては、航空工学からインスピレーションを受けたフルカーボンファーバーの新型モノコック構造「monofuselage(モノフューズレージ)」を採用する。単一エレメントから成るリング状のコンポーネントに炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使い、車両の支持構造を形成。引き手タブ、フロントファイアウォール、ピラー部などのForged Composites(フォージドコンポジット)構成部は、モノリシック型ロッカーリングによって最適に固定・接続した。また、フロント部には2008年にランボルギーニが初めて導入したカーボンファイバー製特殊素材のForged Compositesを、LB744の特性に合わせて新設計。合わせて、フロントのコーンもカーボンファイバー材で仕立てる。さらに、ルーフ部は従来のプリプレグ素材を使用する高圧複合オートクレーブ製造で形成したカーボンファイバー材を採用した。この結果、従来のアヴェンタドールに比べて10%軽く、フロント部は従来のアルミ製と比べて20%軽量化。さらに、ねじり剛性はアヴェンタドールよりも25%アップし、フロント部の衝撃吸収性は約2倍に引き上がった。一方、リア部のシャシーには強化アルミ合金を使用し、リアドームの2カ所に中空キャスティングを導入。また、リアサスペンションのショックタワーとパワートレインのマウントを1つのコンポーネントとして統合し、軽量化や堅牢性の向上、溶接部の大幅な削減を実現した。
シャシーについては、進化版の前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションにLamborghini Magnerideを組み込んだLMRダンパーを配備。操舵機構には、専用セッティングのEPS(電動パワーステアリング)を採用する。足もとには前9.5J×20/後12J×21アロイホイール+前265/35ZRF20/後345/30ZRF21 POTENZA SPORTランフラットタイヤを標準で装着し、オプションで前9.5J×21/後12.5J×22アロイホイール+前265/30ZRF21/後355/25ZRF22ランフラットタイヤを設定。制動機構には前φ410×厚38mmディスク+10ピストン・アルミニウム製固定モノブロックキャリパー/後φ390×厚32mmディスク+4ピストン・アルミニウム製固定モノブロックキャリパーのCCB(カーボンセラミックブレーキ)Plusを装備した。
パワートレインはミッドシップ配置の6498.5cc・V型12気筒DOHCエンジンに、8速デュアルクラッチトランスミッション組込の1基を含む3基の電気モーター、パウチセルで容量3.8kWhのリチウムイオンバッテリーでプラグインハイブリッドシステムを構成。システム総出力は1015hpに達し、最高速度は350km/h以上、0→100km/h加速は2.5秒と公表する。また、バッテリーの蓄電量がゼロまで落ちた場合には家庭のAC電源または7kWまでのEV用充電器を使用して、約30分でのフル充電を実現。前輪の回生ブレーキでの充電または エンジンからの直接充電でも、約6分で充電が完了する。
L545の型式を冠する6498.5cc・V型12気筒DOHCエンジンは徹底した軽量化を図り、総重量は従来のアヴェンタドール用V12比で17kg軽い218kgを達成。また、レイアウトはアヴェンタドールから180度回転して搭載する。さらに、9500rpmまでの回転域に対応可能な新設計の分配装置を配し、最高出力は825hp/9250rpm、最大トルクは725Nm/6750rpmを実現した。一方、シリンダーにつながるエアインテークダクトを再設計し、吸気量を増やして燃焼室での最適な空気の流れを確保。エンジン内の燃焼も、2つの制御ユニットで燃焼室内のイオン化を制御することによって最適化を図る。圧縮比はアヴェンタドール・ウルティマエの11.8:1よりもさらに高い12.6:1に設定した。
組み合わせるモーターは、フロントアクスルに回生ブレーキ機能を備えた油冷式アキシャルフラックス(軸方向磁束)型モーターを2基(それぞれ最高出力110kW/最大トルク350Nm)、エンジン後方のリアに8速DCTを組み込んだモーターを1基(最高出力110kW/最大トルク150Nm)搭載して、電動4WDを構成。リアモーターはスターターとジェネレーターも兼ねる。一方、従来トランスミッショントンネルがあった場所には、長さ1550×幅240×高さ301mmのユニットで総電力量3.8kWhのパウチセル駆動用リチウムイオンバッテリーを格納した。
8速DCTはリアモーター下方に横置き搭載。内部には2本のシャフトを配し、1本が偶数ギア、もう1本が奇数ギアに当てられる。コンパクトに設計したことも特徴で、長さ560×幅750×高さ580mmと小型化し、リアモーターと合わせた総重量は193kgに抑えた。
システム総出力は1015psを発生。パワーウェイトレシオはランボルギーニ史上最小となる1.75kg/psを達成する。性能面では、0→100km/h加速が2.5秒、最高速が350km/h以上とアナウンスした。
新しいプラグインハイブリッドのパワートレインや電動トルクベクタリングおよびLDVI 2.0予測システムの採用により、LB744は電動モーターのサポートの最大化や、ゼロエミッション4WDを含む新しいドライビングモードの導入が可能となる。具体的には、Recharge(リチャージ)、Hybrid(ハイブリッド)、Performance(パフォーマンス)という3種類のドライビングモードを採用。さらに統合制御システムとして、都心での日常的なドライブ用に設計したCittà(シティの意)、ダイナミックなドライブや長距離走行に最適なStrada(ストラーダ)、運転する楽しさとレスポンスのよさを兼ね備えたエキサイティングなドライビングを提供するSport(スポーツ)、ダイナミクス性能をトラックで際立たせるためにセッティングしたCorsa(コルサ)という4種類のモードを設定し、EVモードを含めて計13種類のドライビングエクスペリエンスの提供を実現した。モードの切り替えは、新デザインのステアリングホイール上に配した2つのロータースイッチで実施する。
各統合制御システムの特徴を紹介していこう。Cittàは電気モードでの排出規制区域指定の歴史的市街地内などでの運転が可能で、サスペンションシステムやトラクションコントロール、トランスミッションは快適性を重視し、エアロダイナミクスのドラッグを低減する。また、最高出力は180hpに制限して燃費の向上を図る。次いでStradaは、高い快適性とスポーティさを融合し、最高出力は886hpまでに制限。V12エンジンは常にアクティブな状態で、いつでもバッテリーの再充電ができる。さらに、フロントのe-axleはトルクベクタリングをサポートし、アクティブエアロダイナミクスは高速走行する際にも最高レベルの安定性を提供する。一方でSportは、ハイブリッドシステムにサポートされたエンジンが作動し、最高出力は907hpを発生。V12ならではの最高に感動的なエンジン音も楽しめる。最高水準のレスポンスで応えるトランスミッションや、走りの歓びを高めるサスペンションとエアロダイナミクスのセッティングなども同モードの訴求点だ。そしてCorsaは、Performanceモードでパワートレイン性能のピークとなる最高出力1015hpを発生。ハイブリッドシステムのコントロールは、e-axleの効果(トルクベクタリングおよび全輪駆動)を最大限に活用できるように調整される。エレクトロニックスタビリティコントロール(ESC)を無効化して、アクティブコントロールを使用せずに最大限の出力を体験することも可能。さらに、左側のローターの中心にあるボタンを押して有効化するローンチコントロール機能を使って、フルパワーでスタンディングスタートを切ることもできる。
先進安全運転支援システム(ADAS)の拡充も訴求点。車線をモニタリングしてドライバーが気づかない間に車線をはみ出した場合にはステアリングを補正して走行レーンに正しく導く「ALDW(アクティブ車線逸脱警報)」や、死角をモニタリングして車線変更の際に危険があればドライバーに知らせる「LCW(車線変更警告)」、車両速度と先行車との車間距離を調整しながら自動的に加速したり、ブレーキを作動させたりする「ACC(アダプティブクルーズコントロール)」、後退時に後方を何かが横切ろうとしているのを検知するとドライバーに警告し、衝突の危険性が高まっている場合にはブレーキを作動させる「RCTA(後進時車両検知警報)」、コーナリング機能付きのオートアダプティブロービームおよびノーグレアマトリックス機能を組み込んだハイビームなどの最新システムを、フルパッケージで採用している。
なお、レヴエルトの日本での車両価格は約6600万円に設定するが、日本向けの割り当てはすでに数年分が完売しているという。