「マツダはロータリーをあきらめない――」がいよいよ量産工程へ。マツダがロータリーエンジンを発電機として使うプラグインハイブリッドモデル「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」の量産を広島の宇品第1工場においてスタート。まずは欧州向けモデルを生産。生産工程における環境負荷低減の取り組みも実施
マツダは2023年6月22日、ロータリーエンジンを発電機として使用するプラグインハイブリッドモデル「MX-30 e-SKYACTIV R-EV(エムエックス サーティー イースカイアクティブ アールイーブイ)」の欧州向けの量産を開始したと発表した。
本年1月開催のブリュッセルモーターショーでワールドプレミアを果たしたMX-30 e-SKYACTIV R-EVは、MX-30の基本的な提供価値はそのままに、バッテリーEVとしての使い方を拡張したシリーズ式プラグインハイブリッドモデルとして開発。日常の幅広いシーンにおいてバッテリーEVとして使える85kmのEV走行距離(欧州WLTPモード)を備え、発電によってさらなる長距離ドライブにも対応し、さらに走行の全てをモーターで駆動する。
その発電機として採用したのが、マツダが誇るパワーユニットのロータリーエンジンだ。8Cの型式を冠した新開発の発電用ロータリーエンジンは、必要とされる出力性能をコンパクトに実現できるロータリーエンジンの特長を活かし、高出力モーター、ジェネレーターと同軸上に配置してモータールームに搭載。そして、このコンパクトな電動駆動ユニットと、17.8kWhのリチウムイオンバッテリー、50リットルの燃料タンクを組み合わせることで、独自のシリーズ式プラグインハイブリッドシステムを構成した。また、エクステリアには専用のe-SKYACTIV R-EVエンブレムや、ロータリーエンジンの意匠をかたどったeエンブレムを装備している。
MX-30 e-SKYACTIV R-EVの生産は、広島県広島市に居を構える宇品第1工場において実施する。ロータリーエンジン搭載車を量産するのは、2012年6月にRX-8の量産を終了して以来、約11年ぶりだ。
また、マツダはMX-30の生産工程において、さらなる環境負荷低減の取り組みを実施する。MX-30のデザインの特徴のひとつであるマルチトーン塗装を行う専用の塗装ラインでは、塗分けが必要な部分に的確に塗料を噴射するスプレーガンを導入。ノズルとボディ表面の距離をミリ単位で管理することで、塗料の噴射ロスを低減した。さらに、塗料を乾燥させる工程では、通常の塗装ラインでは約140℃まで熱して塗料を乾燥させるのに対して、約80℃の低温で硬化する新開発の塗料を採用。こうした一連の取り組みにより、通常の塗装ラインでマルチトーン塗装を行う場合と比較して、使用するエネルギーを大幅に削減し、年間CO2排出量に換算して約34~37%を削減することに成功している。
一方で2021年7月に稼働した広島本社工場の太陽光発電設備は、1.1MWの発電能力を実現。発電した電力は、同工場で生産するMX-30 EV モデルに加え、新たに量産を開始したe-SKYACTIV R-EVの出荷時のバッテリー充電をまかない、さらに工場全体で使用する電力としても供給している。
なお、MX-30 e-SKYACTIV R-EVは日本にも導入する予定だが、発売日時や車両価格などに関しては、現在のところ正式なアナウンスはない。