【新世代スポーツ研究】時代は変わった!クラウンは世界規格のスポーティモデルに変身中。その走りを語る

クラウン・スポーツ・プロトタイプ。スポーツはクラウン第2のボディ。全長×全幅×全高4710×1880×1560mm。クロスオーバー比で全長が220mm短く、全幅は40mmワイド。ホイールベースは80mm短縮

クラウン・スポーツ・プロトタイプ。スポーツはクラウン第2のボディ。全長×全幅×全高4710×1880×1560mm。クロスオーバー比で全長が220mm短く、全幅は40mmワイド。ホイールベースは80mm短縮

ドライバーズカーとして研鑽してきた日本の誇り

 クラウンは、長きにわたって日本の高級セダンを象徴する存在だった。だが比較的早い時期からスポーティさのアピールに力を注いできた面がある。

 走りのクラウンのイメージリーダーとなった「アスリート」は2003年登場の12代目「ゼロクラウン」以降のイメージが強い。だが最初に設定されたのはバブル期に「バカ売れ」した8代目(1987年登場)の特別仕様車としてだった。
 その後しばしのインターバルを経て、1999年登場の11代目で復活。アスリートには、280㎰を発揮する2.5リッターターボの1JZ-GTEユニットを搭載するVグレードが設定された。これがもう、クラウンでここまでやるかと思えるほど、エンジンの速さを強調した味付けになっていた。もちろんアスリート系はハンドリングも別物。それまでのソフト路線とは一線を画すスポーティな仕上がりだった。続くゼロクラウンでは、アスリート系を前面に押して、スポーティ路線をより明確に打ち出したのはご存じのとおりだ。
 以降もクラウンは、ロイヤル系とアスリート系という2本柱を踏襲。従来型の15代目(2018年登場)ではアスリートの後継として新たにRS系をラインアップ。ニュルブルクリンクで走りを鍛えた経緯を強調するなど走行性能に注力した姿勢を大々的にアピールした。

クロスオーバー

スポーツ

 かつてのFRベースのクラウンと、リフトアップしてFFベースの4WDとなった最新のクラウンは、メカニズム面ではまったく関連性がない、共通点はネーミングのみという印象である。とはいえ開発関係者としてはそうではなく、これまでのクラウンを愛用してきたユーザーを相当に意識したようだ。新型は、性格的には全車がスポーティ仕様のRSというイメージ。スタイリッシュで走りも際立っている。

RSの高次元バランスに感動。新設定のスポーツは、さらに上をいく存在として期待

 すでに販売がスタートしているクロスオーバーは、SUVとしては車高が低め。SUVクーペという言葉こそ使っていないものの、日本車では数少ない、スペシャルティな味わいを持っている。新感覚のスポーティなルックスに魅力を感じる人は少なくないことだろう。

 走りは、駆動方式を感じさせないようにしたという。これはFFのネガを払拭したという意味で、その要点となっているのが、後輪操舵とモーター駆動だ。エンジン音や振動から横置きレイアウトである構成が感じられるものの、ニュートラルステアを実現したハンドリングは前輪が駆動していることを感じさせない仕上がりだ。

クロスリア

クロス室内

 2.5リッターハイブリッドのベーシックなG系でもハンドリングの完成度に感心したが、さらに魅力的なのが、従来型から名称を受け継ぐスポーティグレードのRSである。
 デュアルブーストと名づけられた2.4リッターターボとモーターを組み合わせたハイブリッドパワートレーンは低回転からレスポンスが鋭く、十分に過給されるといかにもターボらしいパワフルな加速を楽しめる。エンジン音がもう少し官能的だとなおよいのだが、盛り上がり感のあるパフォーマンスは魅力的だ。

 ハンドリングも素晴らしい。G系のリアモーターが空冷式のところを、RSは出力を躊躇せず出せる水冷式とした。リアの横力が遅れなく即座に立ち上がり、ステアリングを切るとクイックに応答する。
 その刺激的な走りからは、「クラウンがFFベースなってつまらなくなった」などと絶対にいわせたくないという開発陣の強い思いが伝わってくる。確かに電動化技術の進化は、駆動方式に関する常識までも変えてしまったようだ。FFベースを感じさせない素直な動きで乗りやすいG系も好印象だが、RSがなかったら、「新世代スポーツ」という切り口で、推薦することはなかっただろう。

スポーツ2台

スポーツ室内

 そう思っていたところ、さらに気持ちが昂るクラウンが、まもなく登場する。車名に「スポーツ」と付けた、クラウン・スポーツだ。
 クロスオーバーの日本車離れしたスタイリングはかなりのインパクトで、いまでも街で走る姿を見かけると思わず目で追ってしまうほどだが、クラウン・スポーツにはそれを上回る鮮烈な印象を受ける。
 ボディサイズは全長×全幅×全高4710×1880×1560mmとクロスオーバーと比べて全長が220㎜も短く、ホイールベースは2770mmと80mm短縮されている。しかもワイドトレッド化が図られているようだ。走りの基本構成からして、一段と期待が高まる。

 さらにスポーツは、後輪操舵や駆動力と制動力を緻密に制御してハンドリングの向上を図るシステムなど、クロスオーバーRSにも搭載されたデバイスを共用しつつ、さらに走りの向上を図る新しい制御が盛り込まれるという。全体的にスポーティなチューニングが施されるのは間違い。

 HEVだけでなくPHEVがラインアップされるのも楽しみ。最近のトヨタはPHEVをパフォーマンス的にシリーズの頂点に位置づける傾向がある。おそらくクラウン・スポーツのPHEVもそうなるだろう。印象的だったクロスオーバーRSの走りを上回るインパクトの持ち主。スポーツは大いに期待できそうだ。

クラウン・クロスオーバー主要諸元

グレード=クロスオーバーRSアドバンスト
価格=THS(6AT) 640万円
全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース=2850mm
トレッド=フロント:1605/リア:1615
車重=1920kg
エンジン=2393cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=200kW(272ps)/6000rpm
最大トルク=460Nm(46.9kgm)/2000〜3000rpm
モーター最高出力=フロント:61kW(82.9ps)/リア:59kW(80.2ps)
モーター最大トルク=フロント:292Nm(29.8kgm)/リア:169Nm(17.2kgm)
WLTCモード燃費=15.7km/リッター(燃料タンク容量55リッター)
(市街地/郊外/高速道路:12.6/15.8/17.6)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/45R21+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m

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