トヨタ・プリウス(HEV & PHEV) 価格/275万〜460万円 試乗記
歴代プリウスは、「スポーツ」というテーマとは縁遠い存在だった。だが新型は積極的に「走りを語りたくなる」クルマになった。
実は旧型4代目もドライバビリティはなかなか高い完成度だったのだが、デザインが物議をかもした経緯があってか、走りにあまり目が向けられなかった。その点、新型はわかりやすい。誰の目にもスタイリッシュなルックスになって、走りもそれにふさわしいスポーティなフィーリングに味付けされている。
トヨタのシリーズパラレルハイブリッドといえば、どれもアクセルレスポンスが「眠い」感じで、いくら燃費はよくても走りはいまひとつ。マニアはそこで萎えたものだった。だが4代目でだいぶ改善され、新型はさらにリニアになっている。
ハンドリングは気持ちいい。最新のTNGAを採用し、操舵応答性に直結するフロントの剛性を高め、19インチタイヤを履き、下山のテストコース(愛知県)で鍛え上げただけはある。スポーツカー的な観点で評価しても完成度が高い。
ベーシックなHEVの2WDでも十分に走りが楽しめるし、PHEVは一段と魅力的だ。新型のPHEVは性能面でも圧倒的な上位に位置づけられている。従来型は、見た目が差別化された上級グレードだった。ただし、走りにおいては、大容量バッテリーを積んで重くなったことが動力性能面でも運動性能面でもマイナスに作用していた。
新型は、大きなバッテリーとともに強力なモーターを搭載。HEVよりも速いというわかりやすい魅力が与えられた。0→100km/h加速は、HEVよりコンマ8秒も速い6.7秒で走り切る。7秒を切るのはなかなかの俊足だ。重量増による運動性能への影響も歴代モデルほど大きくない。
一方で実際に触れてみて、これはいい!と思ったのが、HEVの4WDである。パワーアップしたモーターで後輪を駆動する効果は大きい。ハンドリングは2WDとは別物。ステアリングの切り始めから2WD以上に応答遅れがなく回頭し、小さな舵角でスイスイと曲がれる。走りの一体感がさらに増していて気持ちよく走れるのだ。その感覚は街中で交差点を曲がるだけでも十分に味わえる。
それだけではない。動力性能も前後モーターの出力を適宜配分できる4WDの強みが生きている。体感的なゼロスタートの瞬発力は、PHEVを含めシリーズトップ。車速が高まると、出力の高いPHEVや軽量なHEVの2WDがだんだん優位になっていくのだが、日常的に最もよく使う、走り出してからしばらくの間は4WDがいちばん速い。つまりハンドリングでも速さでも、実はHEVの4WDが最高にスポーティさを体感できる機会が多いわけだ。
PHEVの4WDがあったら、一段とスポーティさが味わえそうなのだが、現状では各種の制約があり難しいらしい。最新プリウスは、スタイルでも走りでも、気持ちが昂るクルマ。どれが自分にとってベストかは、実際に試乗して決めるといいだろう。
グレード=2リッター HEV・Z(FF)
価格=THS 370万円
全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース=2750mm
トレッド=フロント:1560/リア:1570mm
車重=1420kg
エンジン=1986cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=112kW(152ps)/6000rpm
最大トルク=188Nm(19.2kgm)/4400〜5200rpm
モーター最高出力=83kW(113ps)
モーター最大トルク=206Nm(21.0kgm)
WLTCモード燃費=28.6km/リッター(燃料タンク容量43リッター)
(市街地/郊外/高速道路:26.0/31.1/28.2km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/50R19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m