【CD取材ノート】ロータリーはまさに異次元。2代目のルーチェで感じた快感の回転フィール! by 大谷達也

ルーチェ メイン最初はエンスト、でも走ったら素晴らしい世界が待っていた

 私が初めて公道で走らせたクルマは、12A型ロータリーエンジンを搭載した2代目ルーチェのGSⅡだった。
 1970年代前半の日本車は、アメリカ車の強い影響を受けた曲線的で贅沢な(「無駄が多い」ともいえる)デザインが多かった。この時代のルーチェ2ドアハードトップはまさにその典型的な存在だった。ただし、マツダらしくデザインの質は高く、ボディの全長に対するホイールベースの比率は適正でプロポーションは秀逸。イタリア語で“光”を意味する“Luce”のネーミングもしゃれていた。

ルーチェ02

ルーチェ03

 まだ運転に慣れていなかった私は、マニュアルギアボックスを操って1速に入れると、徐々にクラッチペダルを離したが、あえなくエンスト。たしか2回目か3回目の挑戦で、ようやく発進できたと記憶している。
 まあ、まだ10代だった私の運転はそれくらいヘタだったわけだけれども、言い訳をさせてもらうと、当時のロータリーエンジンは驚くほど低速トルクが細かったともいえる。

 しかし、ひとたび動き始めてからの反応は痛快そのもの。教習所で体験したレシプロエンジンとは違ってピストンの上下動に伴う振動がまるで感じられず、精度の高い球体(に近いもの)が滑らかに回転している感触は快感。まさに異次元体験だった。あまりにエンジン回転の上昇が素早く滑らかなため、レッドゾーンに近づくと「ピーッ」という警報音が鳴る仕組みになっていたことを、ぼんやりと思い起こす。

MX-30

R-EVイメージ

 そんなロータリーエンジンが、マツダ技術陣の血の滲むような努力の末に誕生したことを知ったのは、それからさらに10年が過ぎ、私が自動車雑誌の編集部員になってからのことだった。

【プロフィール】
大谷達也(おおたにたつや)/電機メーカーの研究室に勤務後、自動車専門誌の編集に携わり、2010年よりフリーランスに。ハイパフォーマンスカーが得意ジャンル。英語で海外エンジニアと直接インタビューできる語学力の持ち主。AJAJ(日本ジャーナリスト協会)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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