アストンマーティンがDBシリーズの血統を受け継ぐ新型スポーツカーのDB12にオープントップモデルの「DB12ヴォランテ」を設定。開発はクーペモデルと並行して実施。電動開閉式のファブリック製トップは“Kフォールド”と呼ぶ折り畳み機構によって流麗なローラインパッケージを実現
英国アストンマーティンは2023年8月14日(現地時間)、DBシリーズの新型スポーツカーであるDB12のオープントップモデル「DB12ヴォランテ(DB12 Volante)」を発表した。
「グランツーリスモのあるべき姿を再定義した、世界初のスーパーツアラー」を謳うクーペモデルのDB12は、スポーティなキャラクターとダイナミックな走行性能を大幅に進化させるとともに、伝説的なDBの血統を受け継ぎながら独自の新しいカテゴリーを創出したアストンマーティンの新世代スポーツカーとして本年5月にデビュー。今回発表されたオープントップモデルのDB12ヴォランテは、クーペモデルの登場からわずか3カ月後のデビューとなるわけだが、実はDB12ヴォランテの開発はクーペモデルと並行して実施しており、それが早期のデビューにつながり、また完成度の高いオープンスポーツカーに仕立てる背景となった。
アストンマーティンのアメデオ・フェリーサ最高経営責任者は、「多くの顧客にとってオープントップドライビングは、至極の楽しみとなっています。アストンマーティンのヴォランテは、こうした喜びを生み出すため、60年以上にわたり独自のスタイルで表現し続けてきました。新しいDB12ヴォランテでは、やや発想を変え、DB12クーペの純粋さと傑出したスポーティさをそのまま活かすことで、このような喜びを強調するクルマを生み出しました。あらゆる点で本物かつ希少なスポーティングコンバーチブルであるDB12ヴォランテは、先入観を覆し、新世代の顧客層にアプローチします」とコメントしている。
では、DB12ヴォランテの特徴を紹介していこう。
まず基本骨格は、クーペと同様に押出接着アルミニウム・ボディ構造およびコンポジット(複合)パネルで構成したうえで、オープンボディ化に即してAピラーやコクピット回りなどを入念に強化するとともに、エンジンクロスブレースを含むアンダーボディコンポーネントを変更。横剛性の改善によってサスペンションのパフォーマンスと洗練度を高め、全体的なねじり剛性を向上させた。そして、トップ部には8層の遮音素材を採用した電動開閉式のファブリック製ソフトトップを配備。オープンに要する時間は14秒、クローズドは16秒でこなし、また50km/hまでの速度域であれば向かい風が吹いていても開閉が可能で、さらにクルマから2mの範囲であればリモートキーでルーフを開閉することができる。トップのカラーはブラックが標準で、ほかにレッド、ブルー、ブラック&シルバーをオプションで用意した。
ソフトトップの格納機構も要注目。“Kフォールド”と称する2段階の折り畳み機構を採用し、格納時のルーフの厚みを260mmに抑えてオープン時の流麗なローラインパッケージを実現するとともに、有効な積載スペース(ルーフ開206/ルーフ閉169リットル)を確保する。また、ルックス的には流麗で連続したベルトラインによって贅沢なインテリアへの期待をかき立て、さらにしなやかで力強いテールを形作るなど、アストンマーティンの新世代オープンスポーツならではのスタイリングを創出した。ボディサイズは全長4725×全幅2060×全高1295mm、ホイールベース2805mmと、クーペと同寸に設定。車重は乾燥重量で1796kgとクーペ比で111kg増に抑え、また前後重量配分はクーペの48:52に対して47:53としている。
2+2レイアウトを踏襲したインテリアは、クリーンで現代的なデザインと長い伝統を誇るクラフトマンシップ、最高級の素材を組み合わせるとともに、DBヴォランテ専用のアレンジとしてシートバックの木製ベニヤまたはカーボンファイバーパネルをドアトリムインレイと同色で仕上げ、ルーフを開けたときに見た目に楽しく贅沢な印象を加える。また、Bowers&Wilkinsと共同開発したサラウンドサウンドシステム(スピーカー15基、1170Wダブルアンプ)は、オープン化に対応して専用チューニングを実施した。内装トリムについてはクリエイト-ヘアセルレザーを標準で採用し、オプションでAccelerate-ヘアセルレザー&アルカンターラ、Inspire-セミアニリンレザー、Inspire Sport-セミアニリンレザー&アルカンターラなどを用意する。一方、機能装備の面ではクーペと同様、センターコンソールに静電容量式タッチコントロールを備えた10.25インチ・ピュアブラック高解像度スクリーンを配備。30ミリ秒という素早い応答時間による高い利便性を確保するとともに、確実な操作フィールを提供する物理スイッチとのバランスも重視する。さらに、オンライン接続機能を組み込んだナビゲーションシステムや、新しいコンパニオンとして利用可能なASTON MARTINアプリ、無線(OTA)アップデートおよび診断機能、Apple CarPlay/Android Autoワイヤレス接続なども採用した。シートに関しては、ヒーター機構を組み込んだレザー表皮のコンフォートシートを標準で装備。オプションでスポーツプラスシートやカーボンファイバー・パフォーマンスシート、ベンチレーション機構、16ウェイ電動調整機構などを用意している。
パワーユニットにはクーペと同様、進化版の4リットルV型8気筒DOHCツインターボエンジンを搭載。最高出力は680ps/6000rpm、最大トルクは800Nm/2750~6000rpmを発生する。また、トランスミッションには最終減速比を3.083:1と低く設定したZF製8速ATをトランスアクスルで組み込み、さらにエレクトロニック・リア・ディファレンシャル(E-Diff)やカーボンファイバー製プロペラシャフトを配備して後輪を駆動。性能面では最高速度が325km/h、0→100km/h加速が3.6秒と、クーペと同数値を実現した。
シャシーに関しては、リアスプリングレートの細かな変更と専用のダンパーセッティングを施した前ダブルウィッシュボーン式/後マルチリンク式サスペンションを採用。Skyhookテクノロジーおよびインテリジェントアダプティブダンパーを備えたアダプティブダンピングシステム(ADS)も組み込む。また、操舵機構には可変タイプの速度感応型アシストと2.375回転のロック・トゥ・ロックを備えた固定レシオ(13.09:1)のラックを採用するエレクトロニックパワーアシストステアリングシステム(EPAS)を装備。さらに、制動機構には前φ400mm×厚36mmディスク+6ピストンキャリパー/後φ360mm×厚36mmディスク+4ピストンキャリパーのスチールブレーキシステムを標準で、前φ410mm×厚38mm/後φ360mm×厚38mmディスクのカーボンセラミックブレーキ(CCB)システムをオプションで採用する。そして、ドライブトレインやシャシー、ステアリングなどを統合制御するドライブモードとして、ウェット/GT/スポーツ/スポーツ+/インディビジュアルという5モードを設定した。
なお、DB12ヴォランテの生産は本年第3四半期より実施。デリバリーの開始は本年第4四半期からを予定している。