プジョー408GT/価格:8SAT 499万円 試乗記
プジョーのニューモデル「408」が大きな注目を集めている。
なにしろ、今年6月に国内で発表されるやいなや、メディア関係者用広報車の予約が1カ月先まで即座に埋まったほか、発表の2週間後に都内のプジョー・ディーラーを訪れたところ、ショールームに1台だけ置かれていた408の展示車には早くも「売約済み」のカードが掲げられていた。
なぜ、408はこれほど人気なのか? 実際に試乗した人がまだ決して多くないこの段階で注目を集めている理由は、408のコンセプトそしてスタイリングが好評だからと推測される。
確かに408のスタイリングは斬新で、これまでのどんな乗用車とも似ていない。とりわけ印象的なのが、やや高めに設定された最低地上高だ。カタログには170mmと記されているので、一般的なセダンやハッチバックより40~50mmは高い。これがSUV的なたたずまいを生み出す一因になっている。
一方で全高は1500mm。「高め」ではあるけれど、SUVほどではない。そして、ボディ後端をクーペライクなファストバックとする手法で軽快感を生み出している。408のプロポーションは、このあたりが最大の特徴といえるだろう。では、いかにしてプジョーは408のこのスタイリングにたどり着いたのか?
セダンやハッチバックが売れなくなったといわれて久しい。人気凋落の最大の理由はスタイリングが古くさく見える点にある。そこでプジョーもセダンの508にクーペ的な要素を盛り込むなどの実験を行ってきた。408ではこれをさらに一歩推し進め、クーペライクなハッチバックにSUV的なスタイリングを取り入れた。これがフレッシュな印象を生んだといえるだろう。408のような「SUV的ハッチバック」はクロスオーバーと呼ばれ、すでに多くのモデルが誕生している。その中で408はライバルに比べて全高が低く、ボディがワイドで大地を力強く踏みしめているように見える点に特色がある。
運転席に座ると、視点は通常のセダンやハッチバックより多少高めだが、一般的なSUVに比べれば明確に低い。さらに、左右方向に大きく広がったダッシュボードが印象的だ。SUVとはひと味異なる安定感を生み出しており、着座した印象はSUVよりハッチバックやセダンに近いといえる。
試乗車は1.2リッター直3エンジンを積んだGTだ。走りの安定感も好印象である。どっしりと腰を下ろしているかのような落ち着きのよさはSUVとは別物。ハッチバックやセダンを彷彿とさせる。この時点で、従来のSUVやクロスオーバーとは別物の、「新種のクルマ」であると個人的に認定したくなった。
乗り心地は、ちょっと硬めに感じるかもしれない。理由は、ダンパーの縮み側の減衰力が高めに設定されているためと推測される。一方、伸び側はほどよくしなやかで、たとえばバンプを乗り越えてボディが浮き上がりぎみになっても、タイヤはしっかりと路面を捉えて離さない。プジョーらしいロードホールディング性は健在といえる。
ワインディングロードを走ったときのフィーリングも良好だった。ロールやピッチは自然に起きるタイプだが、そうしたボディの動きはゆっくりとしていて節度がある。不安に感じることは少ない。さらにいえば、ブレーキングによる荷重移動を活用すれば、低いスタンスを保ちながら安定した姿勢でコーナーをクリアすることも可能だ。
試乗車が装着していたミシュランeプライマシーのグリップ力は十分に高いので、腕の立つドライバーであればかなりのペースを保ったままワインディングロードを駆け抜けられるはずだ。高速走行時の姿勢も落ち着いていて安心感が強い。ロードノイズや風切り音が効果的に抑えられていて車内が静かに保たれる点にも好感を抱いた。
GTに搭載される1.2リッターの3気筒ターボは、いい仕事をする。巡航時であれば目立ったノイズや振動を生み出すことはなく、不満を覚える場面はなかった。ただし、1430kgのボディに対して130ps/230Nmのスペックである。余裕がふんだんにあるわけではない。交差点の発進で出遅れるとか、高速道路の本線合流に手間取る心配はないが、アクセルを深く踏み込むと、3気筒らしいバイブレーションがわずかながらも感じられることは指摘しておくべきだろう。
405GTハイブリッド/価格:8SAT 629万円。ハイブリッド・グレードは1.6リッター直4エンジン(132ps/250Nm)とモーター(81kW/320Nm)を組み合わせたPHEV仕様。満充電時のEV走行可能距離は66km。走りの余裕は十分。加速フィールはスポーティカーレベル。車重が1740kgと重いことがプラスに作用し乗り心地もしっとりとしている。408に上質な乗り味を求めるユーザーに最適のグレード。内外装は基本的に1.2リッターのGTと共通
運転支援装置は充実していて、内外装の質感は高い。プジョー独自のiコクピット(小径ステアリングの上からメーターパネルを確認するレイアウト)に慣れるには少し時間がかかるかもしれないが、表示自体は見やすいし、未来感が漂っていてスタイリッシュ。それでいながら価格は499万円と500万円を切っているのだから、かなりのバリュフォーマネーといえる。
なお、エンジンのパフォーマンスや振動が気になるユーザーには、価格は600万円以上になるものの1.6リッター直4とモーターを組み合わせたPHEVモデルを検討することをお勧めしておきたい。
グレード=GT
価格=8SAT 499万円
全長×全幅×全高=4700×1850×1500mm
ホイールベース=2790mm
トレッド=フロント:1600/リア:1605mm
車重=1430kg
エンジン=1199cc直3DOHC12Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=96kW(130ps)/5500rpm
最大トルク Nm(kgm)/rpm=230Nm(23.5kgm)/1750rpm
WLTCモード燃費=16.7km/リッター
(WLTC市街地/郊外/高速道路:13.2/16.4/19.1 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=205/55R19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.6m