【最新モデル試乗】BEVは面白い! RWDに大変身したボルボC40リチャージの完成度

ボルボC40リチャージ・アルティメット・シングルモーター/価格:739万円。C40はクーペフォルムのBEV専用モデル。RWD化に伴いモーター設計を変更。WLTCモード走行距離は従来の502kmから590kmに拡大

ボルボC40リチャージ・アルティメット・シングルモーター/価格:739万円。C40はクーペフォルムのBEV専用モデル。RWD化に伴いモーター設計を変更。WLTCモード走行距離は従来の502kmから590kmに拡大

BEVならではの決断。駆動方式をFWDからRWDに一新

 昨年までフロントエンジン/前輪駆動で販売されていたクルマが、今年からリアエンジン/後輪駆動にデザインそのままで大変身するなんて、従来は考えられなかった。これが電気自動車(BEV)だと実現することを、ボルボの新しい「C40リチャージ」は示している。

 ボルボ初のBEV専用モデル、C40が日本で発売されたのは2021年11月のこと。当初は前後にモーターを搭載した4WDモデルだけだったが、翌年3月にはフロントに1基のモーターを積んで前輪駆動としたC40リチャージ・シングルモーターを追加。しかし、2024年モデルでは、リアにモーター1基を積んだ後輪駆動仕様に改められたのだ(ツインモーター4WDモデルの販売は休止)。

ボルボimage

ボルボ リア

 なぜ、ボルボはこれほど短期間で前輪駆動から後輪駆動へと宗旨替えしたのか? ボルボ・ジャパンの関係者は「近年のボルボは前輪駆動を作り慣れていたので、手始めとしては前輪駆動のほうが作りやすかったのではないか?」と推測したが、たった2年でクルマの基本構成を一変した理由としては、いささか弱い気がする。この点は、「クルマの本質的な価値を高めるための積極的な決断」と考えたほうが、私には納得しやすい。

 後輪駆動は発進時のトラクション性能を高めるのに有利である。これは加速時にクルマが後ろ下がりになる=リア荷重になることからも明らかだ。もちろん、トラクション不足は電子制御によってもカバーできるが、それでも原理的に有利なものにはかなわないはず。

 さらにいえば、前輪に駆動力が伝わらないためにステアリングフィール改善にプラスをもたらし、前輪にドライブシャフトがないので最小回転半径を小さくするのに有利などのメリットも考えられる(C40の最小回転半径5.7mは、いまのところ前輪駆動と後輪駆動で同じ)。そうした部分の将来性も見込んで、ボルボは後輪駆動へと大きく舵を切ったものと推測される。

RWD化ですべてが洗練。まさに上質の走り

 後輪駆動のC40は、あらゆる点で動的質感が向上していた。これまでやや動きが渋く感じられたステアリングはさらーっと滑らかな操作感を手に入れて洗練の度合いを大幅に高めた。乗り心地もタイヤの当たりがソフトになったうえ、サスペンションが上下にストロークする領域でもしなやかさが増して快適性が格段に向上していた。

インパネ

シート

 実は、初期型C40に見られた「足回りがやや突っ張っているかのような乗り心地」は、同じCMAと呼ばれるプラットフォームを採用していたXC40の初期型モデルでも散見され、その後、見違えるように改善された。それと同じ道筋を、C40もたどっているように思う。238ps/418Nmのモーターが生み出すパフォーマンスは静粛にしてスムーズ。しかも力強い。まさに快適そのものだ。

 前輪駆動から後輪駆動への転換はBEVだからできたこと。インターネット経由でソフトウェアのアップデートが可能なOTAと呼ばれるシステムの普及を含め、BEV時代になると、エンジン車では考えられなかったスピードでクルマが進化することになりそうだ。

ボルボC40 主要諸元

グレード=C40リチャージ・アルティメート・シングルモーター
価格=739万円
全長×全幅×全高=4440×1875×1595mm
ホイールベース=2700mm
最低地上高=175mm
車重=2010kg
モーター型式=CCADE(交流同期発電機)
モーター最大出力=175kW(238ps)/4000〜5000rpm
モーター最大トルク=418Nm(42.6kgm)/1000rpm
一充電走行距離(WLTCモード)=590km
交流電力量消費率(WLTCモード)=143Wh/km
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池(96セル)
駆動用バッテリー容量(総電力量)=73.0kWh
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ディスク
タイヤ&ホイール=フロント:235/45R20/リア:255/40R20+アルミ
駆動方式=RWD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.7m

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