ランザドールはランボルギーニ第4のモデルとして2028年にデビューするフルバッテリー駆動(BEV)の2+2GTだ。8月のモントレーカーウィークでコンセプトカーを発表したが、首脳陣によれば市販車は、ほぼこのコンセプト、プロポーションで登場する予定だという。
ステファン・ヴィンケルマンCEOによると、「350GTや400GTといった豪華で高性能なグラントゥーリズモが、ブランド黎明期のメインモデルでした。次世代のモデルラインアップを考えたとき、すでに存在する2種類のスーパーカーと1種類の大型SUVとはまるで違うカテゴリーにしなければいけないと思ったのです。すると必然的にGTになります。しかも2ドアの2+2モデル。とはいえ皆さんが予想されていたような2ドアクーペではランボルギーニらしくない。われわれは、いつもユーザーやファンを驚かせたいのです。そこでデザイナーやエンジニアが知恵を絞った結果が、ランザドールでした」。
最低地上高を上げてSUVのようなタイヤ(実際、コンセプトカーにはウルスと同じ23インチタイヤを履かせていた)を装着するにもかかわらず、ボディは薄く平らで、いかにもランボルギーニらしいキャラクターラインを備えている。ホイールベースが長めに取られており、その分キャビンも広そうだ。デザイナーやエンジニアが口を揃えていっていたポイントは、「ウラカン・ステラートのクールなルックスに触発された」ということ。つまり、オフロードも射程に収めたオールラウンダー、ウラカン・ステラートに後席とラゲッジスペースを加えることがランザドールの第一歩だったというわけだ。
スタイリングをじっくり見てみよう。フロントマスクはウルスとの血縁をはっきりと感じさせる。ダイナミックなサイドのキャラクターラインはいかにもランボルギーニだし、とくにリアフェンダーとリア回りの造形にはカウンタック(クンタッチ)のDNAも見てとれた。
フロントスクリーンやサイドウィンドウもランボルギーニの最新モデルと共通性のあるデザインとした。つまり、いままで見たことのないカテゴリーのクルマであるにもかかわらず、どこをどう見てもランボルギーニである。
「人々をアッと驚かせる、それでいてランボルギーニだとわかってもらえることが最も大事な点でした」とチーフデザイナーのミッティア・ボルカートも語っていた。
エクステリアを細かく見ていくと、エアロダイナミクスの工夫が至るところにあった。フロントフェンダー回りやドア下部などにも空気の通り道が用意されている。さらに格納式のフィンを持つ最新版のALAシステムも備えていた。
エクステリアだけではない。ある意味、外観以上に目をひいたのがインテリアだった。幸運にもショーデビューの後に「ちょい乗り」してみたが、開放感と緊張感が絶妙にミックスされ、細部までデザインの行き届いたインテリアに感動した。このインテリアを手に入れるためにこのクルマを買いたいと思えるほどだった。
運転席からの眺めは、これまでにはない感覚だ。薄く幅広いスクリーンはどこかジェットファイター気分である。Aピラーがドライバーに向かって倒れ込んでいて、まるでカウンタックのようだ。それでいて空間の居心地よさはウルス以上。ルーフやコクピット回りのアイデアはぜひ市販モデルでも実現してほしいものだ。
これまでにないユニークなスタイル。あえて2ドアを選ぶという挑戦的で反骨心あふれるデザインのコンセプトカーは、確かに「The ランボルギーニ」だ。けれども最も重要な点は、乗ってもそう思えることだと開発部門を率いるルーベン・モールはいう。
「フル電動パワートレーンの魅力は駆動力を4輪へ自由に配分できることです。その結果、ランザドールの走りはエンジン付きでは決して実現できない、別次元のものになるでしょう。ドライバーは自分があたかもヒーローになったような気分でメガワット級の高性能GTを操ることができるのです」。
ランザドールのプロジェクトは1年前に始まったばかり。とはいえすでに電動アーキテクチャーの仕様は決定され、市販モデルの開発も数カ月前から始まっている。「VWグループで活用する次世代の電動アーキテクチャーを最初に使う1台になるでしょう。もちろん、アプリケーションはランボルギーニ専用に開発されています」(ルーベン・モール)。
最後に気になるランザドールのポジショニングだが、ヴィンケルマンCEOによると「台数的にはレヴエルトとウラカン後継モデルとの間、価格的にはウラカン後継モデルより下、ウルスより上」というのが(あくまでも)現時点でのイメージらしい。
5年後のデビュー。まだまだ先だと思われる方も多いだろう。けれども振り返れば、ウルスのときもショーカーデビューから5年後に市販モデルが登場した。これからの5年間、ランボルギーニからはウラカン後継となるPHEVスーパーカーや、ウルスのフルモデルチェンジなどさまざまなモデルが登場する。「その時」はあっという間にやってくるに違いない。