【ボクらの時代録】1998年の日本カー・オブ・ザ・イヤー。走りにこだわったトヨタ・アルテッツァ(GF-SXE10型)のFRハンドリング

アル01目指したのは「ドライビングファン」、操るのが楽しい

 アルテッツァは「日本車には魅力的なセダンがない」といわれる昨今、久しぶりに「そそられる」セダンだ。開発担当の若い人たちが「自分たちが「ほしい」クルマで、自分たちでも「買える」クルマを作ろう」といったところからスタートしていると聞いた。確かに、若い人たちが求めるバリューはかなりのレベルで満たされているように思う。

 試乗車はトップモデルのRSの6MTだ。210psの3S-GE型エンジンはよく回るし、刺激的な音も聞かせてくれる。210psというパワーそのものは取り立てていうほどのものではないが、レスポンスのよさと、とくに中速回転域のピックアップ感の良さは気持ちのいいものだ。そして、短いストロークでメリハリよく決まる6MTとのコンビネーションは「ドライビングファン」という点で文句なしのフィールをもたらしてくれる。
 0→100km/h加速は7.8秒だから物理的にも十分に速いが、6MTを操って7800rpmのレッドラインまでフルに引っ張りながら走るときの感覚的な速さは、それ以上に刺激的である。

スタイル01スタイル02 日常的な運転もしやすい。スポーツ車だからといってスピードを強制されるといった雰囲気もないし、とくに運転を意識させられるといったこともない。リラックスした運転が楽しめる。

 ただし、3000rpmあたりから上の回転域ではコモリ音が目立つ。刺激的な音ではあるのだが、「抜けた音」ではない。このコモリ音は短時間ならいいが、ハイウェイを長時間走るといった時にはかなり気になるし、疲れを招きもする。ハイウェイクルーズという点でいうと、110km/h付近で発生する高速シェイクも気になるレベルだ。

 ハンドリングはいい。とくに日常的な範囲でのステアリング操作に対しては、とてもスムーズで素直な回頭性を示す。アルテッツァはドライバーの意思に追従し、気持ちよく楽しくワインディングロードを走り抜けてくれる。確実で素早いその身のこなしは、間違いなくスポーツセダンといえるものだ。しかし、非日常的な領域に入るにつれて、タイヤがついてこられないといった現象が出てくる。とくに限界領域ではタイヤの横剛性の物足りなさが顔を出す。

 ボディはしっかりしている。乗り心地は固めで、強い平行段差の通過には少しきつい反応もするが、この種のクルマを選ぶユーザーには、許容範囲内だと思う。
(岡崎宏司/1998年12月26日号発表)

インパネスタイル1998年トヨタ・アルテッツァ/プロフィール

 アルテッツァはFRレイアウトのスポーツセダンとして1988年10月にデビュー。絶対的な速さよりも「ドライビングの楽しさ」を追求したのがポイントだった。メルセデス・ベンツCクラスやBMW3シリーズをライバルに想定しており、海外ではレクサスISのネーミングで販売された。ボディサイズはトヨタ伝統のマークIIクラスより小柄だったが、各部の作りは上質。プレミアムモデルの味わいを持っていた。

ラインアップ01ラインアップ02 日本仕様アルテッツァは2リッターの直4DOHC16V(210ps・MT)と直6DOHC24V(160ps)を搭載。イメージリーダーは4気筒のRS200。トランスミッションは5速ATに加え6速MTが設定され、切れ味鋭いスポーツドライビングが満喫できた。4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションのロードホールディング能力は高く、クロノグラフ・ウォッチをイメージしたメーター回りも新鮮だった。2001年7月にはスポーツワゴン形状のジータを新設定。新たに3リッター直6DOHC24V(220ps)をフラッグシップに据える。アルテッツァは2005年8月で生産を終了。レクサスの国内販売開始に伴い、2005年9月以降は日本でもレクサスISとして再出発した。

1998年の時代録/長野五輪で日本がメダルラッシュ

【出来事】長野五輪開催、日本は10個のメダルを獲得。冬季五輪で初の2桁メダル獲得/赤瀬川源平の著作『老人力』がヒット、「〇〇力」が流行語に/サッカーW杯(フランス大会)の本大会に初出場/横浜高校の松坂大輔が夏の甲子園・決勝戦でノーヒットノーランを達成。ミカ・ハッキネンが初のF1チャンピオンに。98年もタイトル獲得 【音楽】オリコンシングル年間1位GLAY『誘惑』/モーニング娘。が『LOVEマシーン』などヒット曲を連発 【映画】邦画配給収入1位『踊る走査線THE MOVIE』、洋画興行成績1位『タイタニック』

1998年トヨタ・アルテッツァ 主要諸元

グレード=RS200・Zエディション
新車時価格=6MT  250万円/5SAT  254円
全長×全幅×全高=4400×1720×1410mm
ホイールベース=2670mm
トレッド=フロント:1495/リア:1485mm
車重=1360(AT1360)kg
エンジン(プレミアム仕様)=1998cc直4DOHC16V・VVT-i
最高出力=210ps/7600rpm(AT200ps/7000rpm)
最大トルク=22.0kgm6400rpm(AT22.0kgm/4800rpm)
10・15モード燃費=11.6(AT11.0)km/リッター(燃料タンク容量60リッター)
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=215/45ZR17+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=5名
最小回転半径=5.1m

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