桂伸一の新型スープラ・レポート 試乗記
新型は搭載エンジンで走りの性格が異なる
歴代スープラは、スッとのびやかでエレガントなスタイリングの持ち主だった。見た瞬間に引き寄せられる吸引力があったと思う。
新型は全長が短く、幅は広い。とくにリアホイールハウスあたりはマッチョな印象さえある。一瞬で吸い寄せられるか!?というと、昔を引きずる古い感覚の者には違う気がする。しかし主要市場の北米をはじめとして人気沸騰、と聞く。時代にマッチしたスタイルらしい。
新型スープラは切れ味鋭いピュアスポーツカーである。走りはピュアスポーツというよりはGTカーの領域だった歴代モデルとは、一線を画す。新型はホイールベースとトレッドの比率が世界の名だたるスポーツカーと共通する。
ただし、搭載エンジンによって個性は異なる。試乗会で3グレードすべてに乗って確認した。
スープラのイメージリーダーは6気筒のRZ。歴代は6気筒モデルしかなかったが、新型は4気筒を加えた。再び古い感覚でいうと、4気筒モデルは「セリカ」という印象。スープラ(セリカXX)はもともとセリカの6気筒モデルとして誕生した。新型は同一ボディに6気筒と4気筒が搭載される。
今回初めて乗った197㎰仕様の4気筒SZは、最もベーシックな仕様。それでも価格は490万円する。SZは走行性能、ハンドリング、乗り味のどれをとっても素直で清い。
4気筒だから軽快、とはよくいわれる。実際に6気筒のRZと比較すると、ノーズ(前輪荷重)だけで70㎏も軽い。車重はRZの1520㎏に対してSZは1410㎏。後輪側が40㎏軽いのは、電子制御LSDのアクティブデファレンシャルを装備しないからだ。
試乗コースはタイトで路面は補修跡が点在。コンディションは決してよくない。そこを可変機能AVSを持たないバネ/ダンパー仕様のSZは凹凸をなめるように進む。タイヤがシリーズ唯一のランフラット(RFT)にもかかわらず、固さをいっさい感じさせない。タイヤを17インチ(50偏平)に抑えた設定と、長年RFTと取り組んできたBMWのノウハウが生きている。
これが4気筒か、と思わせる澄んだ音色のサウンドチューンは素晴らしい。ボク自身は4気筒SZの優れたバランス感覚がおおいに気に入った。さらに走りを極めたい、というユーザーには、電子制御デフと可変ダンパーを装備し、より高出力の258㎰/4気筒を搭載するSZ―R(590万円)がある。