小沢コージの新型スープラ・レポート 試乗記
いままでにない走りのフィーリング
ズバリ、走り味は想定外。ここまでトヨタ味ともBMW味とも違う、いままで味わったことのないスポーツカー風味だとは思わなかった。ある意味、2重人格的ですらある。
ドアを開けて閉めたときの音、フィーリングはBMWそのもの。2回のレバー操作で開くボンネットもそうで、閉めた感じも似ている。
驚くのは樹脂製リアハッチを閉じたときの異様な剛性感の高さ。金庫のような「ガチャ!」という音と反響音のなさにシビれる。ボディゆるゆるのハッチバックとはまったく違う。いかにスープラのボディ剛性が高いかが一瞬で伝わってくる。
エンジンをかけても同様。イグニッションを入れたとたん、「フォン」とスムーズに始動するエンジンフィールはやはりBMW。とくに最速モデルのRZに搭載されている3リッター直6ターボはBMW風味が濃厚だ。
ところが走りだした瞬間、アレ?と思うほどBMWっぽくない。あれほどダイレクトではない。乗り心地はしなやかで、ステアリングの反力もどこか柔らかい。どんどんBMW味が薄れていく。
アクセルを深く踏む。「ウォーン」と唸るように高まる感覚は確かにBMW。とくにライトな直4ユニットより、濃密な直6にその風味を感じる。
ところが攻めたときのハンドリングは、BMWのそれではない。そこにはBMWがトヨタと新たに煮詰めた新プラットホームの特性が色濃く出ている。
スープラは、ボディサイズのわりにホイールベースが異様に短く、トレッドが広い。タイヤ4本の位置が横に広くて縦に短いディメンションの持ち主である。量産2シーターとして異様に小回りがきく設定になっている。そのためステアリングが実によく反応する。それもニュートラルに利く。曲がりにくさがまったくない。行きたい方向に自由自在にクルマが向きを変えてくれる。
だが、それでも同じ基本骨格を持つZ4に比べ、全体にしなやか。強引にいうとスープラにはクラウンやマークXに感じた優しさがある。ブレーキも同様。BMWは踏めば踏むほどしっかり利く魔法のフィーリングがあるが、微妙にスープラのほうが優しい。ときにドイツ車はポルシェを含め、静かで流れのゆったりした東京で乗ると、操作系に過剰な重さを感じたりする。しかしスープラにそれはない。やはり日本人に向けた本気の「和のスポーツカー」なのだ、しかもBMWと共同開発の......。