<新型スープラ特集>SZ-Rの手強いライバルたち

IMG_9149.JPGトヨタ・スープラSZR 価格:8SAT 590万円(写真はop装着車) 2リッター直4ターボ(258㎰)搭載 パワーウエイトレシオ:5.62㎏/㎰

ライバル1:アウディTTSクーペ

IMG_6030.JPGアウディTTSクーペ 価格:6SMT 799万円 20194月の改良で外観がより精悍に変身 TTS286㎰の2ℓ4ターボを積むシリーズ最強モデル

FR vs 4WD。走りの個性対決

今年、アウディTTはデビュー20周年を迎えた。最新の3rdモデルは、先日マイナーチェンジを受けた。とはいっても、最上級グレードのTTSは外観変更が主でパワートレーンは従来と共通。2ℓ直4ターボ(286㎰)と6速DCTの組み合わせだ(欧州仕様はRDE規制対応スペック+7速DCTに変更された)。メーカーによると、欧州仕様のRDE対応型より、従来型スペックの日本仕様のほうが乗り味にパンチがあるという。日本仕様の最新TTSは〝乗って最も楽しいTT〟かもしれない。
 TTSとスープラは、コンセプトもデザインも、そして価格帯も異なる。とくに走りに関していえば、6速DCT+クワトロ4WDである点(そしてFFベース)がTTSの個性だ。
 3rdモデルのTTはスポーツカーとしてのキャラクターを強めた。それでもまだGTカー的なイメージが強い。FRのリアルスポーツカー、スープラに対して走りはどこまで迫ったか。結論からいうと、乗って楽しいのは断然SZ―Rだった。
 TTSは、力強さとシフトアップのキレのよさが印象的。圧倒的な加速パフォーマンスを誇る。路面に吸いついたかのようなフラットなライドフィールはミッドシップのR8にも通じる感触で、スープラにはない魅力だ。けれども、"ドライバーが自在にドライブしている"という感覚はSZ―Rのほうが圧倒的に強い。スープラは前後左右の動きが乗り手の意思に忠実で、綺麗にコーナリングしても、失敗しても、一体感がある。要するにスポーツカーらしい。TTSは、スポーツカーのように速く走るが、「クルマ側で勝手に速く走っている」という気分になってしまう。やはりGTカー的要素が勝っている。

IMG_6189.JPG室内は適度にタイトな印象 ステアリングはフラットボトム形状 6速DCTの変速はシャープ 安定性重視ハンドリング

IMG_6050.JPG全長×全幅×全高4200×1830×1370㎜ 車重1460㎏ SZーR比全長は180㎜コンパクト 車重は10㎏重い エンジンは1984㏄直4DOHC16Vターボ 286㎰/380Nm SZ―R比で最高出力はプラス28㎰/最大トルクはマイナス20Nm

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ライバル2:ホンダ・シビック・タイプR

IMG_4233.JPGホンダ・シビック・タイプR 価格:6MT 450万360円 ニュルブルクリンク北コースで7分43秒80のラップタイムをマークしたFF最速モデル

究極のFFホットハッチ。異種対決

一方はFRの2シーター2ドアクーペで2ペダルAT。一方はFFの5シーター5ドアハッチバックで3ペダルMT。ほとんど対極に位置するといっていいほど共通項が見当たらない2台だが、実は今回取り上げたスープラSZ―Rライバル対決の中で最も比較対象としてふさわしい存在だと思う。
 同じようなスペックのクルマを並べてみたところで、最後はブランド、デザイン、価格の勝負にしかならない。けれど、まるで違う2台なら細部まで比べてみたくなる。いや、こういう2台を比べたくなるというあたりがスポーツカーの面白さだ。実用重視のミニバンやSUVではこうはいかない。
 ホンダ・シビック・タイプRの魅力は、いわゆるホットハッチ(=都会のスポーツカー)を極めた点にある。実用車としても使えるライドフィールを与えたうえで、レーシングカー的ドライビングファンに磨きをかけている。
 スタイリングはアグレッシブ。大人っぽい印象はない。だが、こういう姿形であることがタイプRらしさとなって久しい。スープラのほうが断然ジェントルに見えてくる。
 2台のドライビングフィールはまるで異なる。究極の4気筒FF対FRであり、どちらにも楽しいと思う瞬間が多い。ただ、その〝思う場面〟が違うだけだ。
 たとえば、旋回の前から途中まではシビックが優位、途中から後はスープラに軍配が上がる。
 そしてトランスミッションをどう考えるか。ボク自身は、スープラの4気筒に3ペダルMT仕様があってもいいと思う。マニュアルトランスミッションが操作できるという、その一点において、シビック・タイプRはいま、楽しみどきかもしれない。
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室内はレッドのアクセントがスポーツ性を強調 ステアリングは剛性を高めたデュアルピニオン式

IMG_4254.JPG全長×全幅×全高4560×1875×1435㎜ 車重1390㎏ SZーR比全長は180㎜長い 車重は60㎏軽い エンジンは1995㏄直4DOHC16Vターボ 320㎰/400Nm 最高出力はSZ―R比プラス62㎰ 最大トルクは同値

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ライバル3:トヨタ86GR

IMG_6943.JPGトヨタ86GR 価格:6MT 496万8000円 86のスポーツポテンシャルを高めたスペシャルモデル 専用設定ザックス製ダンパー装着 ボディは各種ブレースを追加した高剛性仕様

定番FRスポーツ。同門対決

 トヨタ86がなかったらスープラ復活は見えてこなかったかもしれない。86はスープラと同様にメーカーコラボレーションで生まれたFRスポーツカーだ。専用シャシーを持つスポーツカー作りは、大メーカーであっても単独では困難な時代だからこそ生まれた。86とスープラの開発責任者は同一人物。しかし86とスープラでは、それぞれの共同開発車とのキャラクター分けがはっきりと異なる。86はBRZとできるだけ〝同じ〟であろうとした。走りのキャラクターに多少の違いはあるが、基本は軽量級スポーツカーだ。けれどもスープラとZ4はまるで違う。ここにも今回のコラボの意義があると思う。
 86・GRの全長は4290㎜。対してスープラは4380㎜。どちらも手ごろなサイズで、両車2ℓの4気筒エンジンを積んでいる。とはいえ、走りはスープラが完全に優位。スペシャルモデルの86・GRをもってしてもSZ―Rに十分対抗できるとは思えない。スープラは2+2ではなく完全2シーターであり、258㎰を発生する力強いターボエンジンと最新の足回り、強固なボディを持つ。とくに高い速度域におけるスポーツカー性能という点で、自然吸気207㎰ユニットを搭載した86の及ぶところではない。
 86の優れた点は、「使いきれる」パフォーマンスの持ち主であること。FRであるがゆえ、使いきれることは最大の魅力だ。「持て余す高性能より、自在にコントロールできる性能のほうが楽しい」と思えるユーザーは多いはず。86には確実にそれがある。ただ、SZならスープラでも使いきれそうだ。SZは足回りもコンベンショナルタイプ。SZと86・GRの比較なら、価格的にもほとんど同じで、実力は拮抗する。

IMG_7112.JPG操作性に優れた小径スポーツステアリングはGRのロゴマーク入り 各部アルカンターラ仕上げ ナビはディーラーop

IMG_6987.JPG全長×全幅×全高4290×1790×1320㎜ 車重1240㎏ SZーR比全長は90㎜コンパクト 車重は210㎏軽い エンジンは1998㏄水平対向4DOHC16V 207㎰/212Nm 最高出力/最大トルクはSZ―R比それぞれ51㎰/188Nmマイナス

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ライバル4:マツダ・ロードスターRFVS

IMG_6437.JPGマツダ・ロードスターRF・VS 価格:6MT 365万400円/6SAT 367万7400円 RFは2018年6月にエンジンをリファイン 2ℓユニットは従来比26ps/5Nm増の184㎰/205Nmを発生 レブリミットは7500rpm

傑作オープンGT。雰囲気対決

2シーターのFRで2ℓの4気筒エンジンを搭載するクーペ、という意味ではマツダ・ロードスターRFも忘れてはいけない存在。もっとも、こちらはライトウエイトオープンスポーツのGT版というべきモデルであり、FRリアルスポーツカーを目指したスープラとは、開発のベクトルがまるで違っている。もちろん、サイズもスペックも価格帯もまったく異なる。2シーターFRの4気筒クーペ、という点以外にこの2台に共通項はない。だが、ドライビングファンの質や雰囲気は比較対象になる。
 コクピットから見える景色でわくわくするのはロードスターRFのほうだ。デザイン面の話なのであくまでも主観だが、全体の造形や、シンプルなインテリアのまとめ方など、ロードスターには普遍的な存在感、言い換えれば「長持ちする見栄え」がある。年齢を重ねた大人が乗るスポーツカーという意味では、デザイン面をはじめ、サイズ的にも、そしてスペック的にもロードスターRFに軍配を上げたい。
 性能という観点で世界のスポーツカーと比較した場合、スープラはポルシェ718ケイマンあたりといい勝負をするだろう。けれど、まだまだ上には上がいる。そこで勝負しても、実は中途半端でしかない。「世界トップのスポーツカー性能は目標にしない」と割りきってしまえば、新しいスポーツカーの価値が見えてくる。そうなると、がぜんロードスターRFは魅力的だ。2ℓの自然吸気ユニットは184㎰を発生。ほどほどの性能と飽きないデザイン、そしてオープンエアの爽快感はロードスターの真骨頂。スープラでは味わえない世界だ。

IMG_6592.JPGオープン時の開放感は最高 トランスミッションは6速ATと6速MTを設定 ハンドリングは軽快で楽しい

IMG_6457.JPG全長×全幅×全高3915×1735×1245㎜ 車重1130k㎏(AT) SZーR比全長は465㎜コンパクト 車重は320㎏軽い エンジンは1997㏄直4DOHC16V 184㎰/205Nm 最高出力/最大トルクはSZ―R比それぞれ74㎰/195Nmマイナス

※スペックはすべて2019年6月現在

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