【最新モデル試乗】元気溌剌、気持ちいい、ホンダWR-Vはお買い得感たっぷり、なぜか愛着が湧く

ホンダWR-V・Z/価格:CVT 234万9600円。WR-Vの価格は全車250万円以下。Zは17インチアルミ、本革巻きステアリング&シフトノブ、プライムスムース&ファブリックシートを備えた中級グレード。1.5リッター直4DOHC16V(118ps/142Nm)は必要十分パワー

ホンダWR-V・Z/価格:CVT 234万9600円。WR-Vの価格は全車250万円以下。Zは17インチアルミ、本革巻きステアリング&シフトノブ、プライムスムース&ファブリックシートを備えた中級グレード。1.5リッター直4DOHC16V(118ps/142Nm)は必要十分パワー

価格は手頃だが、決して「我慢グルマ」ではない

 ホンダから、新型SUVが登場した。ZR-Vは、日本/タイ/インドの共同チームで開発、インドで生産して日本では輸入車として販売するフレッシュモデルだ。
 ホンダにはヴェゼルやZR-Vといった中級モデルはあるものの、日本市場用エントリークラスSUVが不在だった。WR-Vはトヨタのヤリスクロスやライズ、そしてダイハツ・ロッキーなどをライバルとするフレンドリーなキャラクターの持ち主である。

 ボディサイズは4325×1790×1650mm。ヴェゼル(4330×1790×1580mm)に近いが、見てのとおりスクエアな力強いフォルムとされている点が個性。内外装デザインのコンセプトは、「MUSCLE&CONFIDENT=自信あふれる逞しさ」である。

リア

真横

 パワートレーンにハイブリッドや4WDの設定はなく、自然吸気の1.5リッター直列4気筒i-VTEC(118ps/142Nm)を積んだFFモデルのみ。最低地上高は195mmと余裕たっぷり。それなりに悪路にも対応できるに違いない。

 ラインアップは、16インチスチールホイールを履くエントリーのX(209万8800円)と、17インチアルミやLEDフォグライトを装備する上級のZ(234万9600円)、そしてZに各部のデコレーションを加えたZ+(248万9300円)という3グレード構成。パワートレーンなどをシンプルに割り切ったことで、全車200万円台前半というリーズナブルな価格を実現した。装備は充実しており、ホンダセンシングをはじめ、フルLEDヘッドライト、ナビ装着用パッケージ、パドルシフトなどは全車に標準装備。価格は安いが、決して「我慢グルマ」ではない。

素直で気持ちのいいキャラクター。使い勝手に優れ、走りも意のまま

 2024年3月の発売に先立ち、いち早くテストコースで試乗する機会を得た。内外装デザインはシンプルながら、質感の高さが印象的。中でもボディパネルのリアフェンダーあたりの処理はボリューム感たっぷり。最新設備のあるインドの工場でないと実現できなかったとのことで、たしかに凝った形状をしている。
 インテリアは機能的で整然とまとめられている。サイドブレーキがレバー式という点を歓迎する声は、小さくなさそうだ。

 プラットフォームは、前半分がフィット、後ろ半分はアジアで販売されている小型SUVという構成。センタータンクではなく、燃料タンクは後席下に配置。ただしフィットと前半フロアを共用しているため、前席下のふくらみは残っている。後席の居住性をはじめ車内空間はクラストップと呼べるほど広い。まさに余裕たっぷりだ。後席用のエアコン送風口を標準装備するなど、配慮も十分である。

インパネ

シート

 その理由は、WR-Vは日本ではエントリークラスでも、生産国のインドではかなり高級な部類に属する戦略車だからだ。インドではショーファードリブンとしても使われる。そのため室内の広さ、とりわけ後席の快適性が重視されるのだ。
 荷室も大容量。クーペライクなヴェゼルと比べると奥行きが長く、フロアは低く、天地方向の余裕もある。その広さをアピールするTV CMも印象的だ。試乗会場でも、実際に4人分のキャンプ用品がラクラク積み込める様子を実演してくれた。後席を立てたまま、こんなに!と思うほどの量を積んでもまだ余裕があることに驚いた。

 走りの仕上がりも上々だった。ワインディングを模したコースを走ると、意のままに操れることに感心した。操舵に対して遅れなく回頭し、ステアリングを戻したときも揺り戻しなくキレイに収まる。ハイペースでも無駄な挙動は出にくく修正舵をあまり必要としない。SUVゆえ重心がそれなりに高いにもかかわらずだ。
 乗り心地も良好である。路面の荒れた個所を通過しても衝撃は小さく、たっぷりストロークを確保した懐の深い足回りがしなやかに入力を受け流す。バネ下だけが動いてバネ上のボディを揺すらないのでフラットに保たれる。

リア走り

イメージ

 WR-Vには、特別なデバイスは存在しない。ホンダお得意のアジャイルハンドリングシステムもなければ、電子制御ダンパーもない。もともとある技術を突き詰め、サスペンションのジオメトリーやチューニングを最適化したことで、高次元の走りを実現している。足回りには相当にこだわったことを開発関係者も強調していた。

 エンジンも性能的に特筆すべきものはない。とはいえ素直な特性で乗りやすく、走っていて気持ちがいい。アクセルを踏み込んだときには車内にエンジン音が適度に響く。あえてそのようにしたとのことで、すでに販売されているインドでは、「ホンダサウンド」と好評だそうだ。
 走りのよさには、リニアな加減速を実現したCVTも貢献している。ステップシフト制御によりシフトアップ時やシフトダウン時に、ドライバーの感性にあったシフトフィールを実現。CVTながら意のままにドライブしている実感が高い。

 先進運転支援装備(ホンダセンシング)については、日本で生産される最新モデルと比べるとやや物足りない面もあるが、純正opのホンダアクセス用品でかなりカバーできる。

 思えば、取り回しのいいサイズで広い室内を持ち、手ごろな価格帯のSUVは、あるようであまりなかったことに気づいた。WR-Vには、メカニズム的な先進性はない。しかしクルマ作りのプロが仕上げた基本性能のよさがある。運転して素直に楽しく、使って便利だと感じる。このようなクルマを待っていたユーザーは意外に多いのではないだろうか。魅力的な選択肢が現れたことを歓迎する。

ホンダWR-V主要諸元

エンブレム

グレード=Z+
価格=CVT  248万9300円
全長×全幅×全高=4325×1790×1650mm
ホイールベース=2650mm
トレッド=フロント:1540/リア:1540mm
最低地上高=195mm
車両重量=1230kg
エンジン=1496cc直4DOHC16V i-VTEC(レギュラー仕様)
最高出力=87kW(118ps)/6600rpm
最大トルク=142Nm(14.5kgm)/4300rpm
WLTCモード燃費=16.2km/リッター(燃料タンク容量40リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:トーションビーム
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=215/55R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.2m
※2024年3月22日・発売予定

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