ドライビングスキルの向上とともに、愛車をファインチューンし、スポーツドライビングの楽しさを追求する。それをサポートするのがTRDが開発する初代86用のアイテムである。試乗車は、リーズナブルで良質な中古モデルをチューニングのベース車に想定した提案だ。
今日、気安くエンジン本体に手を加えられないのはやむを得ない。その分シャシーや足回りに関するアイテムは充実。試乗車は、スプリングと40段の減衰力調整機構付きダンパーで構成するサスペンションキットを装着。「サスペンションストローク、スプリングの全長を最適な状態に保ちつつ車高変更を可能にする」という全長調整式サスペンションセットは、地上高が標準比15mmダウン。走行シーンに合わせたセッティングができる。
ボディ回りは、剛性向上のためシャフト部がカーボン製のフロント・ストラットタワーバー、スチール製メンバーブレースセット、ドアスタビライザーを用意。「車両バランスを考慮して」という理由から、あえてリアストラットのタワーバーが設定されない点に、メーカー直系のチューナーであることを実感した。
空力性能向上とともにドレスアップ効果も期待できるエクステリアパーツも充実。販売を望みたくなるセンスのいいデカールが特別装着された試乗車には、LEDランプ付きフロントスポイラー、合成ラバー製エアロタービュレーター、純正ガーニッシュとの交換で装着を行うフェンダーエアロフィン、サイドスカート、リアバンパースポイラーが装着されていた。
2.4リッターに排気量アップした現行GR86に比べると、2リッターの初代はやや非力。だが見方を変えればアクセルペダルをより深く踏み込んで走れる領域が広い。その走りはまさに痛快。当然シフトの回数も増え、エンジンの高回転域が頻繁に使えることも、積極的なドライビングの楽しさとポジティブに受け取れる。
探せば100万円を切る個体も見つけられる初代86。それをベースに「自分好みの1台」を作り上げていくカスタマイズは、最新モデルをストック状態で乗るのとはまた違った楽しみが発見できそうだ。
ヤリスのスポーツモデルの代表はGRヤリスだが、「普通のヤリス」をベースにさまざまなスポーツパーツで仕上げても面白い。試乗車は1.5リッターの6速MT仕様だ。
軽量化のために防音・遮音材が剥がされたキャビンには、エンジン始動と共に「轟音」が響き、まだ試作段階という大幅に軽量化されたフライホイールが、アクセル操作に対してレスポンスのいい吹き上がりを実現させる。
全日本選手権で堂々の年間2位にランクインしたジムカーナ仕様をベースに街乗り用のリファインを加えたという足回りはハードな乗り味をもたらすが、その分日常シーンでもコンペティティブなテイストが色濃く味わえる。車重が990kgと軽量なFFハッチは実に楽しい。身近で奥が深い存在である。