STIの機能パーツは、単にスピード性能の向上にフォーカスするのではなく「意のままに操れるクルマ」に仕上げるのがコンセプト。これは、以前から変わることのない伝統だ。最新のインプレッサSTIパフォーマンスパーツ装着車も、同様の考えで仕上げられている。
最上級グレードのST-Hをベースとしたテスト車に組み込まれたパフォーマンスパーツは、エアロパッケージ(15万7410円)、フレキシブルタワーバー(3万3000円)、フレキシブルロードスティフナー(3万5200円)、パフォーマンスマフラー(14万8500円)など多彩。中でも注目はフレキシブルタワーバーやフレキシブルロードスティフナーなどのボディパーツ。これらは車体剛性をアップさせるのではなく、それを均一化することで微小操舵時の伝達遅れを排除。コーナー内輪に働く荷重を外輪よりも先行して発生させることで遅れのない素直な挙動を狙ったという。
インプレッサで走り始める。新型は、背の高いSUVに乗り慣れた感覚からすると、そもそもの重心の低さもあって何の手も加えられていないベース仕様でも上質で落ち着いた挙動に感心させられる。さまざまなSTIパーツを装着したテスト車のフィーリングは、ベースモデルの特長がさらに強調された印象。実に気持ちのいい走り味を実現していた。
なるほどロールや横Gが明確に体感できる以前の、操舵初期の素直で素早い動きの洗練さは特筆レベル。STIのいわんとする「運転が上手くなるクルマ」というのはこうした感覚を指すのだろうと、思わず納得した。
エクステリアは、STIのコーポレートカラー、チェリーレッド色のエアロパーツ類が強烈なアクセントとなっていた。ジェントルな印象が強い標準車のイメージを、絶妙のスポーティさへと変身させていた。ただし、エアロパーツをプラスしても強い存在感は望まないというユーザーやボディカラーとのマッチング重視派のために、コーディネートが容易なブラック色も用意をされている。エアロパーツは、常用域のスピードで効果が実感できるよう造形を吟味した機能アイテムである。4アイテムのセットでの装着が推奨されている。
STIパフォーマンスパーツは、クロストレック用も多くのアイテムをラインアップしている。試乗車には、フレキシブルタワーバーやフレキシブルロードスティフナー、パフォーマンスマフラー、ルーフスポイラー、18インチアルミなどが装着されていた。
基本的な乗り味は、メカニズム面の共通項が多いだけに、インプレッサのSTIパフォーマンスパーツ装着車に近い仕上がりだった。つまり、もともと上質で完成度の高い走り味が、一段と洗練されていた。ドライバーズカーとして実に魅力的である。
クロストレックは、行動派に最適なクロスオーバーSUV。STIパーツを試す価値は大きい。インプレッサ以上にポピュラーな存在として受け入れられそうだ。