【最新スーパースポーツ試乗】トップスピード332km/h! マクラーレン史上、最もパワフルで軽量な750Sは、ヒトに優しいスーパースポーツでもあった

マクラーレン750S/価格:7DCT 3930万円。750SはF1シーンで鍛えたスーパーパフォーマンスとマクラーレン・オートモーティブ設立から12年の知見が結晶したMRスポーツ。緩急自在の走り味の持ち主

マクラーレン750S/価格:7DCT 3930万円。750SはF1シーンで鍛えたスーパーパフォーマンスとマクラーレン・オートモーティブ設立から12年の知見が結晶したMRスポーツ。緩急自在の走り味の持ち主

750Sは最も乗り心地のいいマクラーレン、その秘密

 スーパースポーツカーのレポートで乗り心地のことから書き始めるなんて、いかにもマト外れだし野暮ったいけれど、ポルトガルで行われたマクラーレン750Sの国際試乗会に参加し、その直後に日本の公道で試してみて、やはりこのクルマのインプレッションは乗り心地から書き起こすしかないと確信した。

 750Sは市街地でもとにかくゴツゴツした感触を伝えることなく、足回りが滑らかにストロークしてくれる。いや、前作720Sだって乗り心地は相当よかった。だが750Sはそこからさらに進化していた。

 その最大の要因が、サスペンションスプリングを720Sのバリアブルレートからシングルレートに変更するとともに、スプリングレート自体を若干下げたことにあるのではないかと私はにらんでいる。

走り

ドア開け

 サスペンションのストローク量に応じてスプリングレートが変化するバリアブルレートは、一見したところ、乗り心地とハンドリングのバランスをとるうえで好都合のように思える。ところが、スプリングレートの低い領域は、車両の自重でサスペンションが沈み込むため基本的には伸び側でしか活用できない。縮み側は最初から高いスプリングレートになりかねない点がバリアブルレートの宿命だ。

 しかし、ここでサスペンションスプリングをシングルレートに置き換えるとともに、自重を支えられるギリギリの柔らかさにスプリングレートを設定すれば、路面の凹凸を乗り越える際にもバリアブルレートより柔らかい領域でショックを吸収できる可能性が生まれる。750Sの基本的な乗り心地のよさは、こうして生み出されたものだと推測している。

 一方で、750Sは720Sに比べて路面の凹凸によってノーズがヒョコヒョコと動く傾向が強まった。これもシングルレートの採用と何らかの関係があるはずだが、720Sのウルトラフラットな乗り心地よりも、穏やかな上下動が起きる750Sの乗り心地のほうが自然と感じるドライバーは少なくないだろう。しかも、ヒョコヒョコとした動きは極めて小さい。基本的に乗り心地が快適なことには変わりない。
 もっとも、750Sでさらに驚くべきは、乗り心地が劇的に進化しているにもかかわらず、サーキットでのパフォーマンスが、むしろ向上していたことにあった。

インパネ

シート

圧倒的なポテンシャル。750psエンジンは高回転域で一段と野獣に変身する

 サーキット試乗の舞台はエストリル。中低速コーナーがバランスよく揃ったコースである。本来であればタイヤの限界まで追い込むのはさほど難しくない。だが750Sの場合は、なかなかそこまで到達できなかった。イタリアのヴァレルンガ・サーキットで国際試乗会が行われた720Sのときは、いとも簡単に限界に到達したことを考えると、まさに隔世の感がある。

 結果的に、サーキット試乗の最後の時間帯にようやくタイヤの限界まで到達し、スタビリティ・コントロールが介入する感触をつかんだ。とはいえ時すでに遅しで、スライド時のハンドリング特性やコントロール性を明確に把握するまでには至らなかった。私は2023年の下半期に入ってから、すでに1000psオーバーのスーパースポーツ2台をサーキットで走らせた経験がある。だがタイヤの限界までなかなか到達できなかったのは750Sが初めて。それだけ750Sの限界性能は際だって高いといえる。

ドリフト

リア

 最も驚かされたのがブレーキングスタビリティの高さだ。280km/hからフルブレーキングを試みても、ステアリングを修正する必要はほぼ認められなかった。これは750Sの優れた空力特性によるところが大きいと思われる。

 サーキット走行ではパワートレーンの進化もしっかりと体験できた。750psを発揮する4リッター・V8ツインターボは絶品である。とりわけ5000rpmオーバーの領域で、野獣が急に牙をむきだしたかのような痛烈な加速を示すあたりは、720Sでは到底経験できなかったもの。これには、ファイナルギアを15%落としたことも利いているはずだ。

タイヤ

スポイラー

 そんな750Sで走る公道のワインディングロードが楽しくないわけがない。路面からのインフォメーションは実に豊富。正確でクイックなステアリングを操ってコーナーを駆け抜けていると、全身が無上の喜びに包まれていく。しかも、イタリア系スーパースポーツと異なり、渋滞に巻き込まれたらペースを落として走ることだって苦にならない。つまり、急いで走るも、のんびり走るも、すべてはドライバーの望むまま。クルマがドライバーをせき立てるようなことは皆無。こういった特性はイギリス車に多く見られるもの。750SにもそのDNAはしっかりと引き継がれていたのである。

 操作系が見直され、建て付けが大幅に改善されたインテリアも750Sの魅力の一部。マクラーレン・オートモーティブが設立されてから12年間の歩みが、この1台にしっかりと凝縮されているような仕上がりだった。

マクラーレン750S主要諸元

カット

モデル=750S
価格=7DCT 3930万円
全長×全幅×全高=4569×1930×1196mm
ホイールベース=2670mm
乾燥車重=1277kg
エンジン=4リッター・V8DOHC32Vツインターボ
最高出力=750ps/7500rpm
最大トルク=800Nm/5500rpm
サスペンション=前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:245/30R19/リア:305/30R19
駆動方式=MR
乗車定員=2名
0→100km/h加速=2.8秒
0→200km/h加速=7.2秒
最高速度=332km/h
※価格を除き、スペックは欧州仕様

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