【クルマの通知表】販売絶好調、日本のベストセラー、ホンダN-BOXの強みと弱点をズバリ検証!

ホンダN-BOXカスタム・ターボ(FF)/7CVT 204万9300円。新型のスタイリングは従来のイメージを踏襲。カスタムはPROUD=自分を高めるモノが開発テーマ。パワーユニットはターボ(64ps/104Nm)のターボと自然吸気(58ps/65Nm)の2種。パワフルなターボはカスタムに設定する

ホンダN-BOXカスタム・ターボ(FF)/7CVT 204万9300円。新型のスタイリングは従来のイメージを踏襲。カスタムはPROUD=自分を高めるモノが開発テーマ。パワーユニットはターボ(64ps/104Nm)のターボと自然吸気(58ps/65Nm)の2種。パワフルなターボはカスタムに設定する

じっくり乗ってわかった実力。テスト車はターボ

 日本のベストセラー、ホンダN-BOXにじっくりと乗った。テスト車はカスタムのターボである。
 N-BOXのエンジンはターボ(64ps/104Nm)と自然吸気(58ps/65Nm)の2種。従来は標準仕様でもターボが選べたが、新型ではカスタムに絞られた。従来(2代目)モデルはターボの販売比率が意外に少なく、とくに標準仕様ではほとんど選ばれていなかったことが理由だ。新型の初期受注はカスタム比率が約7割で、ターボ比率は約4割に達しているという。

 3代目はターボエンジンもCVTも従来の改良版。テストコースで新旧を乗り比べた際に、パワー特性がリニアになり、乗りやすいことに感心した。その印象はリアルワールドでドライブしても同様だった。実にいい。
 N-BOXを含めホンダ車の場合、自然吸気もよくできている。高速道路を使う頻度が少なく、市街地を走るのが主体であれば自然吸気でも十分なパフォーマンスが得られる。しかしターボは別格。自分で買うならやはりターボだと、あらためて思った。

リア

グリル

 ターボは、どんなシチュエーションでも圧倒的に余裕があるのが魅力。高速道路や都市高速はもちろん、市街地でも軽くアクセルを踏み増すだけでスムーズに速度を上げる。イメージした車速まで短時間で到達できるので、運転がラクで快適だ。多少の上り勾配は、アクセル開度を大きくしなくても力強く加速していける。車速域が高い状況では、よりターボの恩恵は大きく、高速道路で再加速するときにもターボのありがたみを実感する。

 3代目のターボはパワフルなだけではない。クセのないエンジン特性になり、従来型比でずっと乗りやすくなっている。リッターカーを上回るほど上質なエンジン特性だ。
「ターボ車は燃費が悪い、車両価格が高い」という固定観念は根強い。最初から選択肢から外している人も少なくないようだ。だが車重が約1㌧の軽ハイトワゴンには、実はターボのほうが自然吸気より相性はずっとよいと感じている。公道で同じ条件で走った場合にターボのほうが燃費がよいケースが往々にしてあることは、メーカー開発者も述べている。今回の燃費テストでは、WLTCモードのカタログ値(20.3km/リッター)を上回る23.3km/リッターをマークした。装備内容は微妙に異なるが、N-BOXカスタムの場合、ターボと自然吸気の価格差は20万200円だ。

 ターボは静粛性についてもアドバンテージがあった。カスタムはもともとよく対策され静かだが、エンジンをあまり回さずに済むターボのほうがより静かで快適に走れる。
 新型は乗り心地やハンドリングのカドが取れてマイルドになった。ドライバーにとっては修正舵を要する状況が減って一段と運転しやすくなり、後席の同乗者にとっては快適性が向上している。従来より大人っぽい印象に変わった。

誰もが運転しやすく室内は広く快適。軽自動車もここまで来たかと実感

 スタイリングはキープコンセプト。誰の目にもひとめでN-BOXとわかる造形は、3代目にもそのまま受け継がれた。新鮮味は薄いものの、ユーザーの期待によい形で応えているように思う。カスタムはワイド&ローのイメージもあり、従来よりも精悍さが増している。

 室内は実に広い。外寸が小さいからこそ、乗り込むと広さが強調される印象だ。フロントドアは大きく開き、サイドシルとの段差も小さいので乗り降りしやすい。運転席と助手席の間には障害物がなく、ウオークスルーは容易だ。

 運転席に座ると、極限まで死角をなくしたピラー形状の効果で、視界のよさに感心する。助手席側の「ピタ駐ミラー」がより状況を掴みやすく進化したのもありがたい。ルームミラーが着座位置から少し遠いため小柄な人だと座ったまま調整しにくいかもしれないが、視認性は良好だ。

ドア開け

インパネ

 室内カラーはブラック基調。ライバル車のカスタム系には内張りが明るい配色もあるが、N-BOXは精悍な印象。全体の質感は高く、シート表皮は軽自動車の水準を超えている。ドア内張りには複数の収納スペースに加えて、少しでも快適性を高めようとヒジをのせるためのスペースが設けられている。これも、「人」を重視するホンダらしい。

 直線基調のインパネは、何がどこに配置されているのかわかりやすい。液晶メーターは新型の注目点のひとつ。さまざまな情報が見やすく表示されるほか、背景の変わるカレンダーなど遊び心もある。助手席側にはアンビエントライトも設定された。
 エアコン送風口は運転席と助手席の前にセットされ、後席乗員向けにはフロントシート下に送風口がある。ただし他社のサーキュレーターのような装備はない。

 シートアレンジは多彩。リアシートは前後に大きくスライドし、チップアップとダイブダウンが可能。センタータンクレイアウトの利点で、荷室~後席にかけてのフロアが低く、大きな荷物でも積み下ろしがしやすい。全体としては、軽自動車もここまで来たかという思いがさらに強まった。

前席

後席

通知表/ホンダN-BOXカスタム・ターボ 価格/7CVT 204万9300円

チャート

総合評価/71点

Final Comment

カーと思えない完成度と作り
便利でスタイリッシュで広い、愛すべき存在

 内燃エンジンを搭載した軽自動車を通知表で採り上げるのは初めて。すべてのカテゴリーのクルマを横並びで評価しているので、どうしても不利になった項目はある。走りの評価は、軽自動車としては上々だが、点数としてはあまり高くなっていない。一方、取り回しに関する部分では小柄なサイズとスクエアな車体形状、そして良好な視界の強みで高い評価となった。実際、車両感覚についてはこれまで扱ったどの車種よりもダントツで把握しやすかった。

使い勝手

快適性

動力性能

魅力

コース

ホンダN-BOX主要諸元と主要装備

エンブレム

グレード=カスタム・ターボ(FF)
価格=7CVT 204万9300円
全長×全幅×全高=3395×1475×1790mm
ホイールベース=2520mm
トレッド=フロント:1295/リア:1295mm
車重=940kg
エンジン(レギュラー仕様)=658cc直3DOHC12Vターボ
最高出力=47kW(64ps)/6000rpm
最大トルク=104Nm(10.6kgm)/2600rpm
WLTCモード燃費=20.3km/リッター(燃料タンク容量27リッター)
(市街地/郊外/高速道路:17.1/22.2/20.9 m/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:車軸式
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ドラム
タイヤ&ホイール=165/55R15+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名
最小回転半径=4.7m
主要装備:ホンダセンシング(衝突軽減ブレーキ+前後・誤発進抑制機能+歩行者事故低減ステアリング+路外逸脱抑制機能+渋滞追従機能付きACC+車線維持支援システム+先行車発進お知らせ機能+標識認識機能+オートハイビーム+近距離衝突軽減ブレーキ+パーキングセンサーシステム)/ダイレクトプロジェクション式フルLEDヘッドライト/ナビ装着用スペシャルパッケージ/プライムスムース&トリコットシート/チップアップ&ダイブダウン機構付き後席スライドシート/前席シートヒーター/左右独立式リアセンターアームレスト/後席左右パワースライドドア/フルオートAC/7インチTFT液晶メーター/予約ロック付き降車時オートドアロック機構/本革巻きステアリング/インテリアイルミネーション/クロームメッキ加飾/電動パーキングブレーキ/コンビニフック付きシートバックテーブル
主要装着op:N-BOX専用9inホンダコネクトナビ23万5400円
ボディカラー:プレミアムサンライトホワイトパール(op5万5000円)

フォトギャラリー

SNSでフォローする