【竹岡圭 K&コンパクトカー ヒットの真相】スズキ・ワゴンRスマイル「ほどよい広さと便利なスライドドア」

「高いデザイン性とスライドドアの使い勝手を融合させた新しい軽ワゴン」をコンセプトに掲げ、ワゴンRスマイルは2021年8月に登場した。2023年7月には装備の充実を図った一部仕様変更を行ったほか、内外装に専用色を採用した特別仕様車を発売し、ユーザーのニーズをしっかりとつかんでいる。

スズキ・ワゴンRスマイル「ほどよい広さと便利なスライドドア」

“立体駐車場に入る”というのが、購入選択条件の大きな要素のひとつを占めていた時代もありましたが、近年はSUVやミニバン等々、背が高いクルマばかり。物理的に難しい人は相変わらずだと思いますが、気持ちのうえで立体駐車場の条件を付けていた人の制約が取り払われたのかもしれませんね。昨今の軽自動車のメインストリームはスーパーハイト系ワゴンになりました。

 軽自動車の平均乗車人数は1.4人。ライフスタイルによりますが、実はセダンタイプの軽自動車でも事足りるという使い方をしているならば、さすがにスーパーハイトワゴンまでの広さは不要、というのはむしろ賢明な判断。広すぎてしっくりこない、という意見が出てくるのもよくわかります。

 かくいう私も、電車に乗ればついついドアの近くなど、どこか隅っこに立ったりしがちですし、体育館のような広いホールに入ったら、ついつい角のほうを陣取ってしまいがち。  要は、広すぎるとなんとなく落ち着かないわけです。

 さらに、走行中の抵抗は空気抵抗がいちばん大きい。背(全高)が高いとどうしたって燃費も運動性能も劣りますから、効率だけ考えたら少しでも背が低いほうがいいわけです。

 そんなことわかっちゃいるけれど「やっぱりスライドドアは捨てがたい!」これが、スーパーハイトワゴンが選ばれているダントツの理由だと思います。そこで登場したのが、ハイトワゴンのスライドドア車、ワゴンRスマイルなんです。

 全高はお馴染みのワゴンRと同じ。室内は、前席のシートポジションを上げることで、運転のしやすさと開放感と快適性を満たす高さを実現。後席はスーパーハイトワゴンのスペーシアと同等の600㎜の開口幅と345㎜のステップ高で、乗降性のよさと使いやすさを提供。

 前後席をつなげてフルフラットに寝かせたり、逆にフラットにたたんだり、助手席の前倒しもできたりと、シートアレンジのフレキシブル性がメチャクチャ高い。

 つまり、ほどよく広い室内と利便性の高いシートアレンジとスライドドアを組み合わせて、イイトコ取りのボディタイプとパッケージングを具現化したんですよね。

 パワートレーンは、マイルドハイブリッドも用意されているとはいえターボモデルの設定はないのですが、毎日高速道路を使って遠出するというような使い方をしない限りは、動力性能は必要十分。ハンドリングもスズキらしく、操舵に対してしっかりと動くタイプなので、操ってる感も味わえると思います。

 そういった、すべてを網羅するような懐深いフレキシブルな対応力、スマイルという名前のとおり、毎日顔を見ると笑顔になりそうなデザインも相まって、道具感というよりも自分の愛車感が持ちやすい。

 ここがワゴンRスマイルのヒットの真相といえそうです。

ワゴンR スマイル「ヒットの真相」

1)シンプルで愛着のわくデザインを採用したほどよい背の高さのハイトワゴン。スライドドアを採用しており使い勝手に優れる

2)スペーシアと同等の600㎜の開口幅と345㎜のリアステップ地上高のスライドドアを採用して、優れた乗降性を実現してい

3)マイルドハイブリッドを採用したNAエンジンは燃費に優れ動力性能は必要十分。ハンドリングは操ってる感が味わえ運転しやすい


たけおかけい/各種メディアやリアルイベントで、多方面からクルマとカーライフにアプローチ。その一方で官公庁や道路会社等の委員なども務める。レースやラリーにもドライバーとして長年参戦。日本自動車ジャーナリスト協会・副会長。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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