内燃エンジンと電気モーターを搭載するPHEVは宿命的に車重が重くなる。重ければ熱効率が下がり、燃費なり電費なりが低下する。これは、本来PHEVが目指す「環境負担の低減」に逆行するものだ。しかも、内燃エンジンと電気モーターという複数のパワーユニットを積んでいるため価格も高い。同じ理由からスペース効率が低下するのもPHEVのデメリットである。
こうした弱点から浮かび上がるのは、PHEVは外部電源で充電した電力で走行する距離(1充電当たりEV走行距離)がいかに重要か、という点である。それというのも、外部供給の電気エネルギーで走行している限り、PHEV自身がCO2を排出することはないからだ。さらにいえば、外部供給される電力がグリーンなものであれば、地球温暖化を進行させる可能性は低い。つまり、日常的な走行がPHEVのEV航続距離未満で、できるだけグリーンな電力で充電する限りにおいて、PHEVは環境保全に役立つのである。
PHEVは「電欠知らず」のBEVとも表現される。これは事実だが、こと環境負荷という点では大きな弱点を抱えている。エンジンが始動しハイブリッド状態で走行するシーンでのPHEVの燃費は、一般的なハイブリッドに劣るからだ。つまりCO2排出という点で、決して環境に優しいとはいえないのである。だからこそ外部電源で充電した状態で、どれほどの距離を走れるのかが重要なのだ。プリウスをはじめ、クラウンスポーツやハリアーなどのトヨタのPHEVのEV走行距離は90km前後、マツダMX-30ロータリーEVは107kmのEV走行距離を誇る。これだけ走れば、通常ユースはほぼBEVとして使える。だが、50km台の三菱エクリプスクロスや、BMW3シリーズは心許ない。エンジンが稼働するケースが増えそうだ。
いっぽう、今後登場が期待される燃料電池を用いるPHEVは、原動機が電気モーターだけなので重量的なデメリットが小さいほか、燃料電池の効率が低下する負荷領域を高圧バッテリーでカバーできる、水素タンクは充電より素早く充填が可能といったメリットが存在する。ただし、燃料電池自体が高価なことや水素タンクが室内スペースを侵食する可能性が高いことはデメリットとして挙げるべきだろう。
PHEVは、先進ユーザーにとって、実に魅力的な選択肢だ。だが、自分が何を重視するかを明確にすることも重要である。だからクルマ選びは面白い。