【最新スーパースポーツ試乗】世界限定2500台、オフロードも走れるポルシェ911ダカールのオールラウンド性能

ポルシェ911ダカール/価格:8DCT 3099万円。911ダカールはカレラ4GTSをベースに車高を50mm高めるなど各部をオフロード仕様にモデファイした往年のマシンのオマージュ。3リッター水平対向6ツインターボは480ps/353Nm発生

ポルシェ911ダカール/価格:8DCT 3099万円。911ダカールはカレラ4GTSをベースに車高を50mm高めるなど各部をオフロード仕様にモデファイした往年のマシンのオマージュ。3リッター水平対向6ツインターボは480ps/353Nm発生

伝説の911がロードカーとして復活

 ポルシェ911の4WD史は1980年代に始まる。4×4のコンセプトカーを発表するにとどまらず、1984年にはパリ〜ダカール・ラリーに「911カレラ3.2 4×4」で参戦しポディウムの中央をさらった。ポルシェ初のパリダカ総合優勝だ。車高を上げたロスマンズ・カラー911の勇姿はポルシェ・ファンのみならず多くのクルマ好きを魅了した。その中身はその後、1986年に誕生する伝説のマシン「959」の先行開発システムだったという。さらに1988年からは964型においてカレラ4を設定するなど911の4WD史は、システムの変化と進化を伴いつつ、現代へと続いている。

走り

 伝説の勝利からちょうど40年経ったいま、日本のクルマ好きたちは信じられない光景を目撃しつつある。砂漠を疾走した「背の高い911」とそっくりな992型が街中をクルーズしているのだから。それが世界限定2500台の911ダカールだ。

 撮影車両もまた栄光の姿を彷彿とさせる有名なタバコブランドのロスマンズ・カラーをまとっていた。ブルーとホワイトの2トーンボディカラーにレッドとゴールドのストライプを加えている。特徴的なロゴはタバコ名(Rothmans)ではなく「ラフロード(Roughroads)」。ゼッケンの「953」は冒頭のパリダカ優勝車、カレラ3.2 4×4の開発コードだ。洒落が効いている。

 911ダカールのリアに搭載されたフラット6は480psを発揮する3リッターツインターボ、これに8速PDKを組み合わせている。パワートレーンのスペックは911カレラGTS系と変わらない。車高はスタンダードのスポーツサス仕様に比べて5cmの上昇(前後のリフトアップシステムによってさらに3cm上げることも可能)に過ぎないのだが、それでもこの特別な911は異様な迫力でもって見る者に迫ってくる。

 広げられた前後のホイールアーチに、まるでデューンバギー用のような深いトレッドを刻んだ大きなピレリタイヤ(前245/45ZR19/後295/40ZR20)の収まる様子がそう思わせる最大の要因だろう。このタイヤは専用開発のピレリ・スコーピオン・オールテレインプラスで、特殊なカーカス構造を採用することによりオフロードだけでなくオンロードでの性能も担保するという。ホイールの白もこのカラーリングによく似合う。

イメージ

 0→100km/h加速は3.4秒とカレラ4GTSのわずかにコンマ1秒落ち。それもそのはず、重量は10kg増の1605kgに抑えている。リアシートを取り払い、ガラスやフードなどを軽量品に換装した効果だ。

 911ダカールは、タイヤの関係で最高速度こそ240km/hに制限されているが、車高を上げた「ハイレベルモード」でも170km/hまで出せるという。標準仕様の911では到底走れない、いや走ろうなどとはそもそも思わない悪路でも圧倒的なパフォーマンスを見せつけるはず。オフロードにおける多くの場面で911ダカールの性能はSUVのカイエンを上回るらしい。

栄光のカラーリングに興奮。その走りは刺激と、フレンドリーさに満ちていた

 911のドライブはいつもクルマ好きの憧れである。それは仕事とはいえ何度も乗ってきた筆者でも未だに変わることがない。乗るたびに気分が昂まる。その911が見たこともないような特別な仕様で、昔憧れた有名なカラーリングを施してあるとなれば、ワクワクするなというほうが無理な注文だろう。

 運転席に座ってドアミラーを見るなり唸った。リアフェンダーの膨らみは憧れのカラーリングで、その向こうにこれまた小さい頃に憧れたポルシェターボのようなウィングが見えていたからだ。

リア

室内

 もっともドライブそのものはスタンダードの911となんら変わるところがない。だから余計な緊張をせずに歴史的なカラーリングの特別な911を運転できる。その走りも期待どおりの「911」だった。

 最大の魅力は車高を上げたことによる街中での運転のしやすさだった。視点が高くなって見晴らしがいいというだけではない。911のようなスポーツカーを運転しながらも最低地上高の心配がまるでないということの素晴らしさ! SUVと同じように路面の凸凹や段差を気にせず自在に走れる。見知らぬ道や初めてのコンビニも何ら気兼ねなく入っていけた。駐車場の輪止めを気にする必要もない!

 911ダカールはひょっとすると究極のデイリー911かもしれない。そう確信しつつ、ワインディングロード(残念ながら舗装路面だったが)に鼻を向ければ、それはそれで楽しい911だった。見た目からは想像もできない剛性のあるタイヤのおかげで、オフロードカーの範疇を超えたハンドリング性能を見せつける。さすがにGT3系とは対極のドライブフィールだが、標準仕様のそれとほとんど変わらない。480psを生み出すフラット6は相変わらずパワフルで、その速さには見た目とのギャップと相まって飽きることがなかった。
 ロードカーとして蘇った伝説の911。手に入れた人が羨ましい。無理にオフロードなんて走らなくていい。繰り返すけれどもこれは理想のデイリー911なのだから。

ポルシェ911ダカール主要諸元

エンブレム

モデル=911ダカール
欧州価格=8DCT 3099万円
全長×全幅×全高=4530×1864×1338mm
ホイールベース=2450mm
最低地上高=161mm
車両車重=1605kg
エンジン=2981cc水平対向6DOHC24Vツインターボ
最高出力=353kW(480cv)/6500rpm
最大トルク=570Nm/2300〜5000rpm
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント:245/45ZR19/リア:295/40ZR20(全地形対応)
駆動方式=4WD
乗車定員=2名
0→100km/h加速=秒3.4秒
最高速度=240km/h

フォトギャラリー

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