【20世紀名車】精密な4気筒DOHCで高性能イメージを確立。’65ホンダS600の華麗なる世界

1965年式ホンダS600。S600はホンダ初の4輪小型車「初代Sシリーズ」の中心モデル。S500の排気量アップ版として1964年3月登場。S800にバトンタッチする1966年1月まで約2年間/1万3000台ほど生産

1965年式ホンダS600。S600はホンダ初の4輪小型車「初代Sシリーズ」の中心モデル。S500の排気量アップ版として1964年3月登場。S800にバトンタッチする1966年1月まで約2年間/1万3000台ほど生産

海外レースで見事に日本車初勝利

 ホンダS600は同社初の4輪小型車、Sシリーズの中心車種である。
 1963年10月に発売されたS500の発展型として1964年3月にデビューした。S600はS500のエンジン排気量を531ccから606ccに拡大したモデルだ。当時、国産唯一だった直列4気筒DOHCはモーターサイクルで培った技術を投入した高回転・高出力設計。スペックは57ps/8500rpm、5.2kgm/5500rpm。S500と比較して13ps/0.6kgmパワフルで、驚異的なリッター当たり出力94psを誇った。パフォーマンスは目覚ましく、トップスピードは145km/hをマーク。排気量拡大に伴い、全域でトルクが豊かになった結果、加速性能はS500より数段鋭くなっていた。

リア

 S600はサーキットでスポーツポテンシャルを発揮する。1964年5月に鈴鹿サーキットで開催された第2回日本グランプリのGT-Ⅰクラス(1000cc以下)で優勝。同年9月、ドイツのニュルブルクリンク500km耐久レースでもクラス優勝を飾る。欧州のレースにおける日本車の初勝利だった。ホンダの高性能イメージは、国内外のレースで好成績を収めたS600によって確立されたといっていい。

 S600は1965年2月にファストバック形状のルーフを持つクーペをラインアップに追加する。クローズドルーフのクーペは耐候性に優れ、大型のリアゲートが装備され、ラゲッジスペースが有効に使えた。天候に左右されず長距離ドライブを快適にこなせるマルチユースフルな小型GTの先駆けだった。
 S600は1966年1月、S800にバトンタッチ。1970年まで続いたホンダSシリーズの総生産台数は2万5853台。そのうちS600は、ほぼ50%の約1万3000台だった。

室内

エンジン

 取材車は、数年前にフルレストアされたオープンモデル。内外装ともオリジナル状態を維持している。ステアリングはウッドタイプの純正3本スポーク、ドライビングポジションはあくまで低い。S600のエンジンの性格を象徴しているのがタコメーターである。1万1000rpmまで刻まれレッドゾーンは9500rpm以上の設定だ。

 加速は想像以上に鋭い。右足を深く踏み込めば、交通の流れを容易にリードできた。1速がノンシンクロの4速MTはショートストローク設定。手首の動きだけでシフト操作が可能。足回りやブレーキもしっかりとしていた。

1965年ホンダS600主要諸元

エンブレム

モデル=1965年式/ホンダS600
全長×全幅×全高=3300×1430×1200mm
ホイールベース=2000mm
車重=720kg
エンジン=606cc直4DOHC
エンジン最高出力=57ps/8500rpm
エンジン最大トルク=5.2kgm/5500rpm
トランスミッション=4速MT
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:トレーリングアーム
タイヤ&ホイール=5.20-13+スチール
駆動方式=FR
乗車定員=2名

真正面

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