【20世紀名車】軽さの素晴らしさを具現化。’65トヨタスポーツ800の華麗なる世界

1965年式トヨタスポーツ800。スポーツ800は当時のベーシックカー「パブリカ」のメカニズムを流用して製作。超軽量設計と空力デザインで優れた性能を実現。「ヨタハチ」の愛称で親しまれた

1965年式トヨタスポーツ800。スポーツ800は当時のベーシックカー「パブリカ」のメカニズムを流用して製作。超軽量設計と空力デザインで優れた性能を実現。「ヨタハチ」の愛称で親しまれた

時代を先取りした高効率2シータークーペ

 トヨタスポーツ800は「スポーツカーをみんなのものに」をコンセプトに開発されたトヨタ初の2シータースポーツである。1962年の全日本自動車ショウにプロトタイプを出品。その後、改良が続けられ、1965年2月にデビューした。当時のライバルはホンダS600、そしてS800である。

 スポーツ800の特徴は、軽量設計と空気抵抗の少ないスタイリングである。軽量化と優れた空力特性は、ベーシックカーのパブリカのメカニズムを流用して、スポーツカーらしいパフォーマンスを追求するための工夫。開発を担当した長谷川龍雄氏(パブリカ、カローラの主査も務めた)は、かつて航空機エンジニアだった。

リア

 スポーツ800は、限られたパワーを見事にスピードに変換していた。搭載する空冷水平対向2気筒OHVの最高出力は45ps。水冷直列4気筒DOHCエンジンのS600(57ps)、S800(70ps)に比べ、明らかに非力だった。だがスポーツ800の最高速度は155km/h。ホンダS600(145km/h)を凌ぎ、S800(160km/h)に迫った。

 高性能の秘密は軽量性にあった。スポーツ800の車重はホンダS600より140kg、S800M比で175kgも軽い580kg。スポーツ800は先進的なモノコック構造ボディやアルミ材の積極使用など、総合的な軽量化を実施。これに加えて、空気抵抗が少ない流線形でまとめたデザインが、スピードの伸びに有利に作用した。

 クーペ形状ながら、オープンエアというエンターテインメントを追求した点もユニークだった。ルーフは脱着式、タルガトップである。外したルーフはトランクに収納できた。スポーツ800の総生産台数は3131台、生産終了は1969年だった。

室内

エンジン

 取材車はフルレストアされた1965年式。内外装のコンディションは素晴らしい。曲面で構成されたボディは、美しいラインを描き、シンプルな室内は機能的。本来ダッシュボード上にあるルームミラーはウィンドウ上部に移設され、運転がしやすくなっていた。

 走りは軽快そのもの、現在の水準でも楽しい。エンジンはトルクフルでレスポンス良好。3000rpm以上をキープすると意外に速い。1速がノンシンクロの4速MTのシフトフィールも心地いい。印象的なのはハンドリング。ステアリングをわずかに切るだけで、コーナーを鮮やかに駆け抜ける。重心は低く、安定感がある。ステアリングを含め操作系は軽く、4輪ドラム式のブレーキも利きは確かだった。

1965年トヨタスポーツ800主要諸元

エンブレム

モデル=1965年式/トヨタスポーツ800
全長×全幅×全高=3580×1465×1175mm
ホイールベース=2000mm
車重=580kg
エンジン=790cc空冷水平対向2OHV
エンジン最高出力=45ps/5400rpm
エンジン最大トルク=6.8kgm/3800rpm
トランスミッション=4速MT
サスペンション=フロント:ウィッシュボーン/リア:リーフリジッド
タイヤ&ホイール=6.00-12-4PR+スチール
駆動方式=FR
乗車定員=2名

真正面

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