【20世紀名車】エレガントな味わいが愛された高級2シーター、’89メルセデス・ベンツ560SLの華麗な世界

1989年式メルセデス・ベンツ560SL。1971〜89年の19年間にわたって生産されたR107型の最終モデル。560SLは排出ガス対策で失ったパワーを補うために大排気量化した北米/日本/豪州専売モデル

1989年式メルセデス・ベンツ560SL。1971〜89年の19年間にわたって生産されたR107型の最終モデル。560SLは排出ガス対策で失ったパワーを補うために大排気量化した北米/日本/豪州専売モデル

たおやかな走りと入念な作りが特別な時間を約束

 2024年、メルセデス・ベンツSL(現在はAMG・SL)は、初代のガルウイング300SL(1954年)から数えて、誕生70周年を迎える。その歴史の中で1971年から1989年まで。19年間作られたロングセラーが3代目のR107型だった。

 R107型は、2代目(1963〜1971年)では縦型だったヘッドランプが横長になり、低いノーズデザインに変更された点が目を引いた。個性は高い安全性。ボディにいち早く衝撃吸収構造を導入し、スイッチ類の形状を工夫するなど、徹底した安全設計に基づいて開発された。ABSやエアバッグの設定も時代に先駆けた。

リア

 ボディ形状は、着脱可能なハードトップを装備した2シーターのフルオープン。この点は2代目モデルと共通。ちなみに2代目から「SL」の意味は、初代の「シュポルトライヒト(軽量スポーツ)」ではなく、「スーパーラグジュアリー」変化している。R107型はハードトップやトランクリッドにアルミ素材を使用するなど軽量化を図っていたが、キャラクター的には豪華なパーソナルカーである。

 R107型は、主力エンジンをV型8気筒に据えたのもニュースだった。日本仕様は、1971年に3.5リッターの350SLがデビュー。1973年には4.5リッターの450SLにグレードアップした。
 1980年にはマイナーチェンジが実施され、新設計の3.8リッター・V8エンジンを積む380SLにスイッチ。1986年には5.6リッター仕様の560SLが登場した。
 R107型で最大排気量となる560SLは、排出ガス対策で失ったパワーを、排気量アップで補ったモデルだった。560SLは日本、北米、豪州市場で販売された。欧州では、5リッター仕様の500SLが販売されていた。

インパネ

エンジン

 取材車は運転席エアバッグとリアスポイラーを特別装備した最終モデル(限定50台)。内外装を含めオリジナル状態をキープしていた。ハードトップをつねに装着した状態で使用されており、幌はほぼ未使用だという。本革仕上げの内装のカラーリングはブルー。室内は純2シーターだが、シート背後に大きめの荷物スペースがある。

 走りは滑らかな印象。スタートダッシュはジェントルだが、その後の伸びがいい。5.6リッターのV8は現在の基準でもパワフル。足回りはソフトな設定。取り回し性も非常によかった。R107型はスタイリッシュで快適な「ネオクラシック」の代表格である。

1989年メルセデス・ベンツ560SL主要諸元

エンブレム

モデル=1989年式/メルセデス・ベンツ560SL
全長×全幅×全高=4390×1790×1300mm
ホイールベース=2455mm
車重=1620kg
エンジン=5546cc・V8OHC
エンジン最高出力=235ps/4750rpm
エンジン最大トルク=39.6kgm/3250rpm
トランスミッション=4速AT
サスペンション=フロント:ダブルウィッシュボーン/リア:セミトレーリングアーム
タイヤ&ホイール=205/65VR15+アルミ
駆動方式=FR
乗車定員=2名

真正面

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