ランドローバーがレンジローバー初のEVモデル「レンジローバー エレクトリック」プロトタイプ車両の走行テスト画像および動画を披露。北極圏での低温評価試験を完了し、現在は世界の過酷なロケーションでテストを実施中
英国ジャガー・ランドローバー(JLR)は2024年4月23日(現地時間)、レンジローバー初となるEVモデル「レンジローバー エレクトリック(RANGE ROVER ELECTRIC)」プロトタイプ車両の走行テスト画像および動画を公開した。
レンジローバー エレクトリックは、最新アーキテクチャーの「MLA-Flex(flexible Modular Longitudinal Architecture)」をベースに、レンジローバーの模範的なデザインを踏襲したうえで、息をのむようなモダニティを強調し、EVモデルであることを主張する繊細なデザインキューを採用する。また、史上最も静かで洗練されたレンジローバーを開発するという目標を掲げ、独自のアクティブロードノイズキャンセリングシステムやサウンドデザインなどを装備して、モダンラグジュアリーを体現するEVならではの極めて静穏で快適なキャビンの創出を目指している。
走行面においては、レンジローバーの特徴である高いオールテレイン走破能力の実現を志向し、極端な温度環境、あらゆる気候条件、どんな地形にも対応する走破能力、現行モデルと同等の水深850mmの渡河水深能力と牽引能力を確保すべく、プロトタイプを使って厳格なエンジニアリング・サインオフ・プログラムを進行中。これにはアンダーフロアやバッテリーの耐久性、シャシーの最適セッティング、優れた温度ディレーティングを実現するためのビークルダイナミクステストなどが含まれる。また、充電に関しては800Vのアーキテクチャーを採用して公共充電ネットワークでの急速充電に対応。合わせて、ユーザーには簡便な充電、エネルギー・パートナーシップとの連携、無線通信でのソフトウェアのアップデートが可能なSoftware-Over-The-Air(SOTA)、航続距離を最大化するインテリジェントなテクノロジーなど、シームレスなEVエクスペリエンスを提供する予定だ。
今回の発表では、カモフラージュを省略したオールブラックの初期プロトタイプ車両の走行テスト風景を披露。北極圏での低温評価試験を完了し、現在は50℃の中東の灼熱の砂漠など過酷なロケーションでのテストを実施中だという。北極圏では-40℃という極寒の環境のもと、バッテリーとエレクトリック・ドライブユニット(EDU:トランスミッション、電気モーター、パワーエレクトロニクスを含む車両の中核コンポーネント)の能力評価に焦点を当ててテスト。また、スウェーデンの凍った湖で行ったテストでは新しい自社製オール電気駆動システムの信頼性などを確認する。初採用の新しいトラクションコントロールシステムは、凍結した路面やグリップの低い路面で、並外れたパフォーマンスを実現。同システムはABSユニットのみに頼る従来のトラクションコントロールとは異なり、ホイールスリップの制御タスクを個々の電動ドライブコントロールユニットに直接配分し、各ホイールのトルク反応時間を約100ミリ秒から、わずか1ミリ秒にまで短縮しているという。さらに、JLRが自社開発した革新的なソフトウェアによりホイールスリップを正確かつ迅速に制御するEDUスピードコントロールが可能となり、ABS介入の必要性を低減。そして、あらゆる路面でトラクションを最大化し、卓越したレスポンスと洗練性を備えたドライブエクスペリエンスを提供する。
JLRのプロダクトエンジニアリング担当エグゼクティブディレターであるトーマス・ミュラー氏は、「電気自動車のレンジローバーは、このモデルならではのラグジュアリーさ、洗練性、走破能力に、非常に静かな電気駆動システムを組み合わせることで、スムーズでリラックスした旅を実現します。私たちは、万全を期すために物理的なテストと開発プログラムを順調に進めており、レンジローバー エレクトリックの能力を極限まで高め、比類なきモデルとしてユーザーに提供していきたいと思っています」とコメントしている。
なお、レンジローバー エレクトリックは英国のソリハル工場で生産。バッテリーおよびエレクトリックドライブユニット(EDU)に関しては、英国ウルヴァーハンプトンにあるJLRの新しいエレクトリック・プロパルション・マニュファクチャリングセンターで組み立てる。市販モデルの正式発表は2024年後半に実施する予定で、本国や北米などではすでに先行予約の受付を開始しているという。