ホンダの三部敏宏社長は、2021年にホンダの目指す姿と取り組みの方向性について表明した。注目は4輪の電動化戦略。「EV/FCVの販売比率を2040年にグローバルで100%」を目指すと発表したのだ。現在この「電動化」だけが一人歩きしている状況である。その後の質疑応答で三部氏は「特定技術(=電動化)に対して決め打ちでのシナリオは描かない」、「いろいろな技術に対して可能性を残しておくべき」と語っている。
筆者は、ホンダの本音は後者にあると思っている。つまり、今後10年近くはハイブリッドが主流なのは明らかである。
ただ、ホンダ・ファンは「ピュアな内燃機関」に憧れが強いのも事実。それを現在支えているのが、シビック・タイプRである。初代は1997年にNSX/インテグラに続くタイプRシリーズの末弟として登場。最新の6代目はホンダスポーツを牽引する存在となっている。
最新タイプRの特徴は大きく2点ある。ひとつは開発責任者(LPL)の柿沼秀樹氏が先代から引き続き担当していること。もう一点はベースモデルと同じ熟成方向の進化を図ったことだ。これまでのホンダはよくいえば「過去を振り返らない」、悪くいえば「反省しない」クルマ作りだった。最新はズバリ「己を超える」を目標に据えた。
柿沼氏は「タイプRなので「速い」は当たり前、本当にクルマを信頼できているのか? 本当にドライバーのコントロール下にあるのか? 本当に意のままの走りはできているのか? にこだわりました。その実現のために、潜在能力を「研ぎ澄ます」、人とクルマの「一体感」に注力して開発しました」と語っている。
確かに2リッターターボのスペックや採用アイテムなど見ると先代から劇的な進化はない。だが、実際にステアリングを握ると「別物」といっていいくらい進化している。最大の違いは「性能の引き出しやすさ」だろう。先代は「速いけれど怖かった」だが、新型は「速くて楽しい」。これはすべてのメカニズムを研ぎ澄ませたうえで、クルマ全体を高度にバランスさせたことの効果に違いない。まさに数値ありきでなく、ドライバーの感覚を大切にした開発の賜物だ。
いまだに「タイプRはNA/高回転エンジンしか認めない」、「軽くコンパクトであるべし」、「快適性など不要」といった声も聞く。だが、そもそもタイプRは、「最高の性能とポテンシャルを持たせ、いちばん速いクルマを作る」がコンセプトである。新型はそこに関してはまったくブレていない。それどころか、より濃厚だと断言できる。
モデル=タイプR
新車時価格=6MT 499万7300円
全長×全幅×全高=4595×1890×1405mm
ホイールベース=2735mm
トレッド=フロント:1625/リア:1615mm
車重=1430kg
エンジン(プレミアム仕様)=1995cc直4DOHC16Vターボ
最高出力=243kW(330ps)/6500rpm
最大トルク=420Nm(42.8kgm)/2600~4000rpm
WLTCモード燃費=12.5km/リッター(燃料タンク容量47リッター)
(WLTC市街地/郊外/高速道路:8.6/13.1/15.0 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=265/30ZR19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名