ホンダが新型燃料電池車の「CR-V e:FCEV」の生産を米国オハイオ州メアリズビルのパフォーマンス・マニュファクチュアリング・センターで開始。燃料電池システムはホンダとゼネラルモーターズが共同で開発し、両社で設立した合弁生産拠点である米国ミシガン州ブラウンズタウンのフューエル・セル・システム・マニュファクチャリングで生産
ホンダの米国現地法人であるアメリカン・ホンダモーターは2024年6月5日(現地時間)、新型燃料電池車の「CR-V e:FCEV」の生産を米国のパフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター(PMC)で開始したと発表した。
ホンダ車としては2021年に生産を終了したクラリティ フューエルセル以来の量産燃料電池車となるCR-V e:FCEVは、北米や中国市場などで販売している第6世代のCR-VをベースとしたSUVタイプのFCEVで、グランドコンセプトには「E-Life Generator」を掲げる。具体的には、約3分の水素充填時間によるストレスフリーな長距離ドライブと、日常走行でEVのような使い勝手を提供するプラグイン充電機能にSUVの走破性・機能性をあわせ持つ、身近に使える燃料電池車として開発。また、外部給電器による高出力な電力供給に加え、普通充電ポートに接続する給電専用コネクターにより気軽に電気を取り出すことができ、日常やレジャー、停電時など、あらゆる場面での利便性・安心を提供する新進のSUVに仕立てている。
CR-V e:FCEVの生産は、米国オハイオ州メアリズビルに居を構えるパフォーマンス・マニュファクチュアリング・センター(Performance Manufacturing Center、PMC)で実施。また、ホンダと米国ゼネラルモーターズが共同で開発した燃料電池システムは、両社で設立した合弁生産拠点である米国ミシガン州ブラウンズタウンのフューエル・セル・システム・マニュファクチャリング(Fuel Cell System Manufacturing、FCSM)で生産し、その後PMCに運んで車体に搭載する体制をとっている。
改めて、現在明らかになっているCR-V e:FCEVの特徴を紹介していこう。
肝心のパワートレインは、燃料電池システムとエアポンプ、モーターおよびギアボックスを一体化したパワーユニットをフロントセクションに、大容量の駆動用バッテリーを床下に、水素タンクをリアアクスル手前と上部に搭載して、前輪を駆動する。核となる燃料電池システムは従来のクラリティ フューエルセル用に比べて白金使用量の削減やセル数の削減、量産効果などでコストを3分の1にするとともに耐久性を2倍に引き上げ、さらに耐低温性も大幅に向上させる。また、燃料電池システムを中心としたパワーユニットを一体化することで小型軽量化を実現。既存のCR-Vのエンジンマウントをそのまま活かしてコストを低減し、かつ衝突安全性や耐振動および騒音をより高めたことも訴求点である。推定電力出力は92.2kW、モーター出力は174hp/310Nmと公表している。
駆動用バッテリーのIPUに関しては、クラリティ フューエルセル用の(1.47kWh)とほぼ同サイズながら、容量を17.7kWhへとアップ。また、2つのユニットで構成する水素タンクは前述の通りおよそ3分で満充填となる。さらに、外部からIPUに直接充電できるプラグイン機能を装備。AC充給電コネクターは日本と米国における普通充電の規格である「SAE J1772」に準拠し、家庭のACコンセントに接続して気軽に車両の充電を行うことができる。性能面では、EV走行可能距離が60km以上(米国仕様で29マイル以上)、水素を使用しながらの一充填・充電走行距離が600km以上(同270マイル以上)を見込んでいる。一方、走行モードとしてはバッテリーの電気のみを利用して走る「EV」、FCシステムとバッテリーの電力を最適にマネジメントして走る「AUTO」、バッテリーの残量を維持しながら走る「SAVE」、バッテリーを充電しながら走る「CHARGE」の4種類を設定。切り替えはセンターコンソール部に配したスイッチが担っている。
給電システムに注力したことも、CR-V e:FCEVの訴求点である。普通充電ポートにAC車外給電用コネクター「Honda Power Supply Connector(パワーサプライコネクター)」を接続することで、最大1500WのAC給電が可能。また、日本仕様には荷室内に設置したCHAdeMO方式のDC給電コネクターに「Power Exporter e:6000(パワーエクスポーターイー)」、「Power Exporter 9000」などの可搬型外部給電機を接続することで、非常時や屋外イベントなどで高出力の電力供給が可能なDC外部給電機能も装備する。
エクステリアに関しては、既存のCR-Vをベースとしたうえで、“クリーン”“タフ”“アイコニック”をキーワードとしたFCEVらしい知的な佇まいと力強さを表現する。フロント部はFCシステムの搭載に即してオーバーハングを110mm延長し、合わせてグリルやバンパー、LEDヘッドランプなどを刷新して、ダイナミックかつ印象的なマスクを創出。一方でサイドビューは、力感あふれる面構成と2700mmのロングホイールベースを踏襲しつつ、足もとに新造形のブラック塗装18インチ10スポークアルミホイールと235/60R18タイヤを組み込む。そしてリアセクションは、新意匠のバンパーやコンビネーションランプ、e:FCEVエンブレムなどを配備した。ボディサイズは全長4805×全幅1865×全高1690mmに設定。ボディカラーはプラチナホワイトパールとメテオロイドグレーメタリックの2色をラインアップしている。
乗車定員5名のインテリアについては、ブラックの内装カラーでシックに仕立てるとともに、緻密なハニカム柄のインストルメントパネルや10.2インチデジタルグラフィックメーター、Honda CONNECTディスプレイ、BOSEプレミアムサウンドシステム、バイオ素材を張ったシートなどを装備。また、水素タンクをリアアクスル手前と上部に分割して配することで、ベース車両と同レベルの広い後席スペースとラゲッジ空間を実現する。ラゲッジ自体には、2段階で床面の高さを調整できるフレキシブルボードを設定した。
なお、ホンダは米国で生産したCR-V e:FCEVを日本に輸入し、本年夏に発売すると予告。また、米国市場では2025年モデルとして本年後半にリリースするとアナウンスしている。