現行2代目フリードは2016年にデビューした。モデル末期になっても、セールスは好調をキープし、2024年の3月には登録車全体で5位となる9532台を記録。ライバル車のトヨタ・シエンタ(2022年登場)を500台近く上回った。
フリード人気の秘密は、初代からアピールしている「ちょうどいい」点にある。コンパクトなサイズで取り回しに優れていながら、十分な広さの室内空間としっかり使える3列シート、そして両側スライドドアを装備。価格も手ごろで、走りは軽快。さらに快適で燃費も優秀。すべてがまさに「ちょうどいい」のだ。
スタイリングも「ちょうどいい」。弟分ともいえるN-BOXのボクシーさとは異質。カクカクしすぎないスポーティな雰囲気にまとめられている。
そんなわけで、フリードは初代から、「ちょうどよさ」が認められ右肩上がりで販売台数を増やしていった。2016年にモデルチェンジした2代目は、より利便性や快適性を高めて登場。8年間のモデルライフを通じて年間7万~8万台をコンスタントに販売した。途中でクロスター・グレードを追加するなど新たな動きもあった。
6月に正式デビューする、3代目となる新型は、「「Smile」 Just Right Mover(「スマイル」 ジャスト・ライトムーバー)」をグランドコンセプトに、「使う人の気持ちに寄り添い、日々の暮らしに笑顔をもたらすクルマ」を目指して開発された。
プラットフォームは基本的にキャリオーバー。走りに関する最大の変更点はハイブリッド・システムの刷新である。従来のi-DCDに替えてe:HEVを搭載する。e:HEVは、通常はエンジンを発電用に使いモーターで走行。モーターの効率が落ちる高速走行時は、エンジン直結で走る賢いハイブリッド。ホンダ自慢の先進メカである。そのe:HEVのユニットを収めるため全長は45mm伸びているものの、2740mmのホイールベースに変更はなく、優れた取り回し性はそのままだ。
ラインアップはAIR(エアー)とCROSSTAR(クロスター)の2シリーズ。それぞれ個性を際立たせている
エアーは、ステップワゴンと同様、上質でシンプルなデザインでまとめたスタンダードモデル。ボディサイズは4310×1695×1775mmの5ナンバー規格。一方のワクワク感を強調したクロスターは、写真でわかるとおり力強く遊び心にあふれるデザインだ。
2代目の途中で追加された従来のクロスターのホイールアーチは、スライドドアを開けた際にドアとの干渉を避けるため、平面のデカールだった。新型は樹脂製のしっかりしたモールに変更。その他の部位も広範囲に樹脂製パーツを配している。このため全幅は1720mmに拡大。3ナンバー規格となった。
エアーは3列目シートの7人乗りと6人乗り、クロスターは5人乗りと3列シートの6人乗りが選べる。たっぷりと荷物が積める5人乗りはクロスターだけに設定する。
ラインアップは7人乗りがFFのみ、6人乗りには4WDも設定され、新たにe:HEVにも4WDが用意される見込みだ。エンジンは1.5リッターエンジン+モーターのe:HEVと、1.5リッター純エンジンの2種だ。
スタイリングは「誰でもどこでも、自由な気持ちであつかえる」をコンセプトに、水平基調のボディラインと大きなグラスエリアを組み合わせている。エアーとクラスターは、フロントグリルとアルミ、各種モールディングで個性の演出を図っている。
ボディカラーは新設定のシーベッドブルーパールなど9色、内装色はベージュ系(エアーのみ)とブラック系が用意される。相当にこだわったという内外装のカラーコーディネートは新型フリードの見どころだ。
インパネの雰囲気もガラリと変わった。水平基調のレイアウトながら全体的に丸みを帯びた形状になり、ソフトパッドを配するなど上質な印象となった。ステアリングホイールの上にあったメーターは内側に移され、ダッシュの上面が低く平らになったことで、スッキリとした視界を実現している。
収納スペースはそれぞれの容量が大きくなり、実用性を高めた。助手席前には幅広のトレイがあり、その上にティッシュボックスが収納できるようになっている。
シートも凝っている。フロントシートには評価の高いボディースタビライジングシートを採用するとともに、ヘッドレストと肩口のボリュームを落としてウオークスルー性と前方視界の向上を図った。
2列目シートについても形状をフロントシート同様にリファインしたほか、サイドウィンドウ面積を拡大することで、閉塞感がないよう配慮。クラス初の後席クーラーを設定するなど、快適性がグッと高まった。乗り降りしやすい低床フロアはもちろん継承。ウオークスルーがしやすいようあえてセンタータンクレイアウトを採用していないのはこれまでどおりだ。
3列目シートが、ステップワゴンのような床下格納式ではなく、一般的な跳ね上げ式なのはフリードの特徴のひとつ。新型はヒンジ形状を見直して、跳ね上げた際のシート位置が低くなるように工夫。後方視界を確保するとともに、シート自体の薄型化でラゲッジ横幅を広く確保している。また跳ね上げ時の操作力を軽くした点もニュースである。クロスターは、荷室の使い勝手を高めるユーティリティーサイドパネルやテールゲートにユーティリティーナットを採用するなど、細部まで配慮が行き届いている。
最新のホンダセンシング採用により安全性も向上。新型はフレッシュな造形とe:HEVの搭載に加えて、快適性や利便性が大幅に高められている。8年分の進化は非常に大きい。