【クルマの通知表】近ごろ街の主役級、堂々たるフォーマルミニバン、トヨタ・アルファードの際立つ存在感

アルファード・エグゼクティブラウンジ(4WD)/価格:THS 872万円。3代目もアルファードと兄弟車のヴェルファイアの2シリーズ。パーソナル志向のヴェルファイアに対しアルファードなフォーマル感覚を重視。新型はボディ骨格を徹底強化。車体剛性を従来比で60%アップ

アルファード・エグゼクティブラウンジ(4WD)/価格:THS 872万円。3代目もアルファードと兄弟車のヴェルファイアの2シリーズ。パーソナル志向のヴェルファイアに対しアルファードなフォーマル感覚を重視。新型はボディ骨格を徹底強化。車体剛性を従来比で60%アップ

3代目は「快適な移動の幸せ」をコンセプトにした高級車

 新型アルファードは、発売から早くも1年ほどが経過。当初は受注の制約や納車遅れが取り沙汰されたものの、街で頻繁に見かけるようになってきた。

 新型登場の衝撃がようやく落ち着いたタイミングで、コンセプトに掲げられた「多様なライフスタイルのユーザーに“快適な移動の幸せ”の提供」を確認しようとロングドライブに連れ出した。今回のテスト車はアルファードのExecutive Loungeのe-Four、価格は900万円近い。久しぶりの対面だが、あらためて高級感に圧倒された。この押し出しとインテリアを目にすると、高価でもほしくなるユーザーが大勢いるのはうなずける。

ドア開け

 ボディサイズは4995×1850×1935㎜。運転席に座るともちろん大きさは感じるが、各ピラーは死角をなくすよう工夫され視界は悪くない。メーターは右側に車速や燃費、左にハイブリッドシステム、中央に先進運転支援系を合理的に表示する。ステアリングスイッチ類は最新のトヨタ車らしく表示が簡略化されている。最初は戸惑うが慣れれば使いやすい。

走りはスムーズで力強く、燃費も優秀。トヨタの本気を実感

 走りの仕上がりは全体的にそつがない。2.5リッターのハイブリッドは強力なモーターがいい仕事をしている。アクセルレスポンスに応答遅れがなく、その後も力強く加速をアシストしてくれる。デフォルトはECOだが、ノーマルモードが扱いやすくて速さも体感できる、ちょうどいい味付けになっていて、右足を踏みすぎてしまう心配はない。

リア

エンジン

 深夜早朝の住宅街を走るときにはEVモードが便利だ、普通に走っていても心なしか以前よりEV領域が広がったように感じられた。
 現行型ではV6搭載を見送った。2.5リッター・ハイブリッドの完成度が高まったので、V6は必要ないと判断したのだろう。ハイブリッドは性能はもちろん音や振動にも安っぽい感じはまったくない。高級車用パワートレーンとして、すべてが合格レベル。直4のみでよいと判断したのも納得だ。

 そして燃費がいい。2.3㌧に迫る車体ながら、燃費テストではWLTCモード+αを達成。箱型ミニバンにとって不利な高速巡行が主体のロングドライブで、とくにエコランを意識しなかったのだが約15㎞/リッターをマークした。たいしたものである。

 足回りは乗り心地と操縦安定性が絶妙にバランスしている。実に入念にチューニングされている。あくまで後席乗員が不快に感じないことを重視しており、動きはゆったりとしていて、どこにもカドがない。
 これほど大きくて重たいクルマながら微舵から正確に動くのは好印象。正しく操作すればそう簡単には挙動は乱れない。レーンチェンジでもきれいについてきて揺り返しは小さい。修正舵は少なくて済む。

 路面の影響を受けにくく直進安定性にも優れるうえに車線維持機能もあるので、ロングドライブでも疲れを感じない。旧型(とくに前期型)は直進性が甘く気を抜けなかったのとは大違いだ。レーンチェンジアシスト機能もあり、車線変更時の安全確認をクルマに任せられるのも助かる。ただしクルマの動かし方については、もう少し改善の余地はあるように思えた。

ライト

リアランプ

 この安定した走りを実現するためには、乗り心地を重視して足回りを柔らかくするだけでなく、ある程度は固める必要がある。そのためか市街地+αの車速で突起を通過した際には若干の硬さとインパクトハーシュネス系の音を感じた。だが全体としてはタイヤの発する音も含めよく抑えられていて不満はない。しかも速度が上昇すると硬さや音は感じなくなる。高速道路の巡行はまさに快適である。これ以上完成度を高めるには電子制御の力が必要だろう。

 アルファードの足回りは万人向けの味付け。マイルドな中にも意のままに操れる感覚があるところが特徴だ。もっとスポーティな走りを求めるユーザーには、足回りの設定が異なるヴェルファイアという選択肢もある。

インパネ

ルーフ

 おもてなし性能はもちろん最上級だった。2列目は見た目のとおり快適性を高める機能が満載されていて、それをスマートフォン型の端末で自在に操作できる。ドライブ中、同乗者たちは大喜びだった。余談だが、これまでは地デジの画像が乱れていた場所でもちゃんと映ることにも気がついた。そうした部分も進化しているようだ。

 Executive Loungeはあくまで2列目ファーストで考えられており、車内のウォークスルー性や3列目への乗降性はそれほどよくない。だが乗り込んでしまえば3列目も十分な広さが確保されていて、アレンジ性にも優れる。乗り心地も快適だった。

 アルファードの“顔”となるExecutive Loungeが提供する価値と世界観は、プレステージ性に大きく傾いている。まさに“大空間高級サルーン”と呼ぶにふさわしい。乗るほどにトヨタの実力が感じられた逸材だった。

1列目

2列目

3列目通知表/トヨタ・アルファード・エグゼクティブラウンジ(4WD)/THS 872万円

チャート総合評価/79点

Final Comment
多くのユーザーから羨望を集める“大空間サルーン”
きめ細かな作り込みが高い完成度を産んでいる

 大柄な車体がマイナス要因になったが、総合評価は80点に迫る高得点を達成。走りは、パワートレーン、足回り、ブレーキともよくまとまっている。さすがにトヨタの上級モデルである。重さと背の高いことの弱点を感じさせない。点数に反映しにくい部分で感心したのは、ユーザー配慮が尽くされている点。たとえば助手席や2列目シート、スライドドアは複数の操作方法がある。大空間を気持ちよく使える配慮が素晴らしい。高額モデルだが、好調な販売状況は納得である。

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06TOYOTAアルファード主要諸元と主要装備

エンブレム

グレード=エグゼクティブラウンジ(4WD)
価格=THS 872万円
全長×全幅×全高=4995×1850×1935mm
ホイールベース=3000mm
トレッド=前1600/後1600
車重=2290kg
エンジン=2487cc直4DOHC16V(レギュラー仕様) 
最高出力=140kW(190ps)/6000rpm
最大トルク=236Nm(24.1kgm)/4300~4500rpm
モーター最高出力=134kW(182ps)
モーター最大トルク=270Nm(27.5kgm)
WLTCモード燃費=17.5km/リッター(燃料タンク容量60リッター)
(市街地/郊外/高速道路=15.3/19.0/17.6 km/リッター)
サスペンション=前ストラット/後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/65R17+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=7名
最小回転半径=5.9m
主要装備:トヨタセーフティセンス(プリクラッシュセーフティ+緊急時操舵支援+フロントクロストラフィックアラート+レーンチェンジアシスト+レーントレーシング&ディパーチャーアラート+レーダークルーズコントロール+アダプティブハイビーム+ロードサインアシスト+ドライバー異常時対応システム+プロアクティブドライビングアシスト+発進遅れ告知機能)/ブラインドスポットモニター+安心降車アシスト+後方車両接近告知/トヨタチームメイト(アドバンストパーク+パーキングサポートブレーキ+アドバンストドライブ)/パノラミックビューモニター(床下透過機能付き)/3眼LEDヘッドランプ/カメラ洗浄機能(バックカメラ)/デュアルパワースライドドア/パワーバックドア/後席用サイドパワーサンシェード/前後左右独立温度コントロールフルオートAC/プレミアナッパ本革シート/2列目エグゼクティブラウンジシート/JBLプレミアムサウンドシステム(15スピーカー)/14インチ・センターディスプレイ(コネクティッドナビ対応)/カラーヘッドアップディスプレイ/周波数感応型ショックアブソーバー/アクティブノイズコントロール/左右独立ムーンルーフ
ボディカラー=ブラック
※価格は消費税込み 

真横

 

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