【魅惑のスーパースポーツ】アストンマーティン・ヴァンテージの迸る665psパワー、英国サラブレッドの野生の輝きとは!?

アストンマーティン・ヴァンテージ/価格:8SAT 2690万円。ヴァンテージは、AMG製4リッター・V8DOHC32Vツインターボを搭載。最高出力はDB12比30ps増の665psを誇る。トップスピードは325km/h、0→100km/h加速は3.5秒。スタイリングはアスリートを連想する緊張感が印象的だ

アストンマーティン・ヴァンテージ/価格:8SAT 2690万円。ヴァンテージは、AMG製4リッター・V8DOHC32Vツインターボを搭載。最高出力はDB12比30ps増の665psを誇る。トップスピードは325km/h、0→100km/h加速は3.5秒。スタイリングはアスリートを連想する緊張感が印象的だ

ヴァンテージはアストンマーティン最新戦略の象徴

 アストンマーティンはいま、ブランド価値を一段も二段も引き上げる戦略を推し進めている。狙うポジションは英国ブランドらしさの2極、パフォーマンスとラグジュアリーを高いレベルで両立することだ。

 プロダクトでいえばDB12から実践されており、スタティックなクォリティが大幅に上がりパフォーマンスも大いに進化した。DBX707のインテリアも最新のデザイン文脈に合わせて改良されている。

 ブランドイメージ向上策にも抜かりはない。パフォーマンス面は引き続きF1活動が牽引する。ラグジュアリー面でいえば、日本でも超高級ホテルにオーダーメードシステムの拠点になるランドマークショールームを開設するなど価値の伝え方にも工夫を凝らす。英国ブランドの巨頭=マクラーレンとロールス・ロイスを足して2で割ったクルマ作りとブランド価値を狙っているに違いない。

リア

 2024年は重要な年だ。全4種類のラインアップが揃う。DB12とDBX、今回の主役である新型ヴァンテージ、そしてまだ見ぬフラッグシップモデルである。
 先日、新開発V12ツインターボユニットが発表された。そう、アストンマーティンはV12を諦めなかったのだ。今年後半にデビューするDBS後継車(順番からいうとヴァンキッシュと名乗るか?)に搭載される。新型ヴァンテージはDBXと並ぶ販売の主力モデルである。それゆえ、新たな戦略の成否の鍵を握る。実力=進化の度合いをスペインはセビリアで開催された国際試乗会で存分に体感してきた。

ドライバーとの一体感を大切にしたV8ツインターボ。ポテンシャルは強力無比

 ヴァンテージのリファイン手法はDB11→DB12と同様だ。フロントマスクとインテリアを大胆に変更し、パワートレーンとシャシーの性能を大幅に引き上げた。DB12はGT寄りのスーパーツアラーを目指したが、ヴァンテージはドライバーとの一体感を高めたスーパースポーツを志向する。

走り

ライト

 パワートレーンは基本的にDB12のリファイン版。メルセデスAMG製4リッター・V8ツインターボはモデル特性に合わせてチューニングされ、最高出力665ps/最大トルク800Nmと従来から大幅アップした。組み合わされる8ATは変速時間を速めるなどスポーツカーらしさの演出にこだわっている。ボディやシャシーの進化も見逃せない。ボディ剛性の強化とトレッド拡大、新たなEデフの採用、最新のシャシー制御など多岐にわたる。

 セビリア郊外のサーキットで実物と初めて対面した。先代モデルに比べて40%近く面積を広げた凸グリルと新たなマスク、30mmも広げられたボディによって、限定モデルOne-77の弟分のように見える。グリーンやオレンジといったド派手なカラーはもちろん、日本人オーナーが好むシルバーでも見た目のインパクトは強力である。

インパネ

シート

 乗り込めば、うってかわってラグジュアリーな雰囲気だ。DB12とおなじ機能配置となり、物理スイッチを可能な限り残しつつもモダンに仕上げるという気遣いがうれしい。着座位置も下がった。アストンマーティンならではの世界を走り出す前から実感する。

 まずはポルトガルの国境に近い山間部を走り回る。従来モデルにあった野生味は完全にその気配を消した。インテリアの見栄え質感とライドコンフォートがそう思わせるのだ。デフォルトのドライブモードはスポーツ。明らかにボディは強くなり、シャシーもしなやかによく踏ん張る。コーナリングの軌跡がつねに思いどおりのラインを描く。曲がりやすさ、とくにアクセルオフでのノーズの向きの変化が自然で楽しい。

 スポーツ+に切り替え、攻め込むと途端にスパルタンになり、リアアクスルの動きに神経を尖らす。ワインディングロードでは脈拍を上げない程度の領域でマシンとの対話を楽しむのが最善。その限りにおいてドライバーは制御を恩着せがましく感じることがなく、あたかも自分の技量で走らせている感覚に浸ることができた。新たなドライバー・エンゲージメントのあり方だ。

タイヤ

セレクター

 一般道を3時間ほど走ったのち、いよいよ実力をサーキットで解放する。最初はドライブモードをスポーツ+にし、シャシー制御も効かせたまま走らせてみた。一般道より相当に高い速度域(ストレートでは250km/h)で走り続けると、トルコンATやカーボンセラミックブレーキに若干の不満を感じるものの、総じて楽しいFRスポーツカーに終始する。

 サーキット走行において重宝したのがESPの介入レベルを調整する機能(8段階で1が最小)だった。5か6を使ってある程度リアを滑らせてクリアしたほうが、タイトコーナーの立ち上がりなどでリアアクスルの上下動が抑え込まれ、気持ちよく走らせることができた。

 ワインディングロードでもサーキットでも、V8エンジンはつねに力強くヴァンテージの前進を支えてくれる。吸排気サウンドにも工夫が凝らされて、課題だった官能性も感じられるようになった。新たな地平を目指すブランドに、さらなるアドバンテージをもたらすモデルになったといっていい。

アストンマーティン・ヴァンテージ主要諸元

エンブレム

モデル=ヴァンテージ
価格=8SAT 2690万円
全長×全幅×全高=4495×2045×1275mm
ホイールベース=2705mm
トレッド=フロント・1665/リア・1655mm
乾燥車重=1605kg
重量配分=前後50対50
エンジン=4リッター・V8DOHC32Vツインターボ
圧縮比=8.6
最高出力=489kW(665ps)/6000rpm
最大トルク=800Nm/2750〜6000rpm
サスペンション=フロント・ダブルウィッシュボーン/リア・マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ=フロント・275/35R21/リア・325/35R21
駆動方式=FR
乗車定員=2名
0→60km/h加速=3.4秒
0→100km/h加速=3.5秒
最高速度=325km/h

サーキット

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