アウディの電気自動車のフラッグシップグランツーリスモ「e-tron GT」が商品改良を実施。新たな高性能モデルとして「RS e-tron GTパフォーマンス」をラインアップし、車種展開は「RS e-tron GT」「S e-tron GT」と合わせて3グレード構成に拡充
独アウディは2024年6月18日(現地時間)、電気自動車の旗艦グランツーリスモである「e-tron GT」をマイナーチェンジし、本国にて予約注文の受付を開始した。
最新の4ドアグランツーリスモの姿をアウディ流に解釈したe-tron GTは、2021年にワールドプレミアを果たして以来、その流麗かつエモーショナルなスタイリングやパワフルな電動駆動システム、ダイナミックなハンドリングなどで世界中のユーザーから好評を博している。今回の改良では、新たな高性能モデルとして「RS e-tron GTパフォーマンス」をラインアップに加えて、車種展開を「RS e-tron GT」「S e-tron GT」と合わせて3グレード構成に拡充するとともに、一充電航続距離とパフォーマンスの向上や充電時間の短縮、新開発サスペンションの採用、内外装の仕様変更などを図って、フラッグシップEVとしての訴求力をいっそう高めたことが特徴である。車両価格はRS e-tron GTパフォーマンスが16万500ユーロ(約2790万円)、RS e-tron GTが14万7500ユーロ(約2570万円)、S e-tron GTが12万6000ユーロ(約2190万円)に設定した。
注目のパワートレインは従来と同様、前後に永久磁石同期モーター(PSM)を配した電動4輪駆動のクワトロとリチウムイオンバッテリーで構成。リアアクスルには新開発のPSMを配備する。また、RS e-tron GTパフォーマンスとRS e-tron GTには走行中に70kWにおよぶパワーアップを実感することができる新しいブースト機能を組み込んだ。システム総出力はRS e-tron GTパフォーマンスが680kW(925ps)、RS e-tron GTが630kW(856ps)、S e-tron GTが500kW(679ps)を発生。性能面ではRS e-tron GTパフォーマンスが0→100km/h加速2.5秒/最高速度250km/h、RS e-tron GTが同2.8秒/250km/h、S e-tron GTが同3.4秒/245km/hを実現している。
駆動用リチウムイオンバッテリーについては、総電力量を105kWh(正味容量97kWh)に高めるとともに、重量を従来比-9kgの625kgと軽量化。また、2層式冷却プレートを最適化することで、33個のセルモジュール全体のエネルギー容量を12%増加させる。回生システム(回生ブレーキ)から得られるエネルギーも、従来の290kWから400kWにアップした。一充電走行距離は最大で609kmへと向上する。充電システムの改良も図り、最大充電出力を従来の50kWから320kWへと増加。急速充電(HPC)ステーションを利用した際は、18分ほどで10%から80%まで充電することができ、また10分ほどの充電で最大280kmの走行を可能とする。合わせて低温時の充電性能も引き上げ、同時にヒートポンプシステムの改良も図った。
シャシー面については、2チャンバー/2バルブテクノロジーを採用した新開発のエアサスペンションを標準装備して、快適性を損なうことなくドライビングダイナミクスを飛躍的に高めたことがトピック。より緻密な制御を行うアクティブサスペンションもオプションで用意する。また、オールホイールステアリング(4輪操舵)をオプションで設定した。一方、制動機構では新開発の大型ブレーキシステムを採用し、タングステンカーバイドコーティングを施したブレーキディスクをRS系に標準、S系にオプションで採用。カーボンファイバーセラミック製ブレーキディスクもオプションで選択可能とした。足もとに配するホイールのラインアップも刷新。GTおよびRSモデルには新しい20インチマルチスポークホイールを用意し、さらにRSモデル用に2タイプの新しい6ツインスポークホイールを設定している。
エクステリアについては、従来の流麗かつエモーショナルなスタイリングを踏襲したうえで、3モデルのキャラクターをより鮮明に打ち出す。まずRS e-tron GTは、さらなるスポーティさを追求。反転デザインを採用したシングルフレームにはRS専用の3Dハニカム構造を採用し、またブラックのマスクを囲むように設置したエプロンはRS e tron GTの低い車高を強調する。さらに、機能的なL字型のブレードと組み合わせることによって地を這うようなスタイルを実現した。一方、リアビューにはモータースポーツからフィードバックされた要素を随所に採用。流線型のディフューザーにはL字型ブレードを配するなど、フロントの立体的なデザインと同意匠で仕立てる。スポーティなブレードはボディカラー同色。エアロチャネル間には垂直の赤いリフレクターを装備した。
新設定のRS e-tron GTパフォーマンスは、マット仕上げのダークカーボンルーフ(オプション)とカーボンカモフラージュエレメント(オプション)を組み合わせることにより、RS e-tron GTとの明確な差異化を図る。また、カーボンカモフラージュはエンボス加工されたバンパー構造、ドアトリム、ディフューザーの一部、サイドミラーなどにも採用して、高性能モデルであることを際立たせた。
S e-tron GTはエレガントでスポーティな雰囲気を強調したことが訴求点。フロントマスクにはブラックで縁取られた反転デザインを採用したシングルフレームを配し、合わせてグリルにエンボス加工を施して、立体的な造形を創出する。また、シングルフレーム上部にボディカラーと同色のペイントストリップを設置することにより、いっそうスポーティで印象的な顔を生成した。加えて、エアカーテンの形状を最適化するとともに、より力強いデザインに仕立てる。一方でリアビューには、垂直フィンを備えたエレガントなデザインの空力ディフューザーを新採用。上部にはボディカラーと同色のインレイを装着し、視覚的な質感も引き上げている。
全モデル共通の変更点としては、新しいコーポレートアイデンティティ(CI)を採用したことがトピック。高品質な2次元デザインのフォーリングスエンブレムが、より先進的かつ印象深いマスクを演出する。ボディカラーについては、ソリッドなアルコナホワイトに加え、メタリックまたはパールエフェクトカラーのアスカリブルー、デイトナグレー、フロレットシルバー、ケモラグレー、ミトスブラック、プログレッシブレッドのほか、RS e-tron GTおよびRS e-tron GTパフォーマンス専用カラーとしてニンバスグレーを、Audi RS e-tron GTパフォーマンス専用カラーとして新色のベッドフォードグリーンを設定した。
内包するインテリアは、ドライバーを包み込むような“モノポスト”デザインを基調に、グランツーリスモらしいスポーティさとラグジュアリー、そして先進技術を高次元で融合させる。ステアリングホイールには上下をフラット化した新タイプを採用。レッド仕上げの2つの赤いコントロールパネルも配備され、オプションで12時の位置にマーキングを追加することもできる。また、アウディバーチャルコックピットにはバッテリー温度に関する新しい情報を表示する機能を設定。さらに、RS系には専用コンテンツを表示するディスプレイを装備した。一方、アウディの新しいCIはデザインが見直されたシート、ステアリングホイール、シルプレート、デジタルコンテンツにも反映。ドアを開くと地面に投影されるプロジェクションライトもアレンジを変更する。そして、自然なアンスラサイトバーチ材を使用した新しい木製インレイを新設定。RS e-tron GTパフォーマンスではマット仕上げのカーボンカモフラージュも選択可能とする。また、照明によって見え方が異なるアンスラサイトカラーのエフェクトの仕上げとして使われるバナジウムもオプションで用意した。
内装のマテリアルに関しては、環境に優しいマイクロファイバー素材のDinamica(ダイナミカ)とファブリックのCascade(カスケード)を導入。スエードに似た見た目と手触りのDinamicaは、ほぼ半分がリサイクルされたポリエステルで構成し、その一部はアウディが使用したファブリックの残布で賄う。Dinamicaはシート、ステアリングホイール、バーチャルコックピット上部のフード、ドアミラー、センターコンソール、ウィンドウトリムの37~45%で採用。RSモデルにはディープブラックのDinamicaを配備した。一方、天然繊維のようなファブリックのCascadeは、15%のセルビッチと35%のリサイクルされたポリエステルで生成。環境保護の観点から、染色はしていない。Cascadeはシートやドアミラーになどに採用した。ほかにも、生産廃棄物、ファブリックやカーペットの残布、古い漁網などから100%リサイクルされたナイロン繊維素材のEconyl(エコニール)をカーペットおよびフロアマットに配している。
シートのアップグレードを図った点も見逃せない。ヘッドレスト下の開口部のデザインはよりダイナミックになり、照明付きロゴを備えた一体型インレイも組み込む。また、S e-tron GTには14段階調整機能付きのスポーツシートプラスを標準装備。RSモデルにはマッサージ機能付きのシートをオプションで用意する。さらに、RS e-tron GTパフォーマンスには専用の新デザインパッケージ(サーペンタイングリーンのステッチが施されたベッドフォードグリーン仕上げ)を設定。オプションとして18段階調整機能付きのシートも選択可能とした。乗員の快適性を高めるパノラマガラスルーフにポリマー分散液晶(PDLC)を組み込んだスマートガラスを採用して、透明から不透明に変化させることを可能としたことも、今回の改良のアピールポイントである。