【最新モデル試乗】10年ぶりのリニューアル。MINIクーパーSEの遊びゴコロを体感

MINIクーパーSE/価格:531万円。ハッチバック・シリーズは全車「クーパー」のグレード名で統一。造形は「ミニマル」を追求

MINIクーパーSE/価格:531万円。ハッチバック・シリーズは全車「クーパー」のグレード名で統一。造形は「ミニマル」を追求

新型MINIのラインアップが揃った!

 最新MINIのラインアップが、より楽しくなった。今回フィーチャーするクーパーを名乗る3ドアハッチバックとこれまで日本ではクロスオーバーと呼ばれていたカントリーマン、それと新登場のエースマンでシリーズを構成する。エースマンは今年4月の北京モーターショーでワールドプレミアされたクロスオーバーBEV。2年前にコンセプトカーが発表されたモデルの市販版だ。トレンドからすると売れ筋になるのは必至。実用性の高いスタイリッシュなボディは人気者になる資格十分である。MINIファミリーには今後クーパーの5ドアが追加されるが、個人的にはクラブマンが消失したのは少々悲しい。先代クラブマンを所有していた時期もあり、愛着を感じているからだ。あの観音開きのリアゲートが懐かしい。運転していると後方が見づらいんだけど、あのレトロ感がいいんだよね。

前

リア

 なんて話はともかく、新型のクーパー3ドアをスペインで走らせてきた。MINIファミリーのデフォルトとなるモデルだけに仕上がりには興味津々だ。

 プラットフォームは新設計で、ラインアップからもわかるようにBEVと内燃機関の両方に適応する。パワーソースは出力違いの2種類のBEVと2種類のガソリン車という設定で、クーパーCが1.5リッター直3ターボ(115kW)、クーパーSが2リッター直4ターボ(150kW)、そしてクーパーE(135kW)と同SE(160kW)がBEVとなる。すでにお気づきだろうが、今回の4世代目は全グレードに「クーパー」が付く。「ワン」がなくなり「クーパー」に統一されたのだ。ジョン・クーパー率いるクーパー・カー・カンパニーの功績はいまも讃えられている。なんたってF1のコンストラクターまで上り詰めた優秀なガレージである。

遊び心に溢れた個性の持ち主。走りはBEVでもMINIらしくFUNそのもの!

 新型MINIの好感度はかなり高い。デザインはオーセンティックで嫌みなところはいっさいなし。シンプルで飾り気がないのがMINI流だ。ボディパネルはすべて新設計。全体のバランスがよく、スポーティにも可愛らしくも見える。唯一自己主張しているのはLEDヘッドライトユニット。3種類のシグネチャーライトを操作ディスプレイから選ぶことができる。MINIらしい遊び心だ。

全体感

シート

 インテリアもまた遊び心に溢れる。7種類の「エクスペリエンス」がその代表。それぞれまったく異なる世界を表現してくれる。具体的にはセンターの大型ディスプレイの印象がモードによって変わる。ゴーカート/コア/グリーン/ヴィヴィッド/タイムレス/パーソナル/バランス、といったモードだ。それぞれモニター表示が視覚的にイメージを変えるのだが、中には聴覚的にも変わる設定がある。ドライブフィールもそう。ゴーカートではステアリングやアクセルなど操作系がクイックレスポンスになり、グリーンではその逆が起きる。グリーンはエコってこと、なかなかのこだわりだ。ここで全部は説明できないので、興味がある方はショールームへどうぞ。

 ところで試乗車だが、用意されたのはクーパーSE、つまりハイパワーBEVの一択だった。新しいシャシーで3気筒エンジンを味わいたかったが、それは叶わなかった。が、クーパーSEで走り出すと新型の魅力を理解した気がした。想像以上によくできたBEVだったからだ。

「よくできたBEV」とは、ガソリンエンジン車と相違ない走りという意味である。これまでたくさんのBEVを走らせたが、どれも床に積んだバッテリーが重く、動きが鈍重になりがち。バネ下の動きも鈍るため鉄下駄を履いたような走りといいたくなるものばかりだった。が、MINIは違った。重ったるい挙動はなく、出だしから軽快に動き出す。コーナーリングもそう。揺り返しは微塵も感じない。右へ左へステアリングを切った方向へ気持ちよく鼻先を向ける。これぞガソリン車から乗り換えても変わらないドライブフィーリングである。

走り

タイヤ

 思うに、MINIの開発陣(=BMW開発陣)はカントリーマン(=BMW iX1/2)の開発でBEVの挙動に関する何かの解決方法を得たのではないだろうか。その重さや重心を見事にコントロールしている。きっと高剛性やカウンターバランスとか、そういった話なのだろう。でもってその成功体験を背の低い3ドアハッチバックにもうまく応用した。

 結果、峠道を存分に楽しめるBEVが出来上がったのだ。アクセルを強く踏み込んだときの急なトルクの立ち上がりは、モーター駆動っぽさが出る。調子に乗ってコーナー出口で踏み込むと強いトルクステアでオーバーステア方向へ誘われるから注意が必要。オプションの18インチタイヤを履いていたのはそんな理由からだろう。コーナリングスピードをハイレベルでキープできる。

 なんて感じでMINIらしく走りを楽しんだ試乗会だった。今回あらためてクラシックミニと、それを2002年に蘇らせた初代BMW MINIの偉大さを知ったような気がする。時代を越えるアイコンはそうやすやすと出来るもんじゃないようだ。

MINIクーパー主要諸元

カット

グレード=クーパーSE
価格=531万円
全長×全幅×全高=3860×1755×1480mm
ホイールベース=2525mm
車重=未公表
モーター型式=交流同期電動機
定格出力=65kW(88ps)
モーター最大出力=160kW(218ps)/7000rpm
モーター最大トルク=330Nm(33.7kg・m)/1000〜4500rpm
一充電走行距離(WLTPモード)=402km
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池
駆動用バッテリー総電力量=54.2kWh
サスペンション=前ストラット/後マルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=205/50R17+アルミ
駆動方式=2WD
乗車定員=4名
最小回転半径=未公表
0→100km/h加速=6.7秒
※価格と一部を除き、スペックは欧州仕様

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