竹岡圭 K&コンパクトカー【ヒットの真相】トヨタ・アクア「燃費良好、走りは軽快」(2024年8月号)

トヨタのコンパクトカー、アクアは2011年のデビュー以来、販売台数ランキング1位になるなど大ヒット。2021年に2代目に進化して、いまもなお着実な人気を得ている。デビュー当時とは比べものにならないくらいハイブリッドカーが増えた中、それらに埋もれないアクアの魅力とは何か。2024年4月に改良を受けた最新モデルに試乗して検証してみた。

 

 初代アクアが登場したのは2011年。2世代目が登場したのが2021年と、コンパクトカーカテゴリーが10年間フルモデルチェンジしないというのは、意外と珍しいことだったりします。初代アクアのベースとなった2代目プリウスが、その間に4代目になっていたと聞くと、初代が担っていた期間が、どれだけ長かったか想像していただけるでしょう。

 初代アクアはモデル末期に至っても人気が衰えず、最後の最後までず~っと売れ続けていたオバケモデルだったなんていうのは、もはや前代未聞。ということで、2代目も10年先を見据えたクルマとして開発が行われ、まるっと変わったフルモデルチェンジとなりました。

 まず、ベースからして大変身。ヤリス・シリーズでお馴染みのTNGAのGA-B型が採用されました。パワートレーンは、システム方式こそ初代と同じTHS-Ⅱですが、エンジンやモーターは新しくなり、さらに電池が変わりました。

 ということは、いよいよリチウムイオン電池に?と聞きたくなるところですが、メイングレードには初代同様のニッケル水素電池を採用。しかし、バイポーラ型ニッケル水素電池という、自動車に搭載するのは世界初となる新しい電池が採用されたんです。

 この電池は、部品点数が少ないシンプルな構造で、大電流を一気に流せるというメリットがあります。つまり、重く嵩張りがちな電池のコンパクト化と、出力の向上を一挙に両立させたバッテリーというわけなんですね。

 そのおかげで生まれたのが“快感ペダル”。ドライブモードをPOWER+モードに切り替えると、名前のとおりアクセルオンでパワフルな加速をしてくれるのですが、アクセルオフ時の回生力も大きくなるため、アクセルペダルのオンオフだけでほぼ速度コントロールできるという優れものです。

 完全停止はしないものの、ほぼワンペダルドライブが可能になるので、ペダルの踏み替え頻度をグッと減らすことができます。これだけでも、かなり運転がラクになるんですよね。

 ペダルの踏み替えって、なんでもないことのようで、実際使ってみると「あれ?今日はなんだかいつもより疲れてない気がする」なんていう感じで、ストレスや疲労度が軽減されていたりします。とくに街中はもちろん、勾配のあるワインディングロードにも打ってつけという感じ。こういった、使ってみてこそありがたいアイテムは、毎日となるとかなりうれしいポイントになりますよね。

 そして、今回ご紹介するモデルはFFですが、降雪地帯からの要望に応え、E-Fourというリアをモーターで駆動するタイプの4WDモデルもラインアップされましたし、アドバンスドパークシステムも進化を遂げています。

 この車庫入れシステムは、設定がとっても簡単で、設定すれば後はまったくどこにも手を触れずに車庫入れが完了してしまうんです。ハンドルはもちろん、シフトレバーの前後入れ替えも、アクセル&ブレーキ操作も自動。超音波ソナーとも連動しているので、障害物があれば停止もしてくれます。しかも、設定を含めすべてが素早いので、たとえばショッピングセンターの駐車場なんかでも、後ろを気にせず使えるシステムになっているのがスゴイんですよね。本当に使えるんです。

 白線のないところも登録しておくことができるので、自宅の車庫入れが難しいなんていうお宅でもOK。車庫入れが苦手という方の救世主になってくれることは間違いナシだと思います。

 加えて、2024年のマイナーチェンジで、安全装備を筆頭にサポート力はグッと上がっていますが、とにもかくにもアクアといえば、実燃費のよさにメチャクチャ驚くというのが、初代からずっと続くいちばんのびっくりポイントだと思うんですよ。今回もWLTCモードで33.6㎞/ℓ(Z)という数値を叩き出していて、中でも市街地&郊外モードでは34.3㎞/ℓ(Z)と燃費がいいというのは、毎日を共にするモデルだからこそ、余計にありがたみを感じますよね。そう、イイところは一段と進化したのです。

 だからでしょうか。まるっと変わった2代目アクアなのですが、なぜか不思議なことに、初対面から「あ! この子はアクアだな」というくらい、いい意味で違和感がないというか、語弊を恐れずにいうと新鮮味が薄いんですよね。新しい、けれど懐かしいものに出会った感覚といえばいいでしょうか。もちろんインテリアなんかは、シフトレバーの位置を含めてまるで異なっていますから、完全な別物感はあるんですけれど、いい意味で伝わってくるものは、アクアはアクアなんだ、という実感です。

 誰が乗ってもパッと気軽に乗れるフレンドリーなつきあいやすさは、間違いなくアクア。個性を出しにくい車種のはずなのに、誰もに親しみやすいという強烈な個性を放っている本当に不思議なクルマ。そこがアクアのヒットの真相なのかもしれませんね。

アクア「ヒットの真相」

1)アクセルペダルのオンオフでコントロールできる快感ペダルを採用。パワフル加速を実現しながら踏み替えが減り負担減少
2)35.8㎞/ℓ(WLTCモード)というクラストップレベルの低燃費を実現。ハイブリッドカーならではの軽快な走りを高次元達成
3)バイポーラ型ニッケル水素電池の採用などメカニズムが進化。誰でも気軽にドライブでき、フレンドリーで親しみやすい

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