ボク自身にとって、理想的なハスラーが登場した。先ごろのマイナーチェンジで新設定されたタフワイルドである。タフワイルドは、フロントグリルやアルミなど、各部の光り物をダークカラーで統一。ルーフレールも標準装備した一段と道具感の強いモデルだ、カジュアルな印象の通常モデルと、クロカン四駆のジムニーの中間といった精悍な雰囲気が魅力になる。タフワイルドは先代でも特別仕様車として設定されていたが、今回は正式グレード。そしてターボが選べる。さっそくターボの4WDを借り出し、存分に遊んだ。
タフワイルドは、さすがにメーカープロデユース作品。単にメッキパーツをダーク化しただけではない。各部はオリジナル設計。フロントマスクはシンプルデザインでパンパーやフォグランプ形状も異なる。シートもカーキステッチが入る撥水加工済みの専用品だ。Kクロスオーバーの定番、見慣れたハスラーが、ぐんと凛々しく変身している。こんなハスラーを待っていた!という人は多いのではないか、ボクもそのひとりである。
メカニズムは標準仕様と同じ。パワーユニットはマイルドハイブリッド。試乗車は658ccの直3DOHC12Vターボ(64ps/98Nm)とISG(モーター機能付き発電機/3.1ps/50Nm)の組み合わせだ。
4WDシステムは路面状況に応じてセレクトできるグリップコントロール/スノーモード/ヒルディセントコントロールを標準装備。なかなか頼りになる。
久しぶりにハスラーに触れて、そのパフォーマンスに驚いた。今回は3名乗車+機材満載で取材の足としても使ったが、一般道/ハイウェイ/ワインディングロードを問わず、動力性能は十分以上。格上のヤリスクロスやライズ以上に小気味よい走りが味わえた。
通常の交通の流れに乗るには、アクセルを軽く踏み込むだけでOK。モーターが加速をアシストし、スムーズにスピードが上昇する。しかも思いのほか静かだ。さすがに右足を深く踏み込むとエンジンサウンドが耳に届くが、なかなかいい音で不快には感じない。それ以上に予想を超えた加速ぶりに思わずほほが緩む。
高速道路のクルージングは快適そのもの。絶妙なCVT設定により100km/h走行時の回転数は2000rpm+αと低く、安定性もなかなかのレベル。リラックスした走りが楽しめる。クロカンのジムニーが高速道路でそれなりに気を遣わされるのとは大違いである。
ワインディングでも好印象は持続した。ターボ仕様は7段切り替えのパドルシフト標準。カーブの曲率と勾配に合わせたパドル操作を心がけると、エンジンはパワーゾーンをキープ。スポーティでハイペースな走りを披露する。適度なロールを許すサスペンションも好印象。ステアリング操作に応じてスムーズに向きを変え、ロードホールディング性能は高い。ペースを上げると、タイヤだけはもうひと息、グリップと安定感がほしいと感じるが、自分好みのタイヤ選びは、マイカーに迎えてからのお楽しみのひとつだ。
今回はオンロードのみの走行だったが、4WDなら雪道などでも安心。最低地上高は180mm。もちろんジムニーほどの無理はきかないが、河原に下りたり、キャンプフィールドへの乗り入れも安心だ。Kカーなので狭い道もへっちゃら。行動半径が思いのままに広がる。
燃費は、今回の500kmほどの試乗で18km/リッタープラスをマーク。現在の水準で見ると驚くほど経済的とはいえないが、元気で快適な走りを味わうと十分なレベルだと感じる。ただし燃料タンク容量は27リッターと小さい。ワンタンク500km走行はややきつい。
室内は驚くほど広い。スクエアなボディ形状とスペース性を重視したパッケージングの効果でKカーを意識するシーンはほぼない。シートの作りはしっかりとしており、座り心地は良好。前席はもちろん、後席もスペースは十分だ。多彩なシートアレンジによって、荷物の積載にも車中泊にも対応する自在空間が生み出せるのも大きな魅力。ハスラーの室内は、アイデアの宝庫。小さなクルマを便利に使う配慮に溢れている。安全・運転支援機能を含め装備は充実しており、パイオニアの楽ナビをベースにしたメーカーopナビの地図は鮮明。室内各部の質感も高い。
ハスラーは走り/スペース性/使い勝手の点で、クルマ好き、遊び好きを満足させる高い機能を実現した実力車。タフワイルドは、そこに「所有するこだわり」をトッピングしている。個人的に購入するとなると、本格派のジムニーと大いに迷うが、高速時の安定性と快適性、そして多彩なシーンへのマッチングはハスラーが数段上。タフワイルドをさらに自分仕様に仕上げ、徹底的に使い込むのは、アクティブなユーザーにとって、満足感が高く、しかもインテリジェントなクルマ選びだと感じた。Kカーは日本の宝物である。