【超絶・本気のクルマ遊び】趣味の世界での「世界標準」を追いかけています! 仕掛け人/入川ひでと・メッセージ

入川氏は日本唯一のSS形式のクラシックカー・ラリーACCR(ALPINE CLASSIC CAR RALLY)と、2024年7月に鈴鹿サーキットで開催されたSUZUKA CLASSIC CHALLENGEの仕掛け人。趣味の世界での世界標準を追いかけている

入川氏は日本唯一のSS形式のクラシックカー・ラリーACCR(ALPINE CLASSIC CAR RALLY)と、2024年7月に鈴鹿サーキットで開催されたSUZUKA CLASSIC CHALLENGEの仕掛け人。趣味の世界での世界標準を追いかけている

クルマは遊びの道具。仲間と素晴らしい時間を過ごすのが基本

 私は、趣味の世界での“世界標準”を追いかけているだけ。父親が、趣味人でした。クルマとバイクが好きで、休日には釣りや狩猟も楽しんでいました。猫も犬もいて、いろいろなところに連れてってもらいました。その影響が大きいですね。子供時代から周囲にクルマやバイクがあるのが普通でした。そんな環境で育ったから、自然と乗り物が好きになりました。父親がポルシェに乗っていたことで、もう中学生の頃には、本物の凄さをわかっていたように思います。

356

ガレージ

 私は都市計画の会議などで海外に行くとき、時間を調整して、意識的にレースやラリーを見たり、自分自身でも公道でのラリーで走りを楽しんでいました。海外では、古いクルマだけのスポーツイベントがあるんです。とにかく全開でかっ飛んでいく。“モンテカルロ・ヒストリック”などは、その代表だと思います。かつてモンテカルロ・ラリーで走ったマシンたちが、時を超えてまた戦っているんです。素晴らしいと思いました。

 日本でクラシックカーのイベントといえば、モータースポーツではなく、一定の距離を所定のタイムで走る“レギュラリティ・ラリー”が中心。
 私が“ラフェスタ・ミッレミリア”に出場したときに、友人とラリー界のレジェンド、新井敏弘選手が参加していたんです。いい機会だから新井さんに「日本でもヨーロッパのような、クラシックカーの本格SSラリー競技ができないだろうか?」と聞いてみました。そうしたら、「それは無理!」と強く否定されたんです。

クラシックカーラリー

 そこで気持ちが燃えました。日本には国際格式のサーキットがいくつもあって、ラリーだって全日本戦が開催されています。アジアの中で飛び抜けてモータースポーツが成熟しているんです。クルマの歴史と文化の質が、すでに高い水準に達しています。日本に大会がないなら、自分たちで理想のイベントを開催すればいいと考えました。

 即座に新井氏に猛烈アタックし、彼に大会の会長になってもらい、ACCR(ALPINE CLASSIC CAR RALLY)を立ち上げました。
 2011年にテスト競技を行い、2012年に第1回大会を開催。ACCRは、モータースポーツのJAFの国内競技基準、ラリー開催規定に準拠したスポーツイベント。まずはレギュレーション作りから始めました。参加するには4点式シートベルト、ロールバー、消火器は必須。クルマはFIA公式ルールに沿った仕様が条件。そしてコースは、サーキットと地方の林道を借りて、そこでタイムトライアルを行います。すべてをモータースポーツ競技として組み立てているのです。

ACCR-01

ACCR-02

 ACCRは、社会的な活動ができる人の集まり、という点も心がけました。マナーが悪い人はご遠慮していただきます。イベント自体も、誰もが憧れを抱き、いいな、と感じられるものにしようと努力しています。ポスタービジュアルや、競技そのものに“デザイン”の要素を取り入れています。本気の遊びだからこそ、すべてがカッコよくありたい。

 でも最初は、なかなか理解されませんでした。そもそもSSラリー用に仕上げたクラシックカーが存在しませんでした。当初、エントリーしてきたのはサーキット用のクルマが中心で、車高が低く、とても林道を走るような仕様ではありませんでした。

 それが10年をかけて少しずつ変貌してきました。いい雰囲気を作り上げてきたと思います。いまでは参加車は本格ラリー仕様ばかり。モータースポーツだから、安全に速く走るための準備も積極的です。全日本ラリーに参加しているコドライバーとタッグを組んで出場するチームも少なくありません。しっかり“ペースノート”を作成して臨んでいる参加者がほとんどです。

モータースポーツを地域とヒトを結ぶツールにしながら、国内の名車たちに走る機会を提供したい

 私は“ラリーforローカル”という点も重要だと考えています。サーキットは、“閉じた空間での競技”ですが、ラリーは地域にお邪魔して戦う“開かれた競技”。地域に貢献できるチャンスはいくらでもあります。

 たとえば、私たちは林道を借りてスペシャルステージを設定しますが、現在、輸入材に押されて、日本の林業は元気がありません。山の管理が行き届かず、林道が倒木の影響で満足に走れない場合もあります。私たちは自分たちで倒木を撤去し、きちんと走れるようにすることから準備を始めます。地域にとっては、林道が整備されるから都合がいいのです。ある年、ラリー後に豪雨災害があったのですが、ACCRが林道を整備したおかげで、「避難路が確保され、地元のお年寄りを救出できた」と行政から感謝されました。また一般の流通には乗らない、収穫遅れの野菜をラリーの折に購入するなどの地域貢献も積極的に行っています。

ACCR-03

ACCR-04

 現在、ACCRはラリー・ジャパン・ヒストリックや全日本ラリー選手権にも公式参戦するまでになりました。2023年は、ラリー・ジャパンに4日間で56万人が集まってくれました。今年は、もっと多くの人にラリーの素晴らしさを体感してもらいたいと考えています。

  今回、初めてお手伝いしたSUZUKA CLASSIC CHALLANGEは、ル・マン・クラシックの日本版というイメージです。ル・マン・クラシックは、かつてル・マン24時間レースで活躍した往年のマシンが、サルテ・サーキットに再び集い、スピードと耐久性を競うスポーツイベント。その精神を受け継ぎ、日本のモータースポーツの原点の地である鈴鹿サーキットで、ヒストリックレーシングカーを走らせます。2015年にスタートし、2019年まで5回開催されたSUZUKA Sound of ENGINEの復活という意味合いもあります。国内にひっそりと生息する名車たちに“火を入れる”機会として、その意義は大きいと思います。

鈴鹿01

鈴鹿02

 参加車は、基本的にヨーロッパの国際格式レースで活躍したモデルたち。当時のレースカーの雰囲気を極力再現していることが条件で、現役時代には存在しなかった部品の装着は禁止。GTツーリング65/GTツーリング75/スポーツプロト60s/レーシング70-80s & Cカーの4クラスに分かれ、当時のレースの雰囲気を再現します。

 今回、多くのマシンが集まりました。ポルシェは962C、904、550スパイダーなどが走りますし、シェブロンも来ます。グループCマシンも10台ほどがエントリーしてくれました。

 今回、パドックのデザインも工夫して素晴らしいものが完成しました。ラリーの分野で世界標準がようやく達成できたので、「次はヒストリックカーのレースで世界標準を作りたい」、そんな意気込みで取り組んでいます。本気のクルマ遊びをこれからも楽しみ続けたいですね!

フォトギャラリー

 

SNSでフォローする